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2006.08.04

「雨と夢のあとに」を見る

「雨と夢のあとに」演劇集団キャラメルボックス
原作 柳美里
脚本・演出 成井豊+真柴あずき
出演 福田麻由子/岡田達也/岡内美喜子/岡田さつき
    久松信美/楠見薫/畑中智行/三浦剛
    青山千洋/大木初枝/篠田剛/小多田直樹
    小林千恵
観劇日 2006年8月4日 午後7時開演
劇場 サンシャイン劇場 22列12番
料金 6000円
上演時間 2時間10分

 主演する客演の福田麻由子は本日をもって12歳になった正真正銘の小学生だ。従って、ナントカ法により、午後9時には仕事場(この場合は、劇場)を出ている必要がある、らしい。
 いつもは客入れに時間がかかったりして上演開始が遅れることも多いのだけれど、この公演に限っては、少なくとも夜公演の場合、午後7時ジャストに開演する。遅れて来て暗い中を入場する人の姿が目立った。

 終演後、えらく巻いた「ハッピーバースディ」を劇場で大合唱し、「消防法により火を灯せません。」というロウソクを立てたバースディケーキが舞台上に登場し、福田嬢の誕生日をお祝いした。
 ご本人はもの凄く戸惑っているような、そこだけ小学生のような感じで、つっかえつっかえコメントしていた。「ありがとうございましたって言っておけばいいのよ」と教えてあげたかった。
 ちなみに彼女は「千秋楽までがんばります」と締めていた。

 小学生抜きのカーテンコールがさらに2回、岡田達也が「段取り変えてごめんなさい」とスタッフさんに素で謝り、楠見薫と久松信美がやっと紹介され、二人一組でワンシーンを演じる千秋楽のようなカーテンコールで終わった。

 この日はほぼ満席だったけれど、終演後、ロビーで明日以降のチケットを販売していた。キャラメルボックスの芝居では初めて見た光景のような気がする。
 私は、一昨日に突然思い立ち、演劇集団キャラメルボックスの公式Webサイトで予