「Deep Forest」を見る
「Deep Forest」G-up presents vol.3
作 ほさかよう
演出 板垣恭一
出演 楠見薫/細見大輔/新谷真弓/伴美奈子
井之上チャル/川渕良和/山中崇/
松嶋亮太/小橋川健治/浅野智/久水広太/若林亜紀
観劇日 2005年6月1日(水曜日)午後7時開演
劇場 SPACE107 B列4番
料金 4500円
上演時間 1時間50分
昨日だったと思うのだけれど、出演者の一人である細見大輔さんが所属する演劇集団キャラメルボックスから「細見大輔が出演してます。平日の公演ならチケットに余裕があります」というお知らせ兼宣伝メールが来た。
それを読んで、前からこの出演者の豪華さが気になっていたし、第三舞台VINTAGE BOX 2全6本の副音声で司会をしている板垣恭一さんが演出だし、今日のお昼過ぎにふと「行ってみよう」と思い立った。
そして、生まれて初めて当日券でお芝居を見てしまった。我ながら、凄い進歩だ(大げさ)。
SPACE107に行ったのも初めてである。スズナリくらいの大きさだろうか。舞台がとても近かった。
キャラメルボックスの役者さん何人かと新感線の粟根まことさんがいらしているのを見かけた。お知らせメールの威力かもしれない。
ネタバレありの感想は以下に。
ヘンゼルとグレーテルを下敷きにした物語だった。
ヘンゼルとグレーテルの物語で、魔女があっさりと暖炉に突き飛ばされてしまうのは何故なのか、その理由を魔女と呼ばれる女の過去に求める物語、というべきかもしれない。
狂言回しは細見大輔演じる「男」が務める。
でも、実はこの「男」がどんな役回りなのか、最後まで今ひとつよく判らなかった。
第三者的に完全にその世界から身を引いている狂言回しではなくて、明らかに楠見薫演じるローザを追いつめようとしていて、物語世界の住人の一人なのは確かだ。けれども、人々から姿が見えない。一体彼が何者なのか、「魔」の一人なのか、何故ローザを追いつめようとするのか、その物語があるともっと良かったのに、と思う。
現実世界でローザを現実的に追いつめるのは、川渕良和演じる「次期町長」を標榜するクレイトンである。
このお芝居の居心地の悪さと落ち着かなさを醸し出していたのは彼だったのではないかと思う。クレイトンがローザを追いつめ、村人が保身のために彼の指示に従ってしまう様子は、いじめの構図と言われているものを何となく連想させた。
楠見薫のローザは迫力である。
かつての娘を溺愛していた柔らかな母親と、現在の光りと娘を失った偏屈で縮こまった老婆(というほど年月はたっていないのだけれど、そう見えたのだ)と、一瞬で演じ分ける。
ひたすら明るく善良な母親のときも、お菓子の家に住む偏屈な老婆のときも、つい目が吸い寄せられるのは一緒だ。彼女一人で舞台空間が埋まっている感じがした。
その楠見薫に、娘とグレーテルの二役(と言っていいのか・・・。ラストシーンで同一人物であったことが判る)で対抗する新谷真弓の存在感も独特だと思う。
可憐で強気な美少女も、ちょっと冷めたしっかり者のグレーテルも、時々見せる冷たい表情も、とても魅力的だった。
ローザが森から出て行こうとしなかったのは何故なのか、結局ローザは娘を殺さなかったのか、記憶喪失になった娘がグレーテルとして帰って来たのはただ「男」の差し金だけなのか、「男」の目的は何なのか、その他諸々の疑問は残る。
最後には、ローザと娘が記憶を取り戻し、それでもお互いを抱きしめ合うことができて、ほっとする。けれど、自分でも意外なのだけれどハッピーエンドという感触はないのだ。 「楽しかった」と手放しで言うには苦すぎる部分がある。
けれど、面白い芝居だった。行って良かったと思う。
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