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2005.12.25

「12人の優しい日本人」を見る

「12人の優しい日本人」
作・演出 三谷幸喜
出演 浅野和之/石田ゆり子/伊藤正之/江口洋介
    小日向文世/鈴木砂羽/筒井道隆/生瀬勝久
    温水洋一/堀内敬子/堀部圭亮/山寺宏一
観劇日 2005年12月25日 午後2時開演
劇場 パルコ劇場 I列23番
料金 9000円
上演時間 2時間10分

 サンシャインボーイズの初演は見ていなくて、映画版はビデオで見ている。今回初めて舞台で「12人の優しい日本人」を見た。
 映画版を見たときはただひたすら笑っていたけれど、今回は陪審員制度が導入されると決まっているせいか、何故かリアルに痛かったりした。

 ネタバレありの感想は以下に。

 映画版とストーリーはほとんど変わっていない。配役のバランス(こういう感じの人物がいて、こういう意見を言う、みたいな)もほとんど変わっていないと思う。
 お芝居を見ていて、自分が映画版のストーリーや台詞をけっこう覚えていることが判って驚いた。どちらかというと、再演のお芝居を見てもストーリーすら忘れてしまっていることが多いのに、珍しいことだ。
 これは、多分、見たのが「舞台」ではなく「映像」だったからだと思う。
 お芝居と映画ではお芝居の方が断然好きだしよく見ているのに、何故だか映像で見たものの方がくっきりと記憶に残っていることが多い。

 舞台は円形(というか、ドーナツ形)テーブルが置かれた、割と古めかしい感じの部屋。そこで、ほぼリアルタイムの2時間、被告に対する判決をどうするか、陪審員に選ばれた12名が話し合う様子をそのまま見せる。
 ノンストップで暗転もなければ、袖に引っ込む役者さんもほとんどいない。喫茶の注文をするときや届いたとき、ピザの注文をするときに「マスター」と呼ばれる陪審員の一人が多少出入りするだけだ。

 ストーリーを一言で言ってしまうと、12人全員が無罪だと主張していたのだけれど、1人が「自分は有罪だと思う。話し合いましょう。」と言い出したことをきっかけに疑問点が話され、徐々に有罪と考える人が増えてきて、無罪を主張するのは2人だけになってしまう。追い詰められる2人はでも無罪の理由を説明できず「何かが違う」としか言えない。それまで興味なさそうな顔をしていた1人が「自分は弁護士だ」と言って、被告が罪を犯していないのではないかという疑問につながる事実を挙げ始める。そうすると、有罪につながる事実だと思われていたことに説明がつき、最後には全員が無罪だと確信して話し合いを終える。

 ストーリーだけ見てもカタルシスを得られるはずだし、最初に映画版を見たときは「すっきりした」と思った記憶があるのに、何故だか今回は「すっきりした」という風には思えなかったし、「(被告に取って)良かった」という風にも思えなかった。何故ろう。
 理由のひとつは、「殺人である」と立証するのは検察官の仕事で、それに対して合理的な疑問を差し挟む余地があるとするならば、それを主張するべきは弁護士であって陪審員ではないんじゃないの、という気がしたからだと思う。
 そして、「こんな風に上手く行くわけがないじゃないか」と思ってしまったせいかもしれない。
 いずれにしても、「陪審員制度」が身近になってきて、力業で押し切られるには、見ている私の方がかなり疑い深くなっているからなんだろう。

 気になったのは、今回出演していた役者さんたちの年齢が比較的近いように見えたことだった。
 大体、役として30歳から50歳の間なんじゃないかと思ったのだけれど、実際の設定はどうだったのだろう。陪審員が12人集まったら、もっとバラけるのではないだろうか。
 こういう妙な現実味を要求してしまうのも、今、再演されているからだと思う。

 でも、ストーリーをほぼ記憶していて、これだけ疑い深い上に文句もつけている観客の私でも、楽しく見たし、とても面白いお芝居だったと思う。2時間があっという間だったのは事実だ。
 2時間を12人で割ったら1人当たり10分の持ち時間しかない。
 でも、このお芝居では、1人10分ずつの自己紹介をされるよりもはるかに判りやすく、登場人物1人1人の性格や考え方や面白さが味わえた。しかも、そこには、それぞれの「おかしみ」までが表現されて、大いに笑うことができた。それは何だかもの凄いことのように思う。

 もちろん、それは役者さんたち1人1人のハマり具合によるところも大きい。
 でも、実を言うと、最初のうち、山寺さんと生瀬さんを逆に思っていた。何だかこの2人は声が似ている。声が似ているせいで、お芝居が進むうちに判ってくるのだけれど、最初のうちは同じようなキャラに思えてしまった。
 生瀬さんが「有罪」を最後まで頑固に主張する陪審員なのだけれど、何というか、最初はもっと大げさに気弱そうに見せてくれていたら区別がついたのに。
 12人の中では、最後まで理由が説明できないまま無罪の主張を頑固に貫く主婦を演じた堀内敬子さんが印象に残った。

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