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「BROKENマクベス」 トレランス
作 上杉祥三
演出 上杉祥三
出演 長野里美/山下裕子/伊沢磨紀/六角精児
深貝大輔/井沢希旨子/間宮啓行/平尾良樹
戸谷昌弘/姫野恵二/佐野賢一/上杉祥三 他
観劇日 2005年3月20日(日曜日) 午後5時開演
劇場 紀伊國屋ホール E列6番
料金 4500円
上演時間 2時間
演劇ユニット トレランスのお芝居は、確か旗揚げ公演を見ている。池袋の芸術劇場で見たような気がするのだけれど、何故か見事に内容を覚えていない。申し訳ない。ただ、何となく苦手意識だけが残っている。
「BROKEN」シリーズは、確か上杉さんがまだ夢の遊眠社にいた頃に始めた「上杉祥三プロデュース」で上演していたと思う。チラシによると1989年から1995年にかけて何作か上演されていたようだ。私はいずれも見ていない。
その「BROKEN」シリーズ最終作が、トレランスの第4回公演として上演された。
その千秋楽を見てきた。
千秋楽だったのでネタばれがあってもいいような気もするけれど、感想は以下に。
正直に言って、やっぱりちょっと苦手だった。
全体に黒い舞台セットに暗めの照明、「マクベス」の世界と「日本書紀」の世界が渾然一体となったストーリー、言葉遊びが満遍なくちりばめられた台詞、ダンスシーン。
私がお芝居を見始めたのは90年代に入ってからだけど、その少し前の小劇場がそのまま帰ってきた感じだ。
もっと正直に言ってしまうと、80年代の夢の遊眠社と第三舞台のお芝居を足して2で割るとこんな感じになるんじゃないかと思った。
そして、その融合はあまり上手く行っていないように感じてしまった。
でも、それはもちろん私の側にも原因がたくさんある。
「マクベス」のストーリーはシェイクスピアの作品の中では比較的頭に入っている方だと思う。最近では、野田秀樹演出のオペラも見に(聴きに)行った。
でも、日本史の方が全く頭に入っていない。
蘇我馬子の息子が蘇我蝦夷、その息子が蘇我入鹿、蘇我馬子の娘が聖徳太子に嫁いでいてその息子が山背大兄王、聖徳太子の一族を法隆寺に火をかけて殺したのが蘇我入鹿。この辺りまでは、最近読んだ「唯一の神の御名(篠田真由美著)」で頭に入っていたのだけれど、そこから先がさっぱりだ。
マクベスと大海人皇子、マクベス夫人と讃良皇女(後の持統天皇)、ダンカン王とと天智天皇(中大兄皇子)がなぞらえられているらしいことは判る。
3人の魔女に対応して、蘇我馬子・蝦夷・入鹿の3世代に渡る蘇我氏の男達がいることも判る。
でも、どこがどう似ていてどこがどう似ていないのかが、全く把握できていなかった。
中大兄皇子と大海人皇子が兄弟だったのはかすかに覚えているけれど、かれらと蘇我一族の関係ってどうだったっけ?
中大兄皇子と中臣鎌足が大化の改新を実行したのは判ったけど、そのときに大海人皇子は何をしていたんだ?
額田王と、中大兄皇子と大海人皇子の兄弟ってどういう関係だっけ?
壬申の乱を起こしたのは大海人皇子のようだけどその結果はどうなったんだ? 大海人皇子は天武天皇になるんだから中大兄皇子の息子の大友皇子はそこで負けている筈だよな・・・。
劇中でも「山川の日本史」と何度も名前が出て、小道具として実物まで出ていたけれど、私の手元に欲しかった!
実際の日本史の流れが判っていれば、マクベスのストーリーと比較もできたし、登場人物どうしがどうしてなぞらえられていたのかの関係も理解できただろうし、「日本書紀を万葉集で書き換える」とか「覆す」とかの台詞の意味も納得できたと思う。
どこが似ていて、どこをひっくり返そうとしていたのか、その「荒唐無稽さ」を楽しめたと思うけれど、なにぶん、日本史の方が記憶の彼方である。何がどうなると「書き換わった」ことになるのか、何をどう「覆す」ことになるのか、さっぱり判らなくて、面白がるところまで辿り着けなかった。
そして、さっぱり判らないことだけはひしひしと感じられるので、ただ楽しんでしまうこともできないのだ。
「言葉遊び」や「歴史いじり」のお芝居を楽しむためには教養が不可欠なんだと思った。
でも、自分の一般教養のなさを棚にあげて言ってしまうけれど、一般教養をこれだけ要求するなら簡単な史実をチラシにして配布するとかパネルを出すとか、理解を助ける工夫をしてくれてもいいじゃないか、とも思った。
だって、本当に飛鳥時代の日本史を知らないと楽しめないお芝居になっているんだもの。
3人の魔女と額田王を演じた伊沢さん、蘇我馬子を演じた間宮さん、蘇我蝦夷を演じた戸谷さん、「子供のためのシェイクスピア」シリーズでお馴染みの役者さん達が見られたのが嬉しかった。それに、やっぱり彼らは魅力的だ。
そして、ラストシーンの長野さんは、それまで彼女を含めた出演者全員が黒を基調にした衣装だったのに、白いドレスに明るく光りに満ちた舞台、「明日、天気になーれ」の声も高く澄んで明るくて、何を象徴していたのかは実は今もって判らないのだけれど、でも美しかった。
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