« 「メタル マクベス」の抽選予約に申し込む | トップページ | 「フロッグとトード」の抽選予約に申し込む »

2006.02.11

「間違いの喜劇」を見る

彩の国シェイクスピア・シリーズ第15弾「間違いの喜劇」
作 W.シェイクスピア
翻訳 松岡和子
演出 蜷川幸雄
出演 小栗旬/高橋洋/内田滋/月川勇気
    鶴見辰吾/吉田鋼太郎/瑳川哲朗/川辺久造
    たかお鷹/原康義/妹尾正文/清家栄一
    飯田邦博/山下禎啓/高野力哉/田村真 他
観劇日 2006年2月11日 午後6時開演
劇場 彩の国さいたま芸術劇場大ホール 1階M列9番
料金 9000円
上演時間 1時間50分

 開演15分前くらいから、ロビーで劇中生演奏をする方々が演奏していた。にぎやかで楽しい。
 パンフレット(1500円)の他、シェイクスピアの本が物販されていた。「タイタス・アンドロニカス」のチケットも販売されていて、ロビーで購入すると舞台写真がもらえるようだ(購入しなかったし通りすがりに見ただけなので詳細は不明)。

 ネタバレありの感想は以下に。

 劇場に入ると、そこは一面の鏡、に見える舞台セットだった。
 舞台上に壁が作られ、鏡というか金属っぽい感じで、客席が映っている。2階席まである劇場だから、舞台を客席が挟み、ギリシャの円形劇場のようにすり鉢の底に舞台があるような錯覚を覚えさせる。
 正直に言って、またこれかい、と思ってしまった。

 その壁には、人の彫刻が飾られていて、舞台が始まると扉が切られ、開けたり閉めたりすることで場面転換が行われる。照明のマジックなのか、舞台が始まってしまうと「自分たちが映っている」という感じは薄れる。
 M列の席はかなり後方なのかと思っていたのだけれど、イメージよりもずっと舞台が近かった。
 また、役者さん達の登場と退場に客席通路が使われることが多く、通路から2番目の席だったので、役者さんを間近に見られたるのも楽しい。

 「間違いの喜劇」は多分初めて見るけれど、野村萬斎が狂言に翻案した「間違いの狂言」は見たことがある。ストーリーは何となく覚えていたので、安心して見ることができた。多分、このお芝居はストーリーと登場人物の関係を知っていた方が面白く見られる稀有なケースだと思う。
 だからこそ、お芝居の冒頭で、吉田鋼太郎演じるイジーオンが、自分には小栗旬が二役で演じる双子の息子がいて、同じ日に生まれた高橋洋演じる双子の男の子を買い取ってその従者とし、一家で故郷に帰る途中に船が難破して、自分と長男と従者の兄、妻と次男と従者の弟の二手に生き別れになってしまった、と語るのだと思う。

 兄を捜すためにエフェソスの街にやってきた次男と従者(弟)は、その街で生まれ育った長男と従者(兄)と間違えられ、知らない人間に挨拶され、二人が別々に動けばそれぞれの兄に間違えられる。
 長男には内田滋演じる妻がいて、何故かちょうどよく月川悠貴演じるその妹と一緒に暮らしている。
 父のイジーオンは、1000マルクの保釈金が払えないばかりに今日の夕方には処刑される運命だ。

 そういえば、このお芝居は舞台上の全員が男優だ。
 ふくらんだスカートのおかげもあるとは思うけれど、この姉妹はウエストも細くて、妹のドレスなんて背中が大きく開いていたのだけれどとても綺麗だった。オープニングはこの妹が随分と固くぎこちなく見えたけれど、お芝居に入ってみると妹の方が美形に見えたのが不思議だった。

 それはともかくとして、これだけ役者が揃えば、もうあとはお決まりのしっちゃかめっちゃかの大混乱だ。
 次男は街のあちこちでみなが自分を知っていることに不思議がり、そのくせ長男の家に乗り込んだりするものだから訳の判らなさに拍車がかかってくる。
 船の難破で赤ちゃんの頃に生き別れになった二組の双子がどうして同じ服を着ているんだ、などというつっこみ入れてはいけないのだ。

 結末は大団円だと判っていても、長男が監獄につながれ、身代金を取りに行かせた従者は次男の元に戻ってしまい、妻は夫が狂ってしまったのだと思いこんで家に閉じこめようとする。次男は次男で捕縛されそうになった挙げ句に修道院に逃げ込んだ辺りで、一体どうやって収拾をつけるのかとむずむずするというか、落ち着かなさを感じてしまった。
 ハラハラとかドキドキではなくて、むずむずという感じだった。

 物語としての「どう収拾をつけるのか」というのとは別に、筋書きからいってラストには一人二役の息子と従者を4人舞台上に揃えなくては話にならないと思うのだけれど、それをどうやって表すのだろうとそれも気になる。
 別々に現れているときは、赤いマントの長男と赤い帽子の従者(兄)、白いマントの次男と白い帽子の従者(弟)と区別されていた。長男の妻姉妹は姉のアクセントカラーが白で妹のそれが赤だったのは何か意味があったのだろうか。
 
 修道院前にイジーオンが処刑されるために連行され、そこでまず長男と対面する。7年前に長男を捜しに出かけた次男と勘違いしてまた話を混乱させかけるが、その混乱を納めたのが、実は修道院長となっていた鶴見辰吾演じる妻のエミリアだった、という仕掛けには驚いた。私はその部分はすっかり忘れていたらしい。
 衣装と髪型をそっくりにした2人に次男と従者(弟)を演じさせ、声は長男と従者(兄)が腹話術っぽくしゃべることで、ラストシーンには長男と次男と従者(兄弟)を揃えていた。

 最初と最後にしか出てこない吉田鋼太郎が何とも勿体ないけれど、その分、印象も強い。
 一人二役を演じた小栗旬と高橋洋は、二役の区別が今ひとつつきにくかったけれど、そもそも「妻や両親さえ間違えるほどうり二つの双子」という設定だからそれもありなのか、という気もする。
 高橋洋の道化めいた演技が楽しい。
 全体的に細かに笑いを取りつつ、舞台はもちろんのこと客席も走り回って、あっという間に2時間を走り抜ける、楽しいお芝居だった。

|

« 「メタル マクベス」の抽選予約に申し込む | トップページ | 「フロッグとトード」の抽選予約に申し込む »

*芝居」カテゴリの記事

*感想」カテゴリの記事

コメント

都弥乃さま、コメントありがとうございます。

 「間違いの喜劇」楽しかったですよね。同好の士がいて嬉しいです(笑)。
 「メタル マクベス」もチケット争奪が激しそうですね。でも、DVDじゃなく、やっぱり生で舞台を見たいな、と思います。

投稿: 姫林檎 | 2006.02.13 22:15

観てきました、私も。
これ、すごく好きです。
次の「タイタス・アンドロニカス」がどっしり重いので、
冬だし(関係ないか?)ほわ~んと観られるのがいいなぁと
思いました。

さてさて、私も「メタルマクベス」申し込みました。
平日でも18時スタートということで、友達と
「半休取っちゃって、表参道ヒルズで優雅に食べてから
観劇だ~」
とか言っちゃってますが。まず取れるのか?

投稿: 都弥乃 | 2006.02.12 21:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「間違いの喜劇」を見る:

« 「メタル マクベス」の抽選予約に申し込む | トップページ | 「フロッグとトード」の抽選予約に申し込む »