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2006.02.25

「ガラスの動物園」を見る

「ガラスの動物園」
作 テネシー・ウィリアムズ
演出 イリーナ・ブルック
出演 木内みどり/中嶋朋子/石母田史朗/木場勝己
観劇日 2006年2月25日 午後1時開演
劇場 新国立劇場小劇場 C1列16番
料金 5250円
上演時間 2時間

 ロビーではパンフレット(値段は見損ねた)と、劇中で使われている曲を集めたCDが販売されていた。CDはロビーのみの販売ということだった。

 ネタバレあり、かもしれない感想は以下に。

 前に、tptで上演された「ガラスの動物園」を見たことがあるけれど、実はあまり記憶がない。
 全体的に黒っぽい暗めの舞台だったこと、姉のローラを富田靖子が演じていて、母親を佐藤オリエが演じていたこと、ローラは足が悪くてもの凄く引っ込み思案なこと、弟がいつもイライラしていること、弟が姉に引き合わせるために職場の同僚を連れてくること、印象としてはあまり幸せな結末を迎えなかったこと・・・。覚えているのはこれくらいだ。

 なので、最初に劇場に入って舞台をみたとき、やけに明るくて小綺麗な室内の様子だったのが意外だった。
 あれ、こんなに明るい舞台の似合うお話だったっけ? と思った。

 弟のトムを木場勝己が演じていて、お話の構成自体を「トムの回想」に作り替えてあった。
 「今」のトムは語り、「回想の中」のトムを演じることもする。だから、回想の中では、トムの年齢がおかしいのだけれど、そこに違和感はなかった。自分の頭の中で昔のことを思い出すとき、自分だけは今の自分を置いているのと同じ感覚だと思う。

 トムの回想の中で、トムの一家はちぐはぐで、その焦燥感というか全然噛み合っていない感じが、この間見た「ラブハンドル」とは別の意味で痛かった。
 多分、トムの回想だから、このお芝居全体が少しだけトムに親切にトムを擁護するような印象があって、その分、木内みどり演じる母親が非常にヒステリックで理不尽なことだけを言い続けているように見えてしまう。
 トムは中嶋朋子演じる姉のローラには優しい目を向けているのだけれど、それでもローラは「優しい」のではなく「自分にとって不快なことを避けている」という要素が強いように感じる。
 正直に言って、前半はこの家族にいたたまれない感じを一番強く感じた。

 石母田史朗演じるジムが一家に食事に招かれて現れると、ローラが少しずつ彼に慣れて明るくなって当たり前の娘のようになっていって、舞台は一転して「幸せな二人」の雰囲気になる。
 それは、恐らくは誰にも触らせなかったのだろうガラス細工の動物を、ローラがジムに持たせることからも、ローラが常になく他人に心を開いている。
 そのせいか、スクリーンに映し出されるガラス細工のユニコーンもひときわ大きく映し出されているように見える。

 でも、幸せな時間は一瞬で終わり、ジムには婚約者がいることが判り、ローラを置き去りにして彼は帰って行く。それは間違いなく誠実な態度なのだけれど、ローラにとって、一度、明るさを感じた後の暗さは、前と同じ暗さでも、よりいっそう深い闇のように感じられるのは仕方のないことだ。
 母親が自分のことのように嘆くことで、その暗さはさらに増幅されるようだ。
 そして、ついにトムは家を出るという選択をする。

 そこで、トムが家を出たから、家を出たところでトムの回想は終わり、「今」のトムがトムのその後を語り出す。
 トムが語る家族は姉のローラのことで、家を出て行ってしまった父親のことですら「僕は父親の後を追った」という表現でその存在の大きさを語るのに、母親のことはほとんど彼のその後には出てこない。

 意外なほど2時間が早くて、いたたまれない感じがするのだけれど、何だか判りやすかったようにも思う。
 不思議な感じの舞台だった。

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