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サントリーホール<土曜サロン>
ヨーロッパに生きる 第2回 男と女 〜合わせて一人前〜
おはなし 木村尚三郎
ソプラノ 野田ヒロ子
テノール 村上敏明
ピアノ 浅野菜生子
曲目 カルディッロ:つれない心
ドナウディ:ああ、愛する人の
プッチーニ:「トスカ」から「星は光りぬ」
プッチーニ:「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」
マスカーニ:「カヴェレリア・ルスティカーナ」から間奏曲
プッチーニ:「ラ・ボエーム」から二重唱 出会い・冷たい手を・私の名はミミ・愛らしい乙女よ
<アンコール>
ディ・カプア:オ・ソーレ・ミオ
トスティ:かわいい口元
ヴェルディ:歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」
場所 サントリーホール 小ホール
料金 5000円
4回シリーズの第2回である。第1回も行っている。第1回についてはこちら。
今回も後方に空席が目立っていた。しつこいようだが、とっても勿体ない。
サントリーホール<土曜サロン>について、 詳しくは、こちら。
タイトルが「男と女」ということで、木村先生お得意の分野であるとお見受けした。前回よりもさらにきわどい(笑)内容も、とても楽しそうに話していた。
コンサートが歌ということで、プログラムとは別に歌詞対訳ももらった。至れり尽くせりである。
感想その他は以下に。
今日のコンサートはオペラの名曲揃いである。そこから、イタリアや南フランスでは毎日のようにオペラが上演されている、南フランスでレストランに入ったら歌うように朗々とした声でしゃべっている人がいて、きっとこの人はオペラ歌手だろうと思った話などから、次第に本日のお題である「男と女」の話に移っていった。
必死でメモを取った内容は、例えばこんな感じである。
・欧米人(特にラテンの人々)はプロセスを重視し、日本人は結論を重視する。それは、欧米人が手続法を重視するのに対し日本では実体法を重視することにつながっている。
・少し前まではラテンの人々は、麝香系の強い香水を耳の後ろや胸元につけて「相手に自分を好きにさせる」ことを意識していたが、最近は少し変わって来ていて、軽い植物性の香水を膝の裏につけて「相手が自分に好感を持つ」ことを意識するように変わってきている。
・ラテンの人々が強い香水を好む(好んでいた)のは、あまりお風呂に入らず体臭が強いからだという話も聞くが、少なくとも男女の間ではお互いの体臭を良いものと考えているのである。
・ゲルマン系の人々(イギリス、ドイツ、アメリカ、一応日本もここに入る)は「男女は平等だ」と考え、ラテン系の人々は「男女は合わせて一人前」と考えている。
・ラテンの人々の間では法律婚よりも、「そのときに愛し合っている」ということが重要視される。だからこそ、フランスのミッテラン大統領に隠し子がいると明らかになったときに、彼が「それがどうした?」と答えてそれで話が終わってしまったのである。
・イギリスはご飯が美味しくない。それはメキシコ湾流の影響で雨が多く、葡萄と小麦が育たないせいである。その結果、パンもワインも美味しくないので、男の人が家に帰らなくなり、男だけのクラブを作るようになった。そうすると女性も「自分たちもがんばろう」と考えるようになる。「男女平等」の考えは、ある意味で男女の間に隙間があるということでもある。
・小麦ができなかったイギリスでは、緬羊が盛んになった。羊は家族全員が協力するというよりも、それぞれが何頭かずつ管理することが可能であり、家族それぞれの自立性が高くなる。何かあればすぐに家族が壊れてしまう(壊れやすい)からこそ、例えばアメリカ人などは家族に執着するのである。
・工業的な農業が行われていたため、イギリスでは「機械に適応できるかどうか」が人を評価するポイントのひとつであった。「ノーマライゼーション」というのはノーマルでない人(状態)がいる(ある)ことが前提なのであり、元は差別の発想であるとも言える。また「福祉」という発想の元もここにある。
