「ラブハンドル LOVEHANDLES」を見る
「ラブハンドル LOVEHANDLES」Parco+Thirdstage Presents
作 中谷まゆみ
演出 板垣恭一
出演 原田泰造/富田靖子/瀬川亮/長野里美
小須田康人/石黒賢
観劇日 2006年2月18日 午後2時開演
劇場 パルコ劇場 C列24番
料金 7500円
上演時間 2時間55分(15分間の休憩あり)
やっぱり作・中谷まゆみ、演出・板垣恭一のコンビの作品は好きだ。
1幕が終わったところでは、「ん?」と思っていたのだけれど、終演後にはパンフレット(1200円)を購入してしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
あんまり定かな記憶ではないので、またしても私の思いこみの可能性も高いのだけれど、石黒賢の役どころは結婚詐欺師じゃなかっただろうか。チラシでそういう紹介を見たような気がするのだけれど・・・。
そんなわけで、お芝居が始まってしばらくは、「この気弱そうな薄井がいつ結婚詐欺師という正体を明らかにするんだろう」と思っていた。富田靖子演じる千鶴がやけにこの薄井に親切だったもので、千鶴が結婚詐欺にひっかかる話になるのかとまで考えた私は妄想力がありすぎである。
離婚経験ありで17歳の娘がいる原田泰造演じる弁護士と、その弁護士に運命を感じて年収1000万円の漫画家の仕事を辞めて10年間同棲している富田靖子演じる女と、実は弁護士が離婚した元妻に好きだと言えない石黒賢演じる男と、瀬川亮演じる自称「弁護士の娘の恋人」、これだけ役者が揃えばしっちゃかめっちゃかになるのはことの成り行きとして非常に理解できる。
弁護士の離婚した妻も実は薄井を憎からず思っていて、それを知っている娘は父親と暮らしたいと考えている、という感じで、舞台上に現れない登場人物にも事情があるとなると、そのしっちゃかめっちゃかさが更にパワーアップするのも納得だ。
長野里美演じる弁護士の姉が「夫が自分に相談もなしに勤めを辞めた」「夫が浮気している! 離婚する!」と叫んでいるのも、大した波乱ではないような気になってしまう。小須田康人演じる夫が来て、全ては姉の誤解だということが判明し仲良く帰って行くところをみれば、姉夫婦の存在は「ほっとさせる」ためにあるんじゃないかとまで思ってしまう。
第1幕は(確か、この時点では薄井の懸想の相手は判明していない)、そういう波乱を予感させたところで終わる。
実は「予感させる」ばっかりで終わってしまうことに不満がなくもなかったし、「結婚」「夢」「運命の人」という類いの台詞を連発する千鶴の存在にかなりイライラして、富田靖子ってこんな風に演じる女優さんだったっけ、と役よりも演じている役者さんに内心で突っ込んでしまったりしていた。
2幕は怒濤のように一気に張り巡らされた伏線が明らかにされてゆく。
ラストシーン近く、実は姉は若年性アルツハイマーを患っていることが明かされる。勤めを辞めたのも、彼女の故郷に帰るためだったことが判る。
「どうして言ってくれなかったんだ」と責める弁護士に対して、「変人」と言われ続けた夫は、「彼女の人生の責任を持つ権利を持っているのは、弟であるきみではなくて、夫である僕だ」と静かに宣言する。そして「夫であって良かったと思う」と続けるのだ。
そういう風に言ってくれるんだったら変人かどうかなんて大した問題じゃないよ、と思った。しかも、この夫は、全く無理している風情なく、当たり前のことのように言ったのだ。
とはいうものの、日常的にウサギの耳のついた耳当てをつけている人物と並んで歩け、と言われたら、かなり考えるとは思う。
そのシーンを、「実家に帰る」と言って飛び出した千鶴も見ている。
そして、弁護士は前妻との離婚後の心情を多分初めて千鶴に話し、ずっと避けていたプロポーズをする。
娘からの電話に「大切な人がいる。今度ちゃんと紹介する。」と言う。
私から見ると、今までにないくらいの大団円、ハッピーエンドだ。
でも、このラストシーンを作者と演出家が「少しだけ前向き」「少しだけハッピーエンド」だと考えているのだとすると、「これから先にこそ、困難が山ほどあるんだよ」というメッセージだということになる。
それはとてもシニカルな結婚観だな、だけどきっとそれが本当なんだな、でももうちょっと甘くてもいいんじゃない、と思った。
そんなことをつらつらと考えていたら、もの凄い時間がたっていた。
見たときは何だか焦点が合っていないような気がしたのだけれど、あとから何かが効いてくるお芝居だった。
<2006年2月19日追記>
パンフレットの最後に載っていた「ラブハンドルの登場人物別に見る、恋愛チャート・テスト」をやってみたら、立花勝(弁護士)タイプだった。納得・・・。
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