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「びっくり箱−姉妹編−」
原作 向田邦子
脚本 中島淳彦
演出 福島三郎
出演 沢口靖子/永島敏行/佐藤重幸(TEAM NACS)
小宮孝泰/草村礼子/琵琶弓子/余 貴美子
観劇日 2006年4月15日 午後6時開演
劇場 紀伊國屋ホール S列15番
料金 6800円
上演時間 2時間10分
流石にS列となると、紀伊國屋ホールといえども舞台がかなり遠く感じる。今回のセットは、一軒家の庭と家だったので、余計にそう見えたようにも思う。
パンフレット1200円はちょっと迷ったけど購入せず。どちらかというと、向田邦子の原作を読んでみたいと思った。
ネタバレ有りの感想は以下に。
時代背景はいつの設定なのだろう。昭和40年代くらいだろうか。ちゃんと覚えていないのだけれど、そんな台詞があったようにも思う。母の存在を示す重要な小道具であるミシンは、足踏み式だ。
でも、職業安定所は既にあったらしいし、姉妹が「母のもの」だと言って着ている喪服は着物ではなくワンピースだし、ヒーローものがテレビで放映されていたらしい。
このお芝居は、父が早く亡くなり母子家庭で堅く堅く育てられた姉妹が、母の教えにも関わらず、ダメそう〜な男との結婚を決め、すでに妊娠しており、姉妹同士相手を「母に恥ずかしくないのか」と言いつつお互いを理解していく、ついでに父は実は堅い役所勤めだったわけではなく、妹が「スーツを着て役所に行っていた」と覚えていたのは「スーツを着て職安に通っていた」のが真相だったと判り、母を理解する、そういう話だ。
で、見ながら「このお芝居っていつの時代なんだろう」と変なことを考えてしまった。
36歳の姉と29歳の妹、姉が一人暮らしする家には45歳の男が転がり込み、東京で看護婦をしている妹のアパートには25歳の男が転がり込んでいる。しかも、2人とも結婚前に妊娠している。
今ならそう珍しくもない話なのだろうけど、恐らくはこのお芝居の設定は20年以上は前のことで、その時代だとするとこの姉妹に対する風当たりは相当強かったのではなかろうか。
でも、そういう「周りの風当たりの強さ」はあまり感じられない。その辺りが妙に私には座りが悪かった。
でも多分それは細かなことで、お隣のおばさんが亡くなったお通夜の日から、次の日のお葬式まで、多分24時間くらいの出来事をテンポ良くつないで行く、ウエルメイドな感じの楽しいお芝居だ。
沢口靖子は、こういうコメディエンヌ的な役がやっぱり一番似合うと思う。多分、ご本人の醸し出す生真面目な雰囲気がおかしみを誘うのだと思う。
一番おかしかったのは、沢口靖子演じる妹がお通夜のお酒で酔って寝てしまい、すると足踏み式ミシンがひとりでに動き出し、もわもわーっと白いものがわき出てきて、お仏壇から姉を演じる余貴美子がその瞬間だけ扮した母が現れ、いつも姉妹に言い聞かせていた「結婚相手の3条件」を唱えるシーンだ。
おかしすぎる。
永島敏行と佐藤重幸が演じる、姉妹の相手の男ども(という感じなのだ)のダメさ加減と優しさ加減が良かった。特にこの姉の相手が山っ気の強そうな、ちょっと嫌な感じの男なのだけれど、最後の最後、その「山」から手を引いてくれて、何だかほっとしてしまった。
そして、てっきりもっと「四人芝居」な感じになっているのかと思ったら、隣家の若夫婦と姉妹の母の友人のおばちゃんの三人がかなり重要な役どころを占めていて、存在感があってとてもバランスよくまとまっている感じがした。
とてもウエルメイドにコンパクトにまとまっていて、楽しかった。
できれば、もうちょっと前方の席で見たかったと思う。
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