映画「かもめ食堂」を見る
「かもめ食堂」
原作 群ようこ
脚本・監督 荻上直子
出演 小林聡美/片桐はいり/もたいまさこ/マルック・ベルトラ 他
パンフレットも買わなかったので、出演はオフィシャルサイトのcast&staffのページに載っていた人だけ書いてみた。
そろそろ上映が始まってから1ヶ月くらいたっているけれど、雨の土曜日、お昼の回は混雑しているのかガラガラなのか全く予測がつかないままぴあのリザーブシートを利用したのだけれど、これが正解。銀座テアトルシネマは立ち見なしの満席だった。
20分前開場で、整理番号順に入場させていたようだ。
ゆったり座って上映開始と思ったら「予告編を15分」と言われたときには思わず天井を仰いでしまった。
それにしても、映画の予告編というのはどうしてこう「面白そう」と思わせるようにできているのだろう。予告編だけ2時間500円くらいで見せてくれたら行ってしまうかも知れない、と思う。人気のある俳優さんをテーマに日替わりでやったら結構人が集まるのではないだろうか。
感想は以下に
ヘルシンキの街というか港が映り、小林聡美演じるサチエのモノローグから映画は始まる。
いきなり「フィンランドのかもめはでかい」と始まったときには???と思ったけれど、それはサチエという人を表すエピソードにつながっていた。
この最初のシーン以外、サチエの過去を思わせる台詞やシーンがほとんどないのが格好良いと思った。
毎日毎日、1ヶ月以上もお客が来ない「かもめ食堂」で、食器を磨き店を開ける。そもそも、フィンランドのヘルシンキで「食堂」を開こうと思うのだから、事情がないわけはないと思う。
本屋で知り合った片桐はいり演じるミドリにも聞かれると「日本人もフィンランド人も鮭が好きだから」と答え、店にふらりと現れたもたいまさこ演じるマサコに聞かれると「格好いい男の人がいるから」と答える。
絶対に事情がないわけはない。
ミドリにしても、目をつぶって地図を指さしたらそこがフィンランドだったからやってきたという。
マサコだって、エアギター選手権のテレビ放映を見たことがあり、それで来てみようと思ったという。
ミドリもマサコもいつ帰るかは決めていないと言い、「かもめ食堂」を手伝い始める。
事情がないわけがない。
お客が来ない食堂を維持しながら、サチエの生計はどうなっているんだろうと私が心配していると、でも彼女はプールに通い、食材を仕入れ、合気道の練習をし、本人の台詞通り「真面目に素朴で美味し料理を作っていればいつかお客は来るし、来てくれたお客は判ってくれる」と思っているようだ。
まるで自然体なのが不思議だった。
でも、いつの間にか3人で「かもめ食堂」を切り盛りするようになり、かもめ食堂初のお客であるアニメ好きのフィンランド人青年が通って来、毎日のように店をのぞき込んでいた3人組のご婦人がシナモンロールの匂いにつられてとうとうお客となり、かもめ食堂で作られるお料理も増えていく。
トンカツも、鶏の唐揚げも、鮭の塩焼きも、そしてもちろんおにぎりもとても美味しそうだ。
何となくゆったりと時間が流れているのは、トンミの台詞通り「フィンランドには森がある」からなんだろうか。
それとも「かもめ食堂」がそこにあるからなんだろうか。
そのうち、サチエの生計を心配している自分が多少アホらしく思えてきて、のんびりと眺める体勢に入ってしまった。
サチエがおにぎりをメインメニューに据えた理由も語られたし、そしたら、サチエがなぜヘルシンキで食堂を始めようと思ったのか、それはまあいいような気がしてきた。
最後、サチエの「いらっしゃい」という台詞で映画は終わる。
3人は、人は変わってしまうかもしれないけれど、でも今は3人だ。「かもめ食堂」も繁盛しているし、最初のお客であるトンミも通い続けている。
とりあえず、今はこのままで。
でも、いつ変化が起きてもうろたえないように柔らかい心で。
最後の「いらっしゃい」はそんな意味だと思えた。
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