「砦」を見る
「砦」劇団ダンダンブエノ
作 和久田理人/ダンダンブエノ
演出・出演 山西惇
出演 永島敏行/坂井真紀/宮地雅子
ぼくもとさきこ(ペンギンプルペイルパイルズ)
酒井敏也/近藤芳正
観劇日 2006年6月17日 午後7時開演
劇場 青山円形劇場 Bブロック35番
料金 5500円
上演時間 2時間15分
円形劇場の一方に舞台を作り、舞台部分の後ろにだけ黒い幕を張っている。アリーナ席のような客席と、それを円形の客席がスタンドのように取り囲んでいる。円形劇場をこういう風に使っているのを見たのは初めてかも知れない。
上演前、CDつきパンフレット(1000円と言っていたような気がする)を籠に入れて客席でも販売していた。
同じく上演前に、「意外と空席があるな」と思ってぼんやり眺めていたら、通路を挟んだ反対側から「場当たりもこの席で見た」という声がした。場当たり? と思って横を見たら、よく劇場で見かけるスーツの男性といのうえひでのり氏が並んで座っていた。
感想は以下に。
1970年代か1980年代に入っているのか、千葉県の房総半島、地元で始める「ザ サンフラワー祭」の演し物として演奏をしようという20歳前後の若者が「砦」という旅館に集まり、2泊3日の合宿練習を行う。その2泊3日の物語だ、多分。
合宿中「あと2ヶ月あるから大丈夫」という台詞が出てくるのだけれど、お芝居の最後は合宿を終えサンフラワー祭の出番に向かうところで、その時間は終わっている。
その辺の時間経過ははっきり判らない。
もっとも、時間経過はわざと複雑にしているような気もする。合宿の状況をリアルタイムで見せながら、照明とストップモーションで「その場面を振り返っているモノローグ」をしゃべらせたりしていた。
楽器もあまり触ったことはなく、でも音楽を聴くのは好きな若者(という言葉も気恥ずかしいけれど、そもそも、お芝居全体でその気恥ずかしさを志向している感じがする)が、脱線を繰り返しつつ、少しずつ楽器を決め、演奏曲目を決め、練習し、ついでに自分のことを語ってゆく。
全く毛色は違うのだけれど、出演者が楽器を練習して上手くなってゆく、そのことがお芝居の上で意味を持つ感じで、ずっと前に見た「サニー・コースト・セレナーデ」を思い出した。CDつきのパンフを販売したところも同じだ。
もっとも、「サニー・コースト・セレナーデ」は「遅れてきた子」が私にとってのメインテーマだったのだけれど、今回のお芝居は、宮地雅子が演じた「みやこ」と近藤芳正演じる「こんちゃん」の恋愛なんだか恋愛未満なんだか、みやこは「内定」と表現していたけれど、お互いに何となく判っているのだけれどその先に進めない感じがメインテーマだった。
この感じ、見たことあるぞ、という感じだ。
坂井真紀演じる「さき」がメンバー募集のチラシ1枚でギターを持って合宿にやってきたのは何故なのか、山西惇演じる「やまにん」が合宿中に突然行方不明になり突然戻ってきたのは何故なのか、ぼくもとさきこ演じる霊感少女は一体何を感じていたのか、割と放り出されたままの謎は多い。
そういえば、出演者の名前をもじった登場人物名になっているのは何故なのか、という謎もある。
ラジオのDJがときどき流れ(永島敏行がDJを演じていたのだけれど、最初のうちは「ながせまさん」が仲間に内緒でこっそりDJをしているという設定なのかと勘違いしていた)、恐らく「懐かしい」曲が流れていたのだろうと思う。でも、時代を限らず洋楽をほとんど聴かない私には、音楽から時代とか時代の雰囲気とかを感じ取れなかったのが残念だった。
お芝居で使われていた音楽を「懐かしい」と思える人が見たら、このお芝居はかなり違って見えるんじゃないかという気がした。
ザ サンフラワー祭にいざ出陣、というところで1970年代の時間は止まり、そのまま出演者が一人一人合宿所となった砦旅館を出て行き、円形劇場の壁際、ドアの前に一人ずつ陣取る。
そこから、彼ら一人一人の後日談が語られる。
その後日談が、邪魔にならず、蛇足という感じもせず、何だか自然でとてもよい感じだった。
そして、1曲演奏して幕、だった。
カーテンコールで「アンコールはありません。演奏できる曲はありません。」と言っていたのが可笑しかった。
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