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シルヴィ・ギエム“最後の”「ボレロ」
<スプリング・アンド・フォール>
音楽 ドヴォルザーク
振付 ジョン・ノイマイヤー
出演 東京バレエ団
<小さな死>
音楽 モーツァルト
振付 イリ・キリアン
出演 シルヴィ・ギエム
特別出演 マッシモ・ムッル(ミラノ・スカラ座バレエ団)
<シンフォニー・イン・D>
音楽 ハイドン
振付 イリ・キリアン
出演 東京バレエ団
<ボレロ>
音楽 ラヴェル
振付 モーリス・ベジャール
出演 シルヴィ・ギエム/東京バレエ団
観劇日 2005年12月5日 午後6時30分開演
劇場 東京文化会館大ホール 14列36番
料金 14000円
上演時間 2時間10分(20分、15分の休憩あり)
眼福、の一言に尽きる。
会場限定で販売されていたシルヴィ・ギエムの写真集が着々と売れていたのも納得した。私は10000円を出す勇気はなかったけれども。
音楽がテープだったのが本当に残念だ。
感想は以下に。
最初に断っておくと、私は全く素養のないド素人である。生涯にバレエを見たのは、5回よりは多いと思うけれど2桁に乗るほどではないと思う。
これは、バレエとか人間の体とかを全くよく知らない人間の、素朴な感想である。
<小さな死>は、2人ともこれ以上ないくらいシンプルな衣装で、ストイックなバレエだったと思う。
ずっと2人だけで、それもかなり接近している振り付けが多く、エロティックに演じればこれほどエロティックなバレエはないだろうと思うのに、この<小さな死>はストイックすぎるくらいストイックだった。筋肉が正しくついた肉体をいかに魅せるか、という実験をしているようだった。
それでいて、2人の動きは呼吸が合っていて、ほとんどずれることがなかった。
この後に続けて演じるのなら、そして素人目にも技量の差が明らかなのだから、<シンフォニー・イン・D>のようにコミカルに魅せるプログラムを持ってくるしかなかったんだろうな、と思ってしまった。
でも、運動会のような衣装と、コミカルな表情と動きが楽しい。
<スプリング・アンド・フォール>でも思ったのだけれど、バレエというのは、例えばシンクロナイズドスイミングのように「誰か一人でも動きがずれたら減点」というわけではないのだろうか。何というか「一糸乱れず」というところには、価値を置いていないのだろうか。
時々、この4人がまっすぐに並んだまま動いたらもっと綺麗だったのに、とか、この人だけ足の上げ方が違うような気がする、とか、気になることがあった。
あと、この2つのプログラムは、歩いたり走ったりするシーンが多かったのだけれど、軽いし速いし格好良いのだけれど、何故だか「美しい」という印象を受けなかったのが残念な気がする。
最後に登場した<ボレロ>はその始まりからして驚きだった。高い位置にいるギエムの手の先だけにスポットライトが当たり、まるで機械のように動く手をしばらくスポットが追う。
明かりがつくと、彼女は舞台の真ん中にある赤いステージの上に乗り、周りを椅子に座って同じポーズを取った男性ダンサーにぐるっと囲まれている。そして、全員が同じ(ように見える)衣装だ。ギエムも一見、上半身に何も身につけず、黒のスパッツだけを身につけているように錯覚する。
<ボレロ>という音楽の力もあって、追いつめられているような、情熱的な振り付けなのだと思う。
でも、ギエムが踊ると、何というかクールに情熱を演じているように見える。
普通なら<ボレロ>という音楽をこの振り付けで踊るなら、踊る人は「激情」だったり感情の高ぶりのようなものを演じようとするんじゃないかと思う。
でも、この<ボレロ>は、使い古されている上にわざとらしいけれど「真実(ほんとう)の肉体」を演じているように見えた。
もう、とにかく眼福、の一言に尽きる。
必死になってチケットを取って見て良かったと思う。
そういえば、<ボレロ>になってから埋まった席がちらほらあったように思う。
きっとリピーターの人が何とか<ボレロ>だけは(あるいは最初から<ボレロ>だけを)見に来ていたんだろうな、と思う。
私は基本的に万難を排して開演時間に間に合うよう努力するし、途中で席を立つこともしたことはないしするべきではないと思っているのだけれど(アンコールの前に帰ったことはあるけど)、でもそれもむべなるかな、と思ってしまった。
それくらい<ボレロ>の力と存在感は圧倒的だった。
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