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2015.09.21

能登旅行記2日目その2

2015年8月29日(土曜日)

 のんびり散策するにはちょっと暑すぎた。
 長谷川等伯が収蔵されているという石川県立七尾美術館も気になったけれど、そもそも、本日のメインテーマは「加賀屋」である。
 14時過ぎの電車で和倉温泉に向かった。
 七尾駅で本日の宿である加賀屋に電話し、和倉温泉駅までの送迎をお願いしたところ、駅に到着して宿のバスがいなかったらもう1回連絡してくださいと言う。
 何となく釈然としない。

 のと里山里海号に乗車すると、帰りの電車の切符も貰える。我々は穴水から七尾まで乗ったから、七尾から穴水へ向かう電車の切符がサービスされる。
 その「帰りの切符」を使ってマジンガーZのラッピング車両に七尾駅から一駅乗った。七尾駅は、JRとのと里山鉄道の両方の駅を兼ねているので、改札口がちょっと判りにくい。
 ロータリーに出て見回してみても、それらしいマイクロバスはいない。
 改めて宿に電話したところ、何だか要領を得なかったけれど、別のお客さんが依頼した送迎のバスが駅に向かっていたらしく、間もなく駅に到着しますという話だった。

 14時半くらいに加賀屋に到着した。
 迎えてくださった方が「すみませんでした」と開口一番言ったのは、電話のやりとりの情報が伝わっていたからだと思う。こういう連携が「おもてなし」なんだろう。ちょっと、もやもやが薄まる。
 チェックインは15時からなので少しお待ちくださいとラウンジに案内され、冷たい麦茶が供された。
 大きな一面のガラス窓からは海が一望だったけれど、あと30分もぼーっとしているのも芸がないと、和倉温泉の散策に出た。

七尾湾

 海を見渡せるベンチがあって、木陰は風が気持ちいい。
 しばらくそこで海を眺めた後、近くにあった辻口博啓美術館(ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ)に行った。
 若い女の子だけでなく年配の女性にも人気らしく、カフェには長い順番待ちの行列ができている。そこまでしなくていいよねと母と言い合い、美術館スペースに入ると、こちらはガラガラだ。
 飴細工(だと思ったけれど、多分、もっと複雑な何かである)とライティングとで「ART」している空間だ。それほど広くないお部屋一室のみというのが残念な感じである。
 カフェとショップが中心の施設なのだと思う。

 2階には、カフェの一部と、角偉三郎美術館が入っている。
 どちらの美術館も入館無料である。
 角偉三郎氏は、最初は沈金師として修行・仕事を始めたものの、「使う器」を作ろうと合鹿椀にシフトした方だそうだ。
 漆塗りの椀の製造工程や、関わる人々、作られた「器」たちが展示されている。
 ここで美しい合鹿椀を見てしまったために、母と私は漆塗りの器を買い損ねたということになると思う。

 そうこうするうちに15時を過ぎ、宿に戻った。
 仲居さん達がずらっとスクエアに並んでいる様子は壮観で、そういう「おもてなし」に慣れていないこちらとしては思わず逃げ出したくなる。
 足早にフロントに向かってチェックインをお願いすると、並んでいた中からお一方(と書きたくなってしまう)が出ていらして、お部屋に案内してくださった。

おもてなしお部屋 我々のお部屋は「能登客殿」の4階だ。
 窓から海が見えるのが嬉しい。
 能登客殿は、加賀屋の建物の中では海に一番近いと聞いていたので尚更である。
 海を眺められるようにテーブルと椅子が置かれ、それとは別に座卓と座椅子が配されている。お部屋の座布団が、噂の「ふかふかの座布団が一人2枚」ではなく、残念なようなほっとするような気がする。

 お抹茶とお菓子をいただいていると、仲居さんが「それぞれにジャストサイズ」の浴衣を持ってきてくださる。この辺りは、事前にネットで読んだ宿泊体験記の通りだ。
 夕食と朝食の時間を聞かれ、朝食は明日乗る観光バスの「のとフライト号」に間に合うようにとお願いする。
 1階にある大浴場は海に一番近いので明るいうちがいいですよとお勧めしていただく。
 客室にあった「加賀屋の美術品を巡るツアー」が気になり、16時から1時間のコースに参加できますかと聞いたところ、まだ空きがあったようで参加できることになった。
 何だか楽しそうである。
 早々に、集合場所でへ向かう。大きな旅館だし、建て増しを繰り返しているから、なかなか目的の場所に辿り着けない。