農業社会では逆に、あらゆる人に役割がある、役に立たない人はいない、ということになる。地域の結びつきが強く、最近「スローライフ」ということが言われているが、元々そうした生活をしてきていると言える。
・イタリアでは男女分業がはっきりしており、男の人が外で働き、女の人が家を守る。家の中でお母さん(マンマ)の権力は絶大である。英語の「オー・マイ。ゴッド」がイタリア語では「マンマ・ミーア」になるのも、その顕れであろう。
・14世紀から17世紀にかけては、農業技術の進歩から開墾できる土地は全て開墾し尽くしてしまい、先行きが不透明な時代であった。そこで「他にもっと良いところがあるのではないか」と人が移動し、それに合わせて病気も移動し、黒死病の流行などが起こった。そして「魔女狩り」が行われたのもこの時代である。
・先が見えない時代は、攻撃が内側に向かう。日本の今の状況(ドメスティックバイオレンスなど)もそれに近い。
・先が見えなかったこの時代、村に悪いことが起こると「誰かが悪いことをしたからに違いない」という発想になった。
・魔女狩りは、女が目立つ女を攻撃したという側面がある。
・騎士道精神は、男性が女性を大切にしていると日本人は羨ましがるが、実は男が男に対して自分は有用である、ということを宣伝している側面がある。
一生懸命メモした中から拾ってみたけれど、まとまりもとりとめもないのは、私のメモがぐちゃぐちゃで前後関係が全く判らなくなっているからである。
今日は大ホールでもコンサートが行われており、木村先生のお話は午後3時10分まで。そこから20分の休憩になった。
休憩のドリンクサービスではホットコーヒーをいただいた。
後半はコンサートである。
オペラを見て聴いたのは、去年だったか野田秀樹が演出した「マクベス」が新国立劇場で上演された、それが後にも先にもただ一度である。だから、主にオペラのアリアで構成されたプログラムのうち、聴き覚えがあったのは「ある晴れた日に」と、アンコールの「オ・ソーレ・ミオ」と「乾杯の歌」だけだった。
「マクベス」を見たときには2階か3階か、とにかくかなり遠くて高いところから見ていたので全く気がつかなかったのだけれど、サントリーホールの小ホールの、席のすぐ前でオペラ歌手の人が歌うアリアを聴いていると、とにかくオペラは演じられるものなんだな、という印象が強かった。
顔や身体の表情が物凄く豊かなのである。
対訳を見ながら聴いていたのだけれど、ときどき歌詞を見失っても、日本語訳と歌手の方の表情や身振りを見ていると、大体どこを歌っているのかが判る。
正直に言って、間近で見てしまうと見ているこちらの方が恥ずかしくなるくらい、情緒たっぷり歌われる。
何だか凄い、と思った。
それで、「マリア・カラスの偉業は−中略−それまで歌手が動き回るだけだったオペラをドラマとして演じたことにある。」という文章を想い出した。森雅裕の「あした、カルメン通りで」という小説に出てくる一節である。
オペラ歌手の鮎村尋深さんと日本画家の守泉音彦さんが主人公であるこの小説の中で、尋深さんがラ・ボエームのムゼッタでスカラ座デビューした、という話も出てくる。
シリーズ一作目の「椿姫を見ませんか?」ではこの主人公2人が音楽高校の卒業公演で共演した演目が「椿姫」だし、シリーズ3作目の「蝶々夫人と赤い靴(エナメル)」では尋深さんがマダム・バタフライを演じている。
それを想い出してから、今日のプログラムが俄然身近に感じられるようになった。
蛇足ながら、前半、木村先生が毎週日曜午後7時30分からのNHKのアニメ「名探偵ポワロとマープル」の監修を担当しているというお話があった。「ノックが2回なのはおかしい。ヨーロッパならノックは3回する筈だ」という視聴者からの意見が来たことがあるそうだ。確かに映画などで、苦情を言いに来た管理人さんが音高くノックする場合、大抵3回「ドンドンドン」と叩いているような気がする。
ミミがロドルフォに火を借りに来るシーン、確かに野田さんは3回ノックしていた。
本当に蛇足の話である。
アンコールの「乾杯の歌」では、聴いていて鳥肌が立った。
とてもいいコンサートだった。
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