「エキスポ」を見る
「エキスポ」加藤健一事務所
作 中島淳彦
演出 久世龍之介
出演 加藤健一/畠中洋/新井康弘/加藤忍
富本牧子/高橋真理(扉座)/さとうこうじ/横山利彦
篠田剛(演劇集団キャラメルボックス)/浅野雅博(文学座)
石坂史朗(扉座)/伊原農/有福正志/外波山文明(椿組)
観劇日 2006年3月4日 午後1時開演
劇場 本多劇場 P列6番
料金 5000円
上演時間 2時間
2週連続の本多劇場。先週は「女中たち」の千秋楽で、今週の「エキスポ」は幕が開いてまだ3日目だ。
すっかり開演を午後2時と勘違いしていて慌てて駆けつけた。多分、劇場に到着したときには1時を回っていたと思う。まだ幕は上がっていなかったし、最後列の通路席だったので、他の方に迷惑をかけずに席に着くことができてほっとした。しかし、気をつけなければ。
そんなわけで、ロビーでパンフレットの販売もされていたけど、値段等は確認できなかった。
ネタバレありの感想は以下に。
「エキスポ」といったら、私の場合は「つくば万博」を思い出す。
「愛・地球博」も、「花と緑の博覧会」も行っていないのだから仕方がない。
このお芝居の舞台はどの博覧会だろうと思っていたら、宮崎県の海と山に囲まれた田舎町で突然一家の大黒柱である母が亡くなったばかりの大場家が舞台だった。
ちょうど大阪万博が開催されているときのお話だ。「エキスポ」は大阪万博のことだった。
劇中に「月の石」の話なども出てきて、そういえば「つくば万博」は「大阪万博」に学んでアメリカ館とソ連館を放して動線を確保し人を分散させようとしたのだけれど、蓋を開けてみればいわゆる企業パビリオンばかりが大盛況でその予想は完全に外れたという話を聞いたな、などと余計なことを思い出した。
母のお通夜と告別式と、その2日間の物語だ。
しめっぽくならず、どちらかというと「てんやわんや」という感じでお話は進んで行く。
どうもこの一家は男の人たちがだらしなくて、そもそも一家の家計は母が担っていたようだし、加藤健一演じる長男のところには「自分の妻を寝取られた。あなたのお母さんはその詫びにと毎月15000円を渡してくれていた」などという男がやってくる。新井康弘演じるいとこは何だかあやしげな「司会業」が生業のようだし、加藤忍演じる長女の別れた夫は「(長女が)作曲した曲を自分の曲として発表したい」という用事で訪ねてくる。この夫を演じるのが畠中洋だ。
何だか登場する男たちの中で曲がりなりにも働いているのは、母が「万博旅行5人分」を依頼した旅行社のおじさんと、長女の小学校の同級生である葬儀屋さんだけみたいだ。
私も覚えがあるけれど、お通夜・お葬式というのは、普段ほとんど顔を合わせたことのない親戚の人々と会う場である。しかも、こちらには記憶がなくても、あちらからは「大きくなって」などと言われたりもする。
大場家でも、「このたびは・・・」「ご苦労様です」という当たり前のやりとりの後で、「で、誰?」「知らん」というやりとりが繰り返される。それが可笑しい。
この「母」という人がまた、昼は定食屋、夜は連れ込み(と劇中では言われていた)をやっていたそうだから、家族も知らない知り合いがたくさんいて、余計にこういう会話が多くなるようだ。
それが、「父」には面白くないらしい。
ちゃきちゃきと仕切っている「地元の人間じゃない」長男の嫁や、母の通夜で大正琴を弾く長女、母の通夜の席でさえ「この男がおまえの本当の父親じゃないか」などと言われてしまう次女、亡くなった母も含めてやっぱり女は強い。
稼いでいない父は、母のお香典から旅行代金を都合しようとこっそり20万円を抜く。長男は、男に払う15000円をやっぱり母のお香典から調達する。父の姿を見た香典泥棒の男は「今回は盗んでいない」と胸を張りつつ、焼酎1本を報酬に「泥棒として」逃げる。男たちときたら情けない限りだ。
結局のところ、母が一緒に万博に行こうとした5人は誰だったのか、謎のままだ。
ラストシーンは、万博に出かけた家族5人、母の遺骨を抱いた父がテレビのインタビューを受けるところだ。そこでこの父は、母の最期のことばである「人類の進歩と調和」を何度も叫ぶ。
正直に言って、何となくとりとめがないし、何となく解決されていないことが多いような座りの悪いような感じがしていたのだけれど、でもこのラストシーンは何だかじんとした。
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