 参加者は20人弱くらいだったと思う。
 年配の女性がガイドとなり、若者がアシスタントでついて、館内美術ツアーが始まった。
 参加者には「館内は美術館」というタイトルのかなり立派なリーフレットが配布される。

加賀友禅「四季の花」 加賀屋の建物は、階ごとにテーマとなる植物が決まっている。
 我々が停まったフロアは「山吹」で、お部屋の名前にも「山吹」が付く。
 シースルーになっているエレベーターから、それぞれのフロアの植物をテーマに織られた加賀友禅の反物を組み合わせたタペストリをずっと見ることができる。
 「パッと見ただけだと絨毯のように見えるかも知れませんが、反物なんです。」という説明に、確かにそうだわ、としみじみと見上げ、エレベーターからもじっくりと見る。
 梶山伸氏の作品だ。

輪島塗「寿松」輪島塗「寿松」

 輪島塗で作られた屏風なのか壁なのか飾りなのかすでに何だか判らない「もの」があった。
 角野岩次氏の作である。
 とにかく細かい。そして、この「松ぼっくり」がたまにあるところが「味」だという説明を受けたことを覚えている。どうポイントなのかは覚えていないけれど、この「寿松」という作品のポイントはとにかく松ぼっくりである。

九谷焼「刻彫椿」

 こうまで「大物」が続くともう「欲しい」とか「勿体ない」とかいう普通の感想も続かなくなってくる。
 美術品の数々が普通に飾られていたり、「飾る」というよりも内装の一部であるかのように納まっているのだから恐ろしい。
 さらに恐ろしいのは、もしこういったツアーに参加しなかったら、価値を知るどころか、私がこれらの美術品に目を留めることすらなかっただろうということだ。
 こちらの九谷焼は、三代 浅蔵五十吉作である。
 同じ椿の図柄の壺(花瓶かも)も飾られていた。
 ここまで鮮やかな椿が描かれた花瓶(仮)に一体どんなお花を生けたらいいのか、もはや想像もつかない。

輪島塗「天女の舞」 輪島塗の「天女の舞」という作品は、最初に加賀屋に到着して案内されたラウンジの、ガラス窓の上にぐるりと飾られている。
 かなり高い位置にあるとはいえ目にしていてもおかしくはないのに、全く見た記憶がない。「猫に小判」「豚に真珠」とはこのことである。
 さらに言うなら、「天女の舞」は、先ほど美術館も訪れた角偉三郎氏の作品であり、この作品を最後に角氏は「器」制作へと向かったというつながりのある作品だ。

九谷焼「花いかだ」 ラウンジの「床」とテーブルにも九谷焼が使われている。
 中谷淳子氏の作品だ。
 ラウンジでお茶かお酒をいただいたとして、その足もとに九谷焼が鎮座しているなどと誰が思うだろう。
 実はチェックインしたフロントのカウンターの下にまで、輪島塗の作品が施されていたのだから参ってしまう。「瑞鳥の図」と題された小西啓介氏の作品で、離れたところから説明してもらってやっと気がつくことができた。
 チェックインの際には必見である。

 また、加賀屋には能舞台まであって、そこは結婚式場として使われることが多いという。
 能舞台で結婚式というのは普通のことなのか。全く訳が判らない。
 近々挙式の予定があるのか、我々見学ツアー参加者向けなのか、能舞台の上に結婚式用のしつらえが施されていた。

彩釉鉢 彩釉鉢と言われたところで、どんなものか想像すらできない。
 人間国宝の三代 徳田八十吉氏の作品だそうだ。
 ギャラリー形式で、ガラスケースの中に入っていたと思う。それにしても、人間国宝の作品を普通に飾っておく加賀屋って何なんだという気がする。
 これだけのものを維持するのだから宿代も高くなるわよね、というのが、美術に素養のない母と私の抱いた正直な感想だ。

能登島焼「桃」 最初に見たときは木彫だろうと思ったこの山田剛氏の作品は、木彫りではなく焼き物だそうだ。
 能登島焼の作品だという。
 パッと見たところでは木彫りに見えるよと近寄ってしげしげと見れば、確かに質感が違う。

