「デモクラシー」を見る
「デモクラシー」ホリプロ創業45周年記念
作 マイケル・フレイン
演出 ポール・ミラー
出演 鹿賀丈史/市村正親
近藤芳正/今井朋彦/加藤満/小林正寛/石川禅/温水洋一
三浦浩一/藤木孝
観劇日 2005年3月17日(木曜日) 午後7時開演
劇場 ル・テアトル銀座 8列4番
料金 S席 10000円
上演時間 2時間45分(15分の休憩あり)
鹿賀丈史と市村正親が26年ぶりに舞台共演! である。
チケットが取りにくかった(だから、珍しく平日に観劇している)記憶があるのだけれど、特に後方は空席が目立った。ロビーではこの後の平日公演のチケットを7500円で販売していた。
15分の休憩を挟んで、2時間40分くらいだったと思う。
ネタバレがあるので、お芝居の感想は以下に。
客席の入り口に「劇中の登場人物の人間関係を知っていますか?」「東西ドイツを知っていますか?」というパネルが置かれていた。きっと読んでおいた方がお芝居を理解しやすいのだろうな、難しいという声があったからこういうパネルが置かれるようになったんだろうな、と思ったけど、人だかりがしていたので、人物関係図をざっと見ただけになってしまった。
西ドイツ首相のビリー・ブラントって実在の人物? という程度の、情けない歴史知識だけでお芝居に臨んでしまったのだけれど、史実を知らなくても、政権中枢にいる男達の葛藤と闘争と孤独をお芝居の力で十分に見せてもらったと思う。
鹿賀丈史がビリー・ブラント首相、市村正親が首相秘書にまで上り詰めるけれど実は東ドイツのスパイ、そしてブラント首相を心から尊敬して愛している、という役どころである。
ブラント首相の就任演説で幕を開けたのだけれど、まずその演説に説得されてしまった。
言っていることは抽象的でよく判らなかったのだけれど(それに、時々台詞が早すぎて聞き取りにくかった)、何だかとにかく格好良かったのだ。「カリスマ」ってこういうことなのね、と思った。大体、スーツが格好良い。
そのブラント首相を崇拝しつつ、みんなに邪険にされながらもまとわりついてちょこまかと動き回る秘書のギョームが、故国東ドイツの上司にスパイの成果を報告しながらお芝居を進めることで、説明台詞もすんなり入って来たし、ギョームの苦悩も理解しやすかったと思う。
また、ブラント首相とギョームの関係と、鹿賀丈史と市村正親の関係がオーバーラップして見えてしまって、それも興味深かった。
主役は間違いなくこの二人なのだけれど、でも印象に残ったのは近藤芳正演じるエームケだった。ブラントをなだめすかし、どうにかこうにか操縦して行く。実際のところ、この内閣はブラント首相じゃなくてエームケがいるからこそ保っているんじゃないかと思わせる。それだけの切れ者の筈なのに、当たりは柔らかい。首相室スタッフだけでなく、このお芝居の要にもなっている役柄だったし、演技だったと思う。
逆に悪役のはずの藤木孝演じるヴェーナーは、アクがもっと強くて良かったんじゃないかと思った。
ラストシーン近くで、逮捕されたギョームが「全てはヴェーナーに操られていたのか!」と唸るシーンがあったけれど、そのときに「あぁ、あれが伏線だったのね」という納得の仕方ができなかったのだ。
あのシーンとあのシーンのこの台詞は、ギョームをはめ、ブラント首相を追い落とすための布石だったのね、とその場で納得できていたら、このお芝居の緊迫感は最後に一気に高まったのではないかと思う。
登場人物は男性ばかり10人、全員がスーツを着用し、舞台セットもほとんどない。菱形に舞台が置かれて多少八百屋になり、左奥に数人が座れるテーブル、右奥にギョームの机と椅子、右手前にエームケの机になったり首相の机になったりする(多少豪華な)机と椅子、というシンプルさだ。
でも、地味だけれど、滋味豊かなお芝居だったと思う。
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コメント
ゾンネ様 コメントありがとうございます。
実物のブラント首相を知っている方がご覧になると、やはり全く異なる感想になるのですね。
あまりにも二人のキャラクターと役のキャラクターが合っていて、鹿賀さんと市村さんが役を交換したらどうなるか、考えてもみませんでした。どうなるんでしょう。
「ガラスの仮面」のように、また全く違った味わいのお芝居になったかもしれないと思いました。
投稿: 姫林檎 | 2005.03.25 23:08
あの時代を知っているので見に行きました。ブラント首相はあの劇では演説の旨い、かっこいい政治家として表現されているだけでもっと複雑な内面表現が欲しかった。実際のブラント首相はドイツの大地を感じさせる政治家で、あんなにかっこよくなかった。
この芝居ではギョームを演じた市村の勝ちと感じました。2人が逆の役を演じたらどうなるだろうか?
投稿: ゾンネ | 2005.03.25 17:40