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「ク・ナウカで夢幻能なオセロー」
原作 シェイクスピア
謡曲台本 平川祐弘
演出 宮城聰
間狂言 小田島雄志訳ニヨル
出演 美加理/阿部一徳/吉植荘一郎/中野真希/大高浩一
寺内亜矢子/本多麻紀/片岡佐知子/鈴木陽代
加藤幸夫/たきいみき/大道無門優也/布施安寿香
池田真紀子/杉山夏美/高澤理恵
観劇日 2005年11月12日 午後7時開演
劇場 東京国立博物館 日本庭園 特設能舞台 エリアA
料金 5300円
上演時間 1時間40分
国立博物館の本館では「サド侯爵夫人」が上演されていて、博物館の正門を入ると、本館に大写しになった三島由紀夫の顔写真に迎えられた。
「ク・ナウカ」は東洋館に受付があり、カイロ等を受け取って、午後6時半くらいから番号順に並び始めた。
懐中電灯を片手に番号を連呼しながら整列させていく係員さん達は大変そうだ。10番刻みくらいで旗を立てるか、地面にチョークで書いておくと「大体この辺りに並べば大丈夫」ということが判っていいんじゃないかと思った。
並んだまま日本庭園に誘導され、順番に座ってゆく。一人で見に行った私はたまたま空いていた前から3列目の席に座ることができた。やっぱり二人以上で来ている人が多いのね、としみじみした。
3〜4人に1枚の毛布が配られる。舞台は池の上だし、客席の上には屋根(テント)があるけれど、吹きさらしだ。
私はかなり厚着をして、手袋・マフラーに小さい毛布まで持って行ったからそれほど寒さは感じなかったけれど、終演後「寒い」を連発している人がたくさんいた。防寒対策はちょっと大げさすぎるくらいが良いみたいだ。
感想は以下に。
カイロと一緒に渡されたパンフレットに、能に関する用語が説明してあったりして「入りやすい」ように準備されている。
でも、そういった準備ももちろん導入として効果的だし、かなり字幕の助けを借りたのだけれど、舞台そのものがとても力強いものだったと思う。
正直に言って、ク・ナウカのお芝居はとっつきにくい感じがするのだけれど、今日のオセローはとても楽しめたし充実していた。(そんなに数が多いわけじゃないけれど)今まで見たク・ナウカのお芝居の中では、私としてはベスト・ワンをつけたい。
オセローというシェイクスピア劇はよく知らない。チケットを一緒に「オセローを事前に読んでおいてください」というメッセージが劇団から送られてきていたのだけれど、結局読まないままだった。
私が事前に持っていた知識と言えば、オセローとデズデモーナが結婚していて、オセローの部下にイアーゴーという嫌な奴がいて、こいつの企みでオセローは無実のデズデモーナの不貞を疑って殺してしまう、という程度のあらすじだけだ。
最初に現れた僧侶(女性が演じていたのだけれど、あれは女の人が男装して僧侶になっているという設定だったのか、女優さんが僧侶を演じていただけなのか、判らなかった)が、オセローとデズデモーナが死んだ場所であるサイプラスという島にやってきて、そこでデズデモーナの幽霊に出会い、彼女からことの顛末を聞く、というスタイルである。
最初にスピーカーの方が舞台端に並んだのだけれど、段々ムーバー自身が語ることが多くなり、中盤からはスピーカーというよりはコロスというイメージに近くなった。
ムーバーが語っている内容を、節を変え、調子を変え、抑揚を変え、様々に複数の人間が輪唱していく。もちろん「語り」なのだけれど、その独特の節回しのせいでまさしく「輪唱」に聞こえる。
俳優さん自身が操るパーカッションの音が加わって、ヴェネツィアやオリーブが読み込まれた短歌が彼らによって語られるところなどは、まるでコンサートのようだ。
こんなにしゃべる美加理さんを見たのは(多分)初めてだし、あんなに動く阿部さんを見たのも初めてだった。
何だか上手く言えないのだけれど、とても判りやすかったし、とても充実していたし、とても楽しかった。
「能」という様式を借りることでどんな効果があり、どんな「隠れた意味」が生まれたか、知識としては全く判っていないけれど、でも「成功した舞台だ」という感じがとても強くした。
他のシェイクスピア劇も同じスタイルで見てみたいと思った。
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