「桜姫」を見る
コクーン歌舞伎「桜姫」
演出 串田和美
出演 中村福助/中村橋之助/中村勘太郎/中村七之助/坂東弥十郎/中村扇雀/他
観劇日 2005年6月25日(土曜日)午後0時開演
劇場 シアターコクーン 2階5列25番
料金 12600円
上演時間 3時間35分(15分間の休憩あり)
恐らく去年もそうだったと思うのだけれど、普段は飲食禁止の劇場内が、コクーン歌舞伎のときは解放される。開演前や休憩時間にロビーで売られている飲み物食べ物の種類も多く、呼び込みまでしていて楽しい。
昼の12時開演という設定はこのためかと思いつつ、お腹の鳴る音が気になってもいたので休憩時間に食料を調達した。みたらし団子や焼きそば、「さくらっ呼(だったと思う)」という名のお菓子まで売っていた。美味しそうだった。
ネタバレもあるので、感想は以下に。
とりあえず、今、一番気になっているのは出演者である。
ちらしには「役僧残月 坂東弥十郎」と書いてあるし、今さっきシアターコクーンのオフィシャルサイトに行ってみたけれど出演者変更の告知は出ていない。
上演中にそういえば「大和屋」という声を聞いた気もする。
けれど、私の目には残月は串田和美が演じているようにしか見えなかった。あれは絶対に串田和美だったと思う。
一体何故なんだろう。
「コーカサスの白墨の輪」でも進行役を務めていたあさひ7オユキが、今回の「桜姫」でも狂言回しを務める。
歌舞伎の声や言葉を聞き慣れていない私には、日常会話に近い彼の進行があって理解できた成り行きもあって有り難かった。
途中で客席に手拍子を求めたシーンがあって、客席も結構みんな応えていたのだけれど、そこだけは台詞が聞き取りにくかった。
ちらしなどを見て、「桜姫が堕ちていく話」だと思って見に行ったのだけれど、何となく物足りない気がした。
ちらしには「ならず者の男と関係をもってしまった桜姫が、身を持ち崩し、やがて娼婦になろうとも、本能のまま、情念のままに生き続けていく姿を赤裸々に描いた作品です」と書いてある。
実は家宝を盗み父を殺したならず者と関係して子まで為し、でもそのことを知らずに惚れてその男と同じ刺青を自分の腕にも彫る。
出家しようとした寺内でその男と再会して再び関係し、そこを発見されてたまたま居合わせた僧を道連れに杖打ち百回の刑を受ける。
河原に堕ちて再開した我が子とはすぐに生き別れになる。
我が子を探しに向かったところで一幕が終わり、二幕の最初では女郎に売られていく。
そこでならず者の男と再会するが結局は騙されて女郎として売り飛ばされる、売り飛ばす算段に男が消えたその隙に僧とも再開して殺してしまう。
女郎となった彼女の枕元にはその僧の幽霊が出ると返される。
そして、最後の最後、惚れた男が父の敵、家の敵であることを知り、迷いためらった挙げ句に殺してしまう。
こう事象を並べ立てると悲惨の一言なのに、お芝居を見ているときは「まだまだ、こんなもんじゃないでしょう」と思っていた。
2階からオペラグラスなしで見下ろしていたせいかもしれないけれど、桜姫はどこまでも上品で、何となく流されていて、その「流される」ということに抗っていないように見えた。
抵抗しても抵抗しても落ち続けていく運命には逆らえない、という感じでもないし、あるいは逆に堕ち始めたことに自暴自棄になり荒んでいく、という感じでもない。
「情念」というなら、自分(桜姫自身)では望んでいないのに男が自分に狂いその結果として身を持ち崩していく、その運命から抜け出そうとどんなにあがいてもあがけばあがくほど自分も堕ち周りの男達も修羅に落として行く、というところまで桜姫が「悪女」になって欲しかった。
でも、中村福助の桜姫は綺麗だったし、中村橋之助の女に狂う僧と女を狂わすならず者の2役は早変わりも含めて格好良かった。
桜姫は家宝を取り戻し、弟とも再会して、最後はお家を再興する(のだと思う)。
それまでずっと暗かった舞台奥の壁がざっと落ち、絢爛豪華な金色が降ってきて。さらに桜の花と花びらが降ってくる。華やかで、その真ん中で高いところに立ち、赤ん坊を抱いて踊り狂っている桜姫はとても綺麗だった。
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