サントリーホール<土曜サロン>に行く
サントリーホール<土曜サロン>
ヨーロッパに生きる 第1回 鏡の文化論 〜ハーモニーの知恵〜
おはなし 木村尚三郎
演奏 キャトル・ロゾー・サクソフォン・アンサンブル
曲目 フランセ:小四十奏曲
日本民謡:竹田の子守唄
中山晋平:諸城寺の狸囃子
本居長世:通りゃんせ
アルベニス:「スペイン組曲」から「カディス」、セビーリャ
ピエルネ:民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
場所 サントリーホール 小ホール
料金 5000円
昨年の「サントリーホール<土曜サロン>」も木村尚三郎さん(愛知万博の総合プロデューサー)のお話と室内楽のミニコンサートの組み合わせで、4回シリーズだった。
そのときは4回シリーズの3回しか行けなかったのだけれど、ヨーロッパの都市を題材にしたお話も、その国や街にちなんだコンサートはとても楽しくて、今回はサントリーホールで通し券を購入した。通し券だと18000円である。
第1回である今日は、後方に空席が目立った。とっても勿体ない。
サントリーホール<土曜サロン>について、 詳しくは、こちら。
コンサートの曲目に「カディス」とあったことから、カディスの街では2月にカーニバルが行われ、シェリー酒が飲み放題になるのだ、と聴衆を笑わせてから本題の「鏡」のお話に入っていく。軽妙洒脱とはこういう方のことを言うのだろう、という感じだ。結構きわどいこともおっしゃるのだけれど、カラッとさわやかに聞こえて笑いを誘うのである。
感想その他は以下に。
タイトルにもなっている「鏡」に対する意識がどれだけ人々の意識の根っこのところを表しているか、というお話が次から次へと繰り出された。
例えば、こんな感じである。
・日本では街中に鏡が少ない、ましてや全身が映る鏡は家の中を含めても非常に少ない、これはヨーロッパから韓国までの大陸にはまずない、日本独自の文化である。
・鏡が使われるのは、空間の広がりを演出するという効果ももちろんだが、そもそも自分と他人の違いを意識している人々の間では、自分の位置を確認し周りの状況をチェックし調和するために「鏡」は不可欠である。
・日本人は知り合い同士での「和」を重んじるが、欧米人は知らない人同士のコミュニケーションや調和を取ることが上手い。
・欧米人が一般に言われるように「常に闘っている」人々であるならば、一流と言われるオーケストラが欧米にあるはずがない。
・ディスカッションは、相手を言い負かして勝利するためではなく、共通点を見いだすために行っている。だから、欧米人が黙ったらそれは危険信号である。耐えに耐えて最後に爆発する日本人とは逆。
・大交流の時代(人々が移動し、知らない人同士、違う民族の人同士が会う時代)には、鏡は不可欠の道具となる。
・今も海外旅行者が増えているが、それは先の見えない時代だからであり、他の国がどうしているのか・どうなっているのか気になるからである。安全で安心している時代であれば、人々は動こうとはせず自分の陣地を守ろうとするものだ。
・全身が映る鏡で自分の立ち居振る舞いをチェックし、笑顔を練習してそれを武器として、パーティで知らない人と知り合うために出かけて行く。国際的な生き方には鏡は不可欠である。
一生懸命メモした中から拾ってみたけれど、こういったお話が次から次へと魔法のように語られていく。ときどき「ん?」と思うこともないわけじゃないけれど、楽しい時間である。
休憩ではドリンクサービスがある。前回は赤ワインと白ワイン、オレンジジュースが並べられていたのだけれど、今回は入口で引換券をもらい、通常のドリンクコーナーのメニューから選べるようになっていた。
白ワインをいただく。
良い気持ちになったところで、コンサートが始まる。今日はサックスの四重奏団による演奏である。
サックスという楽器は1840年に当時フランス領だったブリュッセルでサックスさんという人が作ったのが始まりだそうである。当時はクラシック音楽で使われる楽器だったようだ。
曲の間に、そんなお話もある。テナーサックスを吹いていたご本人も言っていたが、1曲終わると4人とも大きく肩で呼吸をして息を切らしている。曲目にもよるのだろうけど、かなりハードな楽器であり演奏であるらしい。
サックスによるクラシック音楽を聴くのも、サックスの四重奏団という形式も初めてで、でも馴染みのある日本の唄の演奏があり、明るく弾む曲が選ばれていたこともあって、楽しく聴くことができた。
アンコールの「熊んばちの飛行」と「チャルダーシュ」は、どちらかというと「超絶技巧」という感じの曲だった。特にバリトン・サックスの人が顔を真っ赤にして吹いていて、私は心の中で「頭の血管が切れそう」と呟きながら聴いていたけれど、でもそれはとても格好の良い演奏だった。
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