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2006.07.08

「アンデルセン・プロジェクト」を見る

「アンデルセン・プロジェクト」
作・演出 ロベール・ルパージュ
出演 白井晃
観劇日 2006年7月8日 午後2時開演(千秋楽)
劇場 世田谷パブリックシアター 2階B列24番
料金 5800円
上演時間 2時間15分

 昨年の2005年がアンデルセン生誕200年だったそうで、それを記念して作られたお芝居なのだそうだ。
 「えんげきのページ」でロベール・ルパージュ版の評判がとても良くて、楽しみにしていた。でも同時に「字幕と演技と両方に集中するのは難しい」という声もあって、語学力に難しかない私は、ルパージュ本人が演じる英語版は厳しいだろうと最初から敬遠して、白井版のみ観劇した。
 ロビーでパンフレット(800円)などが販売されていた。
 千秋楽だからか、客席やロビーにはいかにも「業界関係者」といった感じの方が多数いらっしゃった。カーテンコールでお花を渡している女性がいた。

 感想は以下に。

 開演前、舞台上にはいかにもオペラ劇場っぽい劇場の開演前の様子(要するに緞帳が下がっていて、客席があって、全体に赤っぽい)がスクリーンに映し出されている。
 オーケストラがチューニングのために音出ししている音が響いている。もちろん世田谷パブリックシアターにオーケストラが入る筈もなく、そこから既に演出だったようだ。
 何だか洒落ていると思った。

 「アンデルセン・プロジェクト」の幕が開けると、スクリーン上のオペラ・ハウスも幕を開け、そこに白井晃がすくっと後ろ向きに立っている。顔はスクリーンに劇場と二重映しに映し出される。マイクの声とこの映し出された顔の口の動きが合っていなかったから、声はその場でしゃべっているけれども、映像はその場で撮影しているわけではなかったんだろう。

 イギリス、フランス、アメリカ、カナダ、デンマーク等が協力して子供のためのオペラを上演する、その上演までの物語だ。
 そこで、上演する演目に、アンデルセンの短編(タイトルが思い出せない・・・。パリ郊外のマロニエの木に閉じこめられている木の精のドゥーディはパリに憧れて、鳥たちからいつも話を聞いていた。ある日、マロニエの木がパリに移植され、人間になってパリの街を歩きたいと強く望んだドゥーディは木から抜け出て若い女性の姿になり、パリを歩き、万国博を楽しみ、でもその一瞬が終わるとこの世から消えてしまう、というような話だったと思う)が選ばれる。

 白井晃が、このオペラを上演するオペラ・ハウスのマネージャ、カナダから来たこのオペラを作詞する男、この男が寄宿するアパートの1階で働くモロッコ人青年を次々と演じ分け、時々はアンデルセン自身も演じ、話を進めてゆく。
 映像が流れ、白井晃の声でアンデルセンの童話が朗読され、その間にご本人は衣装やかつらを変えて別の人物になって舞台に戻ってくる。一人芝居で2時間超は相当辛いんじゃないかと思っていたのだけれど、意外と舞台上にいない時間があって、でもそれで空白などは感じられなかったように思う。
 舞台上から消えていた間は、もの凄い勢いで衣装替えが行われていたんだろうと思う。

 一人芝居で、アンデルセンが恋した女性などはマネキンのような人形(顔はない)がくるくると回転し、滑り、表現されていたのだけれど、マロニエの木から飛び出たドゥーディだけは常に後ろ姿しか見せなかったけれど女優さんが演じていた。
 生身の人間は人形が演じ、木の精は人間が演じるというのも面白いと思った。

 アンデルセンの書いた、あまり有名でない短編をオペラかするに当たって、特にカナダから来た作詞家は、その短編だけではなく、アンデルセンについても調べて感じてそれをオペラに反映させようとする。
 アンデルセン自身が出てくるシーンは時間にしてほんの僅かだし、アンデルセンが書いた短編をオペラにするという話で実はそこにアンデルセンという作家との関わりはほとんどなくても物語として成立するように思うのだけれど、でも、短編を語ることでアンデルセンを語り、白井晃演じる3人の登場人物(うち、モロッコ人の青年には台詞がなかったようにも思う)が語ることや経験することは、そのままアンデルセン自身が語ったことだったり経験したことだったり、その感情だったりするんじゃないかという気持ちになってくる。

 木や森を映像で見せるシーンや、奥行きのある場所を平面のように見せるライティングや、滑るようにセットを動かして組み合わせる舞台転換や、映像で次々にシーンを切り替えていくところや、木の周りをゆっくりと木を抱え込むようにして周りながら早変わりをしてみせる演出や、そういう「ちょっと変わった表現」も印象に残っている。
 でも、ストーリーやそういった演出は何だか遠くにある感じで、アンデルセンという人の性狷介さというか寂しさというか、孤独感というか、そういったイメージが核のように見る側に(少なくとも私に)残るお芝居だった。

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