「竜馬の妻とその夫と愛人」を見る
「竜馬の妻とその夫と愛人」劇団東京ヴォードヴィルショー 第60回公演
作 三谷幸喜
演出 山田和也
出演 佐藤B作/佐渡稔/あめくみちこ/平田満
観劇日 2005年10月22日 午後7時開演
劇場 紀伊國屋ホール M列1番
料金 5000円
上演時間 2時間
松次郎の役は平田満と山口良一のダブルキャストで、私が見たのは平田満バージョンだ。
両方見てみたかったな、と少し思う。
東京ヴォードヴィルショーの次回公演は三谷幸喜の新作だそうだ。それも見てみたいものだと思う。
感想は以下に。
三谷幸喜と坂本竜馬といえば、「彦馬がゆく」が思い浮かぶ。
そこで坂本竜馬と恋仲だった写真館の娘の小豆ちゃんをひいきにしている私は、全く別のお芝居だと知っているけれども、それでも「竜馬の妻」であるお竜さんにあまり良い感情を持っていない(笑)。
そういうわけで、最初のうちはあめくみちこ演じるお竜さんにいいようにこき使われ足蹴にされている、平田満演じる松次郎にやたらと肩入れして見てしまった。
大体、この松次郎という人が本当に人が良い。
タイミングが悪いとか、気が弱いとか、場の空気を読めないとか、気が利かないとか、そういうところを丸ごと全部補って余りあるくらい、人が良い。
肩入れもしたくなるというものではないか。
タイトルは「竜馬の妻とその夫と愛人」だけれど、登場人物はもう一人いて、それが佐藤B作演じるお竜さんの妹の夫で元海援隊士の覚兵衛である。
勝海舟の「お竜が自堕落な生活を送って、坂本竜馬の名を貶めるような存在であれば殺せ」という何とも不合理というか利己的というか超政治的な密命を帯びているこの覚兵衛が、実はお竜に惚れているというのがポイントである。
結局、夫である松次郎も、覚兵衛も、お竜の愛人である佐渡稔演じる寅蔵も、登場人物はみーんなお竜に惚れているのだ。
でも、お竜が惚れているのは坂本竜馬だけというのが不幸の始まり。
そして、お竜に惚れている男たちは(芝居中に出てこない男たちを含めて)ほとんどみんな、お竜の向こうに見える坂本竜馬に惚れているというのが、さらなる不幸の元だ。
そして、実は「坂本竜馬の妻」ではないただのお竜に惚れた唯一の男である松次郎は、お竜が自分のところから出ていくのを全力で助けるのだ。
可笑しくて可笑しくてたくさん笑ったのだけれど、よくよく考えると、これって不幸な女の話だよな、と思った。
「私は坂本竜馬の妻だ」と毅然として言い切るお竜は、格好良いけど、でもやっぱり不幸に見えた。
そのお竜に「自分は生きている。坂本竜馬に唯一勝てるのは自分が生きていて、おまえのそばにいてやれることだ」と泣き叫ぶ松次郎が正しい気がした。
出て行ったお竜が松次郎の元に帰ってくることはなさそうに見えた。
そして、それは松次郎の不幸ではなく、お竜の不幸に思えた。
でも、坂本竜馬が殺されたとき、お竜を中に決闘しようとしていた松次郎にしびれ薬を飲まされていたのだと知ったら、お竜の不幸は深まったのか、和らいだのか。考えてみたけれど、答えは出なかった。
だから、そのことを覚兵衛に告白した松次郎が、覚兵衛に怒りにまかせて首を絞められるラストシーンは正しかったのだと思う。
何だか「不幸」という文字をたくさん使ってしまったけれど、たくさん笑って楽しいお芝居だった。
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