「生誕120年記念 色彩のファンタジー シャガール展-イジスの撮ったシャガール-」に行く
2007年10月13日から12月11日まで、上野の森美術館で開催されている「生誕120年記念 色彩のファンタジー シャガール展-イジスの撮ったシャガール-」に行って来た。
上野の森美術館のサイトに割引券があったので、当日券1000円が900円になって少しお得になった気分である。
実は、サイトには「受付にて「シャガール~大柴!」とくっきりはっきりいった方は100円割り引きます。」とも書いてあったのだけれど、これは流石に抵抗がある。
上野は今、東京都美術館のフィラデルフィア美術館展やムンク展など気になる美術展が目白押しで、だからなのか、そもそもシャガールは日本ではそれほど好かれる画家ではないのか、平日の午後に行ったからだということを考えてもかなり余裕があった。
午後2時前に入館したときには「がらがらだわ」と思ったのだけれど、次第に混雑してきて、でも、多分、入館者の数の方が出展作品数(220点だそうだ)よりも少なかったと思う。混雑してきていると感じたのは、どうも、私の見るペースがトロすぎて、それで渋滞が発生していたためのようだった。申し訳ないことである。
上野の森美術館は初めて行ったのだけれど、それほど大きくない、いい感じの場所だった。
荷物をコインロッカーに預けるつもりだったのが、受付でチケットを買ったらそのまま展示室に入ってしまい、「失敗した」と思いながら見て回ったのだけれど、帰るときに実はチケットを販売していた受付で荷物を預かってもらえたらしいことに気がついた。次からは利用しよう。
シャガールは、もしかすると一番好きな画家かも知れない。
よーく考えるとかなりブラックでグロテスクな絵のようにも思うのだけれど、何だか好きなのである。ブラックでグロテスクだとは思うけれど、怖いという感じはしない。
このシャガール展はアラビアン・ナイトから始まる。
4つの物語が選ばれて3枚ずつ絵が描かれ、特別エディションとしてシエラザードの絵が1枚加わって計13枚である。
お話の一部が解説のプレートにも作品リストにも書かれているのでとっつきやすい。
これらの絵を見ていると、「色彩のファンタジー」というサブタイトルがよく判る。一枚一枚が「**色の絵」という感じなのだ。
続いて、ポエムのコーナーになる。
シャガール自身が書いた詩に絵をつけて本の形で出版したらしい。挿絵のように描かれた絵にはナンバーが振っていないのだけれど、一体何組作ったのだろう。木版とリトグラフはどちらが量産しやすいのだろうか。
ベンチに置いてあったサンプルの図説(すでに売り切れていて予約販売が行われていた)にはその「詩」の全文が載せられていたようなのだけれど、購入しなかった私にはどんな詩なのかよく判らない。
でも、絵を見ている限りでは、随分と暗い心象風景の人なのだなと思ってしまった。
心象風景自体が暗いのではなく、そもそも詩に自身を投影していないのかも知れないし、心象風景自体が暗いわけではなくて表現がそうなっているだけなのかも知れないし、「暗い」という印象が私だけのものかも知れないけれども、やはり随分と暗いように思えた。
中に何枚か紙や布でコラージュされた作品もあり、そのコラージュされた紙や布が随分と適当に着られているように見えて、何組も何組も同じようにコラージュしたのか、1冊ごとに違っているのか、気になった。
そして、「ダフニスとクロエ」のコーナーになる。これも物語に絵をつけた作品である。
解説のプレートによれば「シャガールの最高傑作と言われる」ということだったのだけれど、どの辺りが「傑作」で、どの辺りが他の作品と違っているのか、私にはよく判らなかった。
より「一枚の色」という感じの絵が多いようにも思えたし、「春」というタイトルが付けられた絵の青の深さと、湖に映って浮かんでいるような月の白さがとても印象的だった。
この物語はバレエにもなっていて、シャガールはその舞台美術も担当したそうだ。イジスが撮ったシャガールの写真があちこちにあるのだけれど、このコーナーにはその舞台美術制作に取り組むシャガールの写真もあった。
2階に上がって聖書のコーナーでは、旧約聖書の物語にエッチングと手彩色で絵をつけている。
このコーナーが出展作品が一番多かったのだけれど、全く旧約聖書に無知な私は「出エジプト」「紅海の道」という2枚の絵を見て「やっと知っている話になった」と思っただけという、情けない状態だった。物語を知っていたら、きっともっと興味深く見ることができたと思うのだけれど、私は「100部も作ったのに全部手彩色したのかしら。100部もみんなシャガール一人で、全部同じように塗れたのかしら」と莫迦なことを考えながら見てしまった。
聖書がモチーフなのでほぼ全ての絵に「人(一部は神様とかがいたのかも)」が描かれているのだけれど、「ラケルの墓」というタイトルの絵だけは人がおらず、手前にある大きな木と奥にある建物という空間を感じさせて、一番好きだった。数少ない横長の絵だというところもポイントである。
シャガールは挿絵という形の絵も多く描いた人だから、縦長の絵が多いんだろうか。
イジスが撮ったシャガールの写真はあちこちにも置かれていたのだけれど、この後のイジスのコーナーに集められてもいて、中でも、パリのオペラ座の天井画制作の写真は楽しかった。
私はこういう大きな作品は、シャガールが描くのは「エスキス(と解説のプレートに書かれていた)」だけして、それを大きく拡大するのは工房の人というか舞台美術専門の人がやるのかと思っていたのだけれど、写真を見る限り、シャガールが直接大きな絵を描いていたようだ。
天井画を描くためのスケッチではまず色を置いてみたことが写真から判り、何となく「やっぱりね」と思ってしまった。天井画にはいくつかのオペラのモチーフが描かれているのだけれど、ここにも「ダフニスとクロエ(ラヴェル)」が描かれていて、もちろん注文者がいたからということもあるのだろうけれど、シャガール自身もこの物語が好きだったのかなと思った。
1階に降りてギャラリーまで行くとそこがサーカスのコーナーでこのシャガール展のトリでもある。
やっぱり、シャガールの絵の中ではこのサーカスが好きだなと思う。
理由はよく判らない。
特にこのサーカスの絵こそ「よく見るとグロテスクだよね」という感じが強いのに、我ながら謎である。特に、ピエロの絵に惹かれる。
2時間たっぷりとシャガールの絵に浸れて、大満足だった。
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