九谷焼 こちらも、人間国宝の吉田美統氏の作品だけれど、特に名前はついていないらしい。
 「お皿はお皿」「お皿として使ってください」という趣旨で名前がついていないとすれば何だか凄いけれど、普通にお皿として使ってもらおうと思ったら、金箔は施さないよねと思う。
 それにしてもこういった作品たちはどうやって保管されているのだろう。季節によって替えるだろうし、保管には気を使うだろうなぁと思う。
 そして、そういった「美術品」をこうして惜しげなく飾るのだから太っ腹である。

西塚栄治作 「魚映」というタイトルのこの作品は西塚栄治氏の作で、でも、それが「何」なのか、私には判らない。
 輪島塗? 象嵌? という感じである。
 泳いでいる魚たちがかなりリアルだ。
 こんな感じで、1時間の美術ツアーが終了した。
 充実した内容に説明、そしてもちろん作品たちに大満足である。参加して良かったと思う。
 この館内美術館ツアーに参加すると、館内にある輪島塗のお店と九谷焼のお店でのお買い物が10%引きになる割引券がもらえた。

 17時を過ぎてもまだ外が明るい。仲居さんのお勧めに従って、夕食前に1階にある「花神の湯」に行った。
 タイルで華やかな絵が描かれた大浴場で、本当にすぐ前というか下が海である。
 露天でないのが残念だ。その代わり、大きくガラス張りになっている。このガラスは外からは覗けないように工夫されているそうだ。
 加賀屋の総客室数は知らないけれど、かなりの宿泊客がいるだろうと思うし、実際に大浴場にスリッパが並んでいるのを見てちょっと引いたけれど、中に入ってしまえばゆったりしていて「大混雑」という感じがしない。
 流石である。

 バスタオルが使い放題、浴用タオルも1枚はお部屋で歯ブラシ等と一緒に用意され、洗濯したものが大浴場に豊富に用意されているのが嬉しい。
 タオルって重要である。
 大浴場の入口で、スリッパに番号札を付けて整理してくださる方がいて、人件費のかけ方が違うぜ、などと思う私はやっぱり無粋かつ場違いなんだろう。

夜景 お風呂からあがると、流石に外は真っ暗になっていた。
 お部屋から見える景色はこんな感じである。
 和倉温泉の旅館は、多く、海際に海を向いて建っているようだ。
 涼みつつ写真を撮っていたら、19時からでお願いしていたお食事の用意が始まった。座卓にまずテーブルクロスがかけられたことに驚く。お部屋食で、まずテーブルクロスが敷かれたなんて記憶にない。

前菜 母は生ビールを、私は冷酒(もちろん「宗玄」を選んだ。「隧道蔵」である。)をお願いし、お食事が始まった。

 食前
 金澤柚子蜂蜜
 「食前酒代わりに」という口上だったので、恐らくノンアルコールだったと思う。

 先附
 夏野菜の金時草ドレッシング餡
 金時草は、加賀野菜のひとつで、血糖値や血圧上昇を抑える効果、免疫を高める働きがあるそうだ。
 お抹茶と一緒にいただいたお菓子も、この金時草を使ったお菓子である。

前菜干し口子

 前菜
 干し口子、黒藻酢、烏賊海女漬け、姫さざえ旨煮、手長海老つや煮、穴子八幡巻き、とうもろこし松風、枝豆白玉
 前菜のお皿の向こうの和紙に包まれていたのが「干し口子」だ。
 くちこは、糸くらいしかないナマコの卵巣を何本も何本も重ねて陰干しして作られる。どれだけ貴重でどれだけ手間暇がかかっているのだろうとクラクラする。
 いかにも「高級珍味」というお味で、日本酒と良く合った。

お造り先吸物 先吸物
 鱧真丈
 鱧を食べたのは初めてかも知れない。

 お造り
 白身魚(2種あったけど忘れた)、まぐろ、イカ、甘海老、雲丹
 市松模様のお皿も可愛いくて、四角く深さのあるお皿にお刺身を盛り合わせるという方法もあるんだなと思う。

治部煮 煮物
 合鴨治部煮
 治部煮は石川県の郷土料理だそうだ。知らなかった。
 鴨肉は、旨味を閉じ込め、またとろみを付けるために小麦粉をまぶしてあるそうだ。鴨ってこんなにコクがあったんだなと思う。
 添えられた山葵が効いている。

