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「海辺のお話」 自転車キンクリートSTORE
作 エドワード・オールビー
訳 鳴海四郎
演出 鈴木裕美
出演 木内みどり/小松和重/歌川椎子/花王おさむ
観劇日 2005年3月21日(月曜日) 午後2時開演
劇場 俳優座劇場 4列10番
料金 4500円
上演時間 2時間(15分の休憩あり)
じてキンは、必ずパンフレットというかちらしというか、キャスト・スタッフ・キャストへのインタビューなどを載せたものを毎回渡してくれるので安心である。
そのパンフレットに次回公演の予定が載っていた。今年の9月から3ヶ月連続で「テレンス・ラティガン3作連続公演」があるそうだ。じてキンのお芝居が観られるのは嬉しいけれど、飯島早苗さんの書いたものではないのが残念である。
どう書いてもネタばれになるので、感想は以下に。
毎回こういうことを書いている気がするのだけれど、エドワード・オールビーという作家も、彼が書いた(らしい)「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」という作品が舞台なのか映画なのかすら知らないで見に行ってしまった。
それでも見に行ったのは、やはり「自転車キンクリートSTORE」というユニット(でいいのか?)と鈴木裕美演出作品を楽しみに思う気持ちが大きかったからだ。
でも、今回は判らなかった。本当に判らなかった。
結構笑って来たのだけれど、でも楽しかったかどうか、自分でもよく判らない。
お話は、タイトル通りの海辺の砂浜でずっと進む。
段々畑のようなところにオフホワイトからベージュの布がかかっていて、砂浜を表現している。シンプルで明るい舞台セットだ。
そこで、花王おさむ演じる初老の夫と木内みどり演じる初老の妻が赤ワインを飲みつつピクニックをしている。
それがこのお芝居の始まりである。
倦怠期なのか、リタイア後の生活のイメージの違いからか、2人とも何となくイライラしていて、会話も噛み合っていない。お互いを不愉快にするようなことをつい言ってしまい、その応酬がエスカレートして行き、ふと我に返ったりどちらかが声を荒げたりして、また元の倦怠感溢れる状態に戻る。その繰り返しだ。
あまりにも救いがなくて、解決もなくて、どこにでもいそうな夫婦過ぎて、居心地の悪さを感じてしまう。
そして1幕の終わり、何故か人の言葉をしゃべる人の大きさのトカゲ(仮)の若夫婦が突然出現する。
何故だー!
心の中で叫んでしまった。
この劇的さを際だたせるために、2時間と少しの上演時間なのに休憩があるんだろう、という気がした。
2幕になり、初老の夫婦とトカゲの夫婦が会話を始める。
物凄く違和感を感じるし、不条理を感じるけれど、とにかく会話が始まる。
この場合、感じの悪い人に見えるけど初老の夫の対応が正しいような気がする。正しいというのはあるべきだという意味ではなく、現実にはそうなっちゃうよね、という意味である。警戒して、信じることができず、つい見下したようなことを言ってしまう。言葉がなかなか通じないことにイライラしてしまう。
一方の妻の方は興味津々で、この小松和重と歌川椎子演じるトカゲ(仮)の夫婦とコミュニケーションを取り、あり得べからざる事態にどんどん適応していく。最後には「進化の手伝いをしましょう」とまで言い出す。「何かをやりたい」という希望の「何か」を見つけたことに興奮し、何としても手放すまいとしているように見える。
トカゲ(仮)の若夫婦の方は、何を考えているのか謎だった。
何故か夫唱婦随を地でいっていることに何か意味があるんだろうか?
トカゲ(仮)の夫婦の存在をどう受け止めればいいのか、それが最後まで判らなかったから、このお芝居が判らなかったのだと思う。
何かの暗喩なのか? 初老の夫婦が見た幻想なのか? このお芝居の世界ではトカゲ(仮)の夫婦は普通に存在しているのか? 彼らと何故バーバル・コミュニケーションが取れてしまうのだ?
頭の中がクエスチョンマークに溢れたまま、お芝居の幕は下りてしまった。
トカゲ(仮)の夫婦が進化を望んだら、それは変化を望み「何かをしたい」と望む妻の勝ちなのか?
トカゲ(仮)の夫婦が海へ戻ることを望んだら、それは穏やかな休息と休養を望む夫の勝ちなのか?
そもそも勝ち負けの問題ではないのかもしれないけれど(多分、勝ち負けの問題ではないのだけれど)、でもそういう風に考えてしまった。
パンフレットを読むと、「死」がこのお芝居の深いところを流れているテーマらしいのだけれど、私には、どちらかというと「進化」とか「今をどう生きるか」といったことが前面に押し出されているように感じられた。
お芝居に、進化について、生きることについて、「考えろよ」と言われた気がした。
ところで、やっぱり彼らは「トカゲ」だったのだろうか。気になる。台本には何と書いてあるのだろう?
パンフレットのタイトルの「話」という文字にしっぽが生えていることに、家に帰ってきてから気がついた。
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