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2005.07.24

「水平線ホテル」を見る

「水平線ホテル」劇団M.O.P.
作・演出 マキノノゾミ
出演 キムラ緑子/三上市朗/小市慢太郎/林英世
      酒井高陽/木下政治/奥田達士/勝平ともこ/白木三保
      岡村宏懇/友久航/塩湯真弓/永滝元太郎/竹山あけ美
      塩釜明子/神農直隆/岡森諦(扉座)/倉田秀人
      小池貴史(京芸)
観劇日 2005年7月24日 午後2時開演
劇場 紀伊國屋サザンシアター 13列3番
料金 4500円
上演時間 2時間20分(10分の休憩あり)

 重なるときには重なるもので、今回も1列後ろにいた3人組の話し声が気になって仕方がなかった。1幕の前半で止んだのが不幸中の幸いだ。
 本当に上演中のおしゃべりだけは止めて欲しいと思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 劇場で配られるパンフレットによれば、6年ぶりの劇団員総出演の公演で、かつ「これまでの作品の集大成」なのだそうだ。
 私の劇団M.O.Pのイメージは「虚飾の街に別れのキスを」に尽きるところがある。
 今回もそのイメージどおり、何故か「アンナ」や「レイ」や「パウロ」が出てくるのに違和感を感じない、ウエルメイドのかっこいいお芝居だった、と思う。それは間違いない。

 舞台は第二次世界大戦中のイタリア。地中海の孤島に(多分)1軒だけホテルが建っている、というシチュエーション。いかにも一癖ありそうなホテルの女支配人に、その元恋人、毎晩電話をためらっている男に神経症のオペラ歌手、物理学者の一家が集まり、そこに秘密警察が乗り込んでくるとなれば嫌でも期待は高まる。

 秘密警察の男達は「ここに大物スパイがいるはずだ」と言い切ってホテルの周囲を武装した親衛隊で囲み、ホテルの客と従業員をひとりひとり調べ始める。
 素直に取り調べに応じない男がいて、客同士の疑心暗鬼に拍車がかかる。
 ユダヤ人の妻を持つ物理学者一家がアメリカに亡命しようとしていることを弟子が秘密警察に告げて彼らは捕まり、あるあまりこの方向を突き詰めて欲しくない、暴力やピストル音や大きな声で威圧するお芝居が続いて欲しくないなと思い始めた頃に、キムラ緑子演じるホテルの女主人が「実は大物スパイなんてここにはいない。復讐のために嘘を言って秘密警察を呼びつけたのだ」と告げる。
 以降の展開はジェットコースターそのものだ。

 ホテルにある抜け穴を使い、物理学者一家はもちろん、全員がこの孤島から脱出しようとする。 大方が抜け穴から逃げて行き、その場に残っているのは、女主人と、小市慢太郎演じる昔の恋人レイ、三上市朗演じるルイス、そして酒井高陽演じるマネージャーのみ。脱走があと一歩で成功すると思ったそのとき、秘密警察の2人が入ってくる。指揮を執っているオラーノ部長が女主人の復讐の相手だ。
 「より確実な安全」を求めて、マネージャーが裏切ったのだ。

 最後の最後、マネージャーが寝返ったことも含めて全て芝居で、芝居に騙された秘密警察の2人はホテルを飛び出して入口を狙っていた親衛隊に射殺され、その隙に本当に全員が逃げ出す。大団円だ。

 その何年後かの「水平線ホテル」では、過去の事件など関係ないような平和な日々が戻っている。
 まだ第二次世界大戦は続いている。
 そして、トルーマン大統領が日本に原爆を落としたことを発表したというニュースで幕、だ。
 恐らく彼らが逃がした物理学者がアメリカへの亡命を成功させ、原子爆弾の開発に成功したのだ。彼らの作戦は自分たちの命を救っただけではなく、多くの命と歴史に影響を与えたのだ。

 ウエルメイドに作り込まれて「紅の豚」を彷彿とさせるような本編に比べ、このエピローグは重い。
 全員が逃げ出したところで幕ではいけなかったんだろうか。実はそこで暗転が長かったせいもあり、客席からは終演と勘違いして拍手が起きたし、私も拍手していた。ここで終わらせられないことはなかったように思う。
 だから余計に、どう受け止めていいのかまだよく判らない。
 楽しいお芝居だったのだけれど、このエピローグが入ったことで、ただ「楽しかった」では違う気がする。

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