台物 台物
 和牛陶板焼き
 これはもう鉄板中の鉄板という感じのお料理である。
 お肉が柔らかくて、とても美味しい。母など「昨日とはだいぶ違う」などと言う。
 確かに、昨日と今日で随分と趣の違う宿に泊まり、趣の違う夕食をいただいている。
 我ながら、なかなか乙な旅程を組んだものだ。

冷し鉢 冷し鉢
 中島菜うどん いしる風味
 中島菜は能登野菜の一つである。こちらも血圧の上昇抑制効果が見つかったという。
 「いしる」も能登の特産で、日本三大魚醤油の一つだ。あとの二つは、「しょっつる」と「いかなご」だ。
 今回の旅で「いしる」を味わうのは初めてで、出汁でのばしてあるせいか、ほとんど匂いは感じなかった。もっとも、酔っ払って鼻と舌が効かなくなっていた可能性も高い。

 漆塗りのお椀でおうどんをいただきつつ、母が「こういう風に使いたいのよね。でも、うちじゃこの大きさじゃ小さいわね」と繰り返していた。
 母は、輪島塗りのお椀でお蕎麦やおうどんを食べようという野望を抱いて能登に来ているのだ。

蒸物 蒸物
 ふかひれ茶碗蒸し
 この辺りになると、あまり感興も抱かなくなっている。
 ずっとかなり大きな声でしゃべっていたお隣が静かになって、ちょっとほっとしていた頃かも知れない。我々よりも早く食事を始め、早々に酔っ払っていたものと思われる。

食事 御飯
 石川県産コシヒカリ

 留椀
 小ふぐ味噌汁

 香の物
 盛り合わせ

 昼食を食べたお寿司屋さんでもふぐのお寿司があったから、もしかして能登はふぐの産地なのかも知れない。

デザート デザート
 フルーツのレモン蜜ゼリー掛け
 ここだけ「デザート」で「水菓子」じゃないんだなとちょっと楽しい気分になった。

 1時間半くらいをかけて夕食をいただいた。
 順番にゆっくりと供されると、これだけたくさんのお食事でも結構食べてしまうものだ。
 お酒ももちろんしっかり飲みきっている。

祭り小屋 美術ツアーの集合場所になっていた「祭り小屋」で、20時15分からステージが毎日30分行われ、そちらは無料で見られる。
 もう開始時間は過ぎていたけれど、雰囲気くらいは味わえるかと行ってみた。
 前半の剣舞は終わっていて、後半は格好良く言うと歌謡ショーのようなステージだったらしい。
 ステージ上には太鼓が据えられていたけれど、我々は結局、この太鼓の音を聞くことはなかった。
 ちょっと残念である。

 ステージはあっという間に終わってしまい、そのまま「にぎわい処」をぶらぶらした。お土産物屋さんが並ぶ一角が、ちょっとないくらい広がっている。
 加賀屋と銘打った品々が並んでいたり、石川県内の名産品が並んでいたり、漆塗りや九谷焼の専門店もある。至れり尽くせりだ。
 母と二人で輪島塗りのお店に行き、じっくりと見る。
 やっぱり、いい物を見てしまうと、「まぁ、普通かな」という物が見劣りしてしまう。困ったものだ。
 私が気に入った六鹿塗は、本当にいいお値段である。館内ツアーでいただいた10%割引券があっても手が出ない。
 明日は輪島に行くことだし、とりあえず購入を見送った。

 お風呂上がりに飲もうと能登ミルクの瓶入り牛乳を購入し、お部屋に戻る。
 1時間近くもうろうろしていたけれど、お腹はいっぱいのままである。
 22時過ぎに辨天の湯に行った。
 加賀屋は、男性用大浴場は一つしかないけれど、女性用の大浴場は二つある。女性のお客さんの方が多いのだろうし、女性の方が長湯だし、長湯せずとも身繕いに時間がかかるからだろう。
 ちらも結構な人が来ていたけれど、「混雑している」という感じはない。
 「野天の湯」が閉まっていたので、そちらは明日の朝に来ることにして、露天風呂で寛ぐ。
 やっぱり、風に吹かれながら入る温泉は気持ちいい。

 日付が変わる前に就寝した。
 明日は早起きである。

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