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2006.07.15

「リチャード三世」を見る

「リチャード三世」子どものためのシェイクスピアカンパニー
作 ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 小田島雄志
脚本・演出・出演 山崎清介
出演 伊沢磨紀/福井貴一/佐藤誓/間宮啓行
    彩乃木崇之/戸谷昌弘/明樂哲典/大内めぐみ
    若松力
観劇日 2006年7月15日 午後2時開演
劇場 東京グローブ座 K列20番
料金 4800円
上演時間 2時間15分(15分間の休憩あり)

 午後1時半くらいに新大久保の駅に着いたら、突然の雷と雨。目の前の薬局で傘を買って劇場に向かったけれどびしょぬれになった。
 私はびしょぬれになっただけで済んだけれど、中央線と山手線が止まってしまったらしく、そのため開演は10〜15分遅れたと思う。終演したのは午後4時半くらいだった。

 開演15分前には恒例の「イエローヘルメッツ」の公演(?)があった。今日の歌は「恋のロケット」だった、と思う。

 パンフレット900円を購入した。子どものためのシェイクスピアカンパニーのパンフレットは、人物相関図なども載っているし、楽しく読めてシェイクスピアのお勉強もできる優れものだ。

*ココログ・メンテナンスは7月13日13:30に無事、終了した模様です。
 投稿画面にアクセスすらできなかった一時期と比べれば、かなり状況は改善されました。
 コメント・トラックバックも大丈夫になりました。

 リチャード三世というのは、できればそばにいて欲しくないし、お友達にはなりたくないタイプの人なのだけれど、お芝居の登場人物としては魅力的な人なんだろうか。
 リチャード三世は、市村正親が演じたバージョンでも見ているし、「天保十二年のシェイクスピア」の主役である佐渡の三代次(という字だったと思う)もリチャード三世のもじりだ。見そびれてしまったけれど、遊眠社でも「三代目りちゃあど」というお芝居を上演したことがあったと思う。
 そういうわけで、「こいつは極悪人」という先入観だけはたっぷりと持って見始めた。

 子どものためのシェイクスピアシリーズで、主役を山崎清介が演じたのは初めてではないだろうか。少なくとも、私が見た中では初めてで、ちょっと驚いた。
 また、シェイクスピア人形が、一人の登場人物としてではなく、今回は「リチャード三世の左手」という「役」を務めていたのも不思議な感じだった。
 リチャード三世が信頼して話しかけるのはこの左手だけ、という設定で、実は小心なリチャード三世をたきつけているのが左手であるシェイクスピア人形だ。

 「こいつは極悪人」と私が思っていたせいかもしれないけれど、このリチャードに次々と騙されるのを見て、段々腹が立ってくる。
 夫と夫の父親を殺された大内めぐみ演じるアンが、その直後にどうしてリチャードと結婚しようと思えたのか、どうしても理解できない。どう見ても、リチャードに誠実さは感じられないし、信頼するなんて言語道断である。

 戸谷昌弘演じるケーツビーだって、リチャードが兄のジョージを殺すために釈放の令状をわざと届けなかったことくらいすぐに察してよ、と思うし、自分の主人であった間宮啓行演じるヘースティングスをリチャードが陥れる過程を目の前で見ていて、それでもリチャードの部下で居続けようとするその気持ちが理解できない。

 そこが「人の弱みにつけこむ」というリチャードのやり方を如実に表している部分だと思うのだけれど、そこの説明がほとんどされていない(ように思う)ので、今ひとつ腑に落ちるという感じがしない。
 腑に落ちると言えば、最後に、リチャード三世を破り、イングランド国王につく伊沢磨紀演じるリッチモンドというのはどういう男なんだろう。ハムレットを見たときも思ったのだけれど、物語にほとんど登場していないよその国の人間がいきなり王位につくことに誰も疑問を持たないことが謎だ。
 それは、シェイクスピア作品がどうこうというよりも、この時代のヨーロッパの王室がそういうものだったんだろうという気もする。
 でも、腑に落ちない。

 とはいえ、何だかんだ言っても、幕開けのクラッピングで劇場の雰囲気を鷲掴みにし(後ろの列の女性三人は何故だかその期に及んでもひそひそとしゃべっていて非常に邪魔だったのだけれど)、チーンという音と姿を消すことで人の死を表し、一人の俳優さんが何役もこなしながら物語を進めて行く、その「いつもの感じ」が安心できるし嬉しい。
 戸谷昌弘演じるリチャードが殺した兄の子どもで王位継承者であった筈の王子が、幽霊になってリチャード三世の前に現れ、その亡霊を振り払うために奮った剣が、最後まで唯一と言っていい味方だったケーツビーを刺したところなど、思わず「上手いっ」と心の中で拍手してしまった。

 そして、「リチャードと左手」で、弱気なリチャードと強気のリチャード、冷血なリチャードと小心なリチャードなど、悪党一辺倒ではないリチャード三世を見せる。
 多分そのせいだと思うのだけれど、何だか不思議なリチャード三世を見た、という気持ちが強く残っている。

 来年は、やはり東京グローブ座で、演目は「夏の夜の夢」だそうだ。
 子どものためのシェイクスピアカンパニーでは、1年交代で有名な作品と無名の作品を上演するという方針があったと思うのだけれど、ということは「リチャード三世」は無名な作品という区分けになるんだろうか?
 でも、何にせよ「夏の夜の夢」は、これまで上演されたものとかなり違ったつくりのお芝居だと思う。子どものためのシェイクスピアカンパニーでどんな「夏の夜の夢」になるのか、とても楽しみだ。

 さて、購入したパンフレットをゆっくりと読もう。

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コメント

mikaさま、コメントありがとうございます。

 mikaさんは伊東四朗一座をご覧になったんですね。羨ましい。私はチケット争奪戦に見事敗れました。

 いつからお芝居を見ているのかあまりちゃんと覚えていないのですが、今、子どもためのシェイクスピアカンパニーのサイトに行ってみたところ、1998年のヘンリー4世は見た記憶がありました。
 リア王を見た記憶もあるんですが、それが1997年だったか2000年だったか、両方見たのか、思い出せません。
 1995年のロミオとジュリエットと、1996年の十二夜は見た記憶がないように思います。
 何だか曖昧なことばっかりでごめんなさい。
 ここ数年は週1本のペースでお芝居を見ています。

 またどうぞお芝居のお話をしにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2006.07.22 00:01

いえいえ、なんだか私こそ偉そうに(^^;;)すみません。
私はもうここのところ山崎さんのお芝居ばかりで(しかもほとんど子供のための・・・だけ)、非常にせま~~~~い観劇となっております(^^;;)
ここ2,3年は伊東四朗一座とか(今年は熱海五郎でしたが)も行っていますが。。
あ、あとは毎年シティボーイズミックスは欠かしてません♪
姫林檎さんはいつごろからお芝居観られているのですか?

投稿: mika | 2006.07.20 07:07

mikaさま、コメントありがとうございます&たびたび嘘ついてごめんなさい・・・。

 1999年の「子どものためのシェイクスピア」は「オセロー」だったんですね。そちらも見ていました・・・。
 当時のメモを見直してみたら、「真夏の夜の夢」もグローブ座カンパニーだと書いてありました。メモした時点で間違っている・・・。しかも、山崎さんの舞台を子どものためのシェイクスピアカンパニー以外でも拝見しているということではないですか・・・。

 ご指摘ありがとうございます。
 これからもお見捨てにならないでいただけると嬉しいです。

投稿: 姫林檎 | 2006.07.18 22:54

お返事有難うございます(^^)
’99はオセローですね。
真夏の夜の夢は再演で加納さんと演じたものですね。ペーターストルマーレだったか?外国の演出家の演出だったと思います。
歌舞伎調のメイクと衣装がとても印象的だったのを覚えています。
あれもまた観たいなぁ。

投稿: mika | 2006.07.18 21:47

mikaさま、コメントありがとうございます&いらっしゃいませ、です。

 同じ日の同じ回をご覧になっていたんですね。雷と雨は大丈夫でしたか?
 実は私は「子どものためのシェイクスピアカンパニー」以外で山崎さんの舞台を拝見したことがありません。なので、私が思い描く山崎さんは常にシェイクスピア人形と一緒です。

 別件で調べ物があって過去の記録を見ていたら、子どものためのシェイクスピアカンパニーで以前に「夏の夜の夢」を上演していたことが確認できました。忘れていたなんて情けない。1999年のことです。
 そのときは、山崎さんと花組芝居の加納幸和さんとが、人間の世界の国王夫妻と妖精の世界の王夫妻とを男女入れ替えて一人二役で演じていらっしゃいました。来年のお芝居がどんな風になるのか、楽しみですね。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2006.07.17 22:16

お邪魔します。
なぜか、間宮さんのプロフィール検索をしてたどり着きました(^^;)
私も15日の昼の部に行ってました。
「今回は出ずっぱりですね」と山崎さんに言ったところ、「タイトルロールやるとそれだけでいっぱいです」と謙遜されてました。
山崎さんの芝居のうまさに惹かれて観始めたシリーズだけに、久しぶりに山崎さんの芝居に引き込まれて見ていました。
来年はどんな演出になりますやら。楽しみですねぇ(^^)
おじゃましました♪

投稿: mika | 2006.07.17 21:15

どえらえもん様、コメントありがとうございます&初めまして、です。

 ココログの検索で訪れていただいたとのこと、ありがとうございます。
 勉強になるほどの内容ではなく、申し訳ないです。
 どえらえもんさんのブログも拝見させていただきました。不動産関係のお仕事をされているんですね(全くの門外漢なので、もし間違っていたらごめんなさい)。
 もしよろしければ、また遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2006.07.16 22:15

初めまして

どえらえもん、といいます。

ココログの検索でこちらにたどりつきました。

しかし世の中にはいろんな世界があるのに驚きです。勉強になります~

毎日、でたらめな妖怪人間を相手にしている自分とは大違いです。

どうもお邪魔しました (^^)

投稿: どえらえもん | 2006.07.16 00:39

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