「旅をする木」を読む
今月の始めに「劇的リーディング~旅する編~」を聴きに行ってからずっと気になっていた、「旅をする木(星野道夫著)文春文庫」を読んだ。
「劇的リーディング」ではアラスカの海で鯨に出合った「もうひとつの時間」という掌編の、さらにその一部分が朗読されていた。
また、「アラスカに住みたくて写真家になった」ということが本の最初に書かれていたので、何となく「旅をする木」という本にはアラスカのことだけが書かれているのだろうと想像したのだけれど、実は意外と、ガラパゴス諸島でコロンビアのカメラマンと共に写真を撮ったこと、デュッセルドルフで講演をした後でザルツブルクで過ごしたこと、ペンシルバニア州でアーミッシュの村に出かけたこと、日本で写真展を開いたことなどを書いた掌編も含まれている。
そして、クィーンシャーロット島で朽ち果てつつあるトーテンポールを探し当てた掌編「トーテムポールを捜して」もこの本に収録されていた。
気になっていた一編なので、順番に読むことはせず、他の部分を全て読んでから最後にこの「トーテムポールを捜して」を読んだ。
正直に言うと、少なくとも私は、わずか文庫6ページ分のこの文章を読んだだけで「よし、クィーンシャーロット島に行ってみよう」と決心することはないだろうと思った。
アラスカの大きな自然とそこに暮らす人との関わりを書いた他の掌編の印象が断然強くて、その中でこの一編は暗い緑色に沈んでいる感じだ。
ただ、星野道夫が書くアラスカは、ツアーで簡単に行けそうな場所ではない。「アラスカに行く」ということ自体が、結構な冒険のように思うのに、そこから先も命の危険と隣り合わせで飛行したり、船で何日もかかったり、何年も暮らしてやっと幸運に巡り会えて出会うことができたり、とても「特別な」時間と場所のように感じられる。
それに比べると、例えばガラパゴス諸島やクィーンシャーロット島は、がんばれば何とか行けるし、星野道夫が出会ったものに出会えるかもしれない、ような気がする。ポイントはここかも、と思った。
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コメント
How nice you think so!
Thank you!
Himeringo
投稿: 姫林檎 | 2007.05.20 16:15
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投稿: | 2007.05.19 06:44