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2005.05.14

「その河をこえて、五月」を見る

「その河をこえて、五月」日韓友情年2005記念事業
作 平田オリザ/金 明和
演出 李 炳鎡/平田オリザ
出演 三田和代/小須田康人/佐藤誓/椿真由美/蟹江一平/島田曜蔵
    白星姫/李南熙/徐絃迵/鄭在恩/金泰希
観劇日 2005年5月14日(土曜日)午後1時開演
劇場 新国立劇場小劇場 B1列14番
料金 4200円
上演時間 2時間20分

 平成14年の初演も見ている。ストーリーはほぼそのままだ。
 今日の読売新聞夕刊に平田オリザ氏がこのお芝居について語った記事が出ていて、それによるとストーリーは変えていないものの、現在に設定を合わせたので)、全体の40%くらいは細かい台詞の手直しが入ったのだそうだ。確かに、3年前には「ペ・ヨンジュン!」なんていう台詞はなかったと思う。

 お芝居が終わってから、新国立劇場のチケットボックスに行って「箱根強羅ホテル」のチケットがあるか聞いてみたら、全公演完売していた。残念。
 今日は朝10時からの「伊東四郎一座」の一般発売でもチケットが取れず、e+であった「ラ・マンチャの男」のシークレット受付でもチケットが取れず、何だかチケット運のない1日だった。

 新国立劇場のチケットボックスで表示されていたところによると、この「その河をこえて、五月」は、まだ席に余裕があるようだった。お勧めである。

 感想は以下に。

 ソウルの河原で、韓国語学校の生徒である日本人の人々と韓国人である韓国語の先生、その家族がお花見をしている、その数時間を切り取ったお芝居である。
 そういえば、今頃になって気になったのだけれど、ソウルでは5月が桜の季節なんだろうか。お芝居の中で、「この辺りの桜は日本人が植えた」という台詞があったので、咲いていたのはソメイヨシノなんだろうと思うのだけれど。

 新国立劇場は公演によって舞台や客席が大幅に組み替えられる。今回の「B1」列は最前列だった。舞台自体も低めに作られているし、本当に目の前でお花見しているようだった。
 反面、字幕(舞台で韓国語が話されているときには日本語字幕が出る)が舞台のかなり前よりの両端にある橋桁(橋の下でお花見をしている設定なのだ)に投影されていたので、字幕を読もうとすると実際にしゃべっている役者さん達を見ることができない。それはとても残念だった。

 平成14年(サッカーのワールドカップ日韓共催の年)に初演されたお芝居で、ストーリーは同じ、役者さん達も連投している方々が多い。懐かしい感じがする。

 このお芝居は、5歳までソウルで生まれ育ち、旦那さんの赴任について来た佐々木久子を演じる三田和代と、同世代である韓国語の先生のお母さんを演じる白星姫の存在感が何と言っても大きい。
 本当に何も知らないし何もしていない私が言うのもなんだけれど、日本が韓国を占領した時代を肌で知っている世代の2人が他の誰よりもお互いを理解し合っている、理解し合おうとしていることに何だかほっとする。

 日本人と韓国人が反感を持ち合ったり、お互いをなじったり、在日朝鮮人の男性と恋人の韓国人の女性が喧嘩をしたりする。
 言葉が上手くないことで、逆に言葉が少しだけ通じることで、誤解したりその反感が強くなったりする。
 カナダ移民を言い出した弟夫婦に対し、お母さんは「理解できない、どうしても嫌だ」と怒りをぶつける。

 お母さんが弟夫婦のカナダ移民を許すシーンでは、何故だか判らないけれど泣けてきた。
 そして、それまで日本人グループと韓国人グループで、少し離れて敷いていた敷物をくっつける。歌を歌う。
 お母さんは日本語で「浜辺の歌(だったと思)」を歌う。
 実は反感の原因が取り除かれたわけではないし、お互いの理解がとても深まったわけではない。でも、何かが共有されたことだけは確かなのだ。

 やっぱり、見に行って良かったな、と思った。

 お芝居を見ているときではなく、今、感想を書こうとしていて思ったのだけれど、このお芝居は感想を書くのがとても難しい。私は全く政治的な人間ではないし、そういったことにとても疎い人間だけれど、だからこそ感想がとても書きにくいと思ったし、デリケートになる必要があるな、と思った。(なれたかどうかはまた別の話だが。)
 乱暴に言ってしまうと、例えばこれがイギリス人と日本人がイギリスでお花見をするお芝居だったら、こんなことは考えなかっただろう、と思うのだ。
 でも、だからこそ、このお芝居が日本人と韓国人の作家によって書かれ、両国の演出家と役者によって作られ、両国で上演されることに大きな意味があるのだろうと思う。

 ところで、小須田康人演じる在日韓国人の朴さんは、初演のときは水泳の選手だったような気がする。そして、確か初演のときは黒い革の上下を着ていたように思う。今回はクレー射撃の選手で、白い涼しげな感じのセットアップを着ていた。この変更は何故行われたのだろう?
 ここで、小須田さんの役柄や服装だけやけに細かく気にしているのは、単に私がファンだからである。

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好きって言ってもいいですか?日韓友情年2005記念事業として再演された『その河をこえて、五月』を、観て参りました。今回は、レビューに先立ち、レポートという形で、深い感銘を受けたこの作品を振り返っておきたいと思います。... [続きを読む]

受信: 2005.05.18 01:18

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