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「セパレート・テーブルズ」自転車キンクリートSTORE ラティガンまつり#3
作 テレンス・ラティガン
訳・演出 マキノノゾミ
出演 久世星佳/神野三鈴/山田まりや/菅原大吉
坂手洋二/歌川椎子/南谷朝子/林英世
大家仁志/奥田達士/小飯塚貴世江/秋山エリサ
木下智恵
観劇日 2005年12月23日 午後2時開演(千秋楽)
劇場 スペース・ゼロ 2列8番
料金 5000円
上演時間 3時間40分(15分の休憩あり)
2列8番は実際上最前列だった。しかし、舞台に奥行きがあり、階段状に傾斜があったので、却って最前列は見にくかったようにも思う。ちょっと残念だ。
開演前は「休憩10分」と貼り出してあったのだけれど、休憩のアナウンスでは「15分」と言われ、ロビーに貼られた上演時間の紙も書き換えられていた。千秋楽のためなのか、上演時間は上記のとおり少し長めだった。
500円のパンフレットを購入した。「ウィンズロウ・ボーイ」と「ブラウニング・バージョン」のパンフレットも販売されていた。
3作の中では、私は「ウィンズロウ・ボーイ」が一番好みに合っていたように思う。
ネタバレありの感想は以下に。
イギリスの保養地(だと思う)にある、少し寂れたホテルが舞台だ。だけれど、実は私はセットからは「寂れた」感じは受けなかった。
長期滞在している年配の一人客が、主な客層のようだ。その客たちに食事をサーブするメイドたちがやけに乱暴でエレガントさに全く欠ける。それで「一流でない」という設定を理解した。
休憩前はある冬のディナータイムから次の日の朝まで、休憩後はある夏の昼間からディナータイムまで、その2つのお話は、登場人物はかなり重なっているものの、つながりはあまりない。別々に上演することも不可能ではないのではないかと思ってしまう。
もちろん、特に久世星佳演じるホテルの支配人に注目すると、この2つのお話が連続していることに意味が生まれてくる。
長期滞在客たちはいずれも役よりも役者さん達の方が若い。前半はあまり違和感を感じなかったのだけれど、後半になって菅原大吉演じる退役軍人のポロック少佐だけは何となく違和感を感じた。
多分、「少し若ぶっている老人を、実際に若い俳優さんが演じている」ためなんじゃないかと思う。
前半は夫婦の物語で、後半は母娘の物語という風にも取れる。そういう風に見れば、これは家族のお芝居だ。
前半は「別れた夫婦」の物語で、後半は「他人を怖いと思っている男女」の物語というふうにも見える。そういう風に受け止めれば、これは恋愛のお芝居だ。
どちらのお芝居なのかは、実はよく判らなかった。
前半、元のさやに収まった元夫婦は今後どうするのか、穏やかに暮らしていけるのか、お互いに傷つけ合う日々を送るのか、それは示されない。
ただ、今、お互いがお互いを必要としていることを認め合った、ということだけを示して終わる。
後半、痴漢行為で逮捕された自称少佐がこの後もホテルの長期滞在客達と上手くやっていけるのか、山田まりや演じるシヴィルは少しずつでも外に向かって行動できるようになるのか、それも示されない。
でも、2人が(多分、初めて)自分に向かい合って弱さに立ち向かおうとした、という事実だけを示して幕となる。
どちらの2人も、多分、そんなにすんなりと上手くは行かないように思う。
でも、「ハッピー・エンディング」より、何だか納得がゆくように思う。もし上手く行かなかったとしても、このお芝居で見た瞬間の選択は間違っていなかった、という風に思える。
それは、多分、後半にホテルの支配人であるパットが、前半で味わった失恋(というか、「喪失」というイメージだ)を「いい思い出だった」と明るい顔で振り返るシーンがあるからだろう。
今回見たテレンス・ラティガン作の3作のうちでは、私は「ウィンズロウ・ボーイ」が一番好みに合っていたと思う。
でも、どの作品も、練られていて、ついつい物語の行方が気になって時間が気にならなくなってしまう、いいお芝居だった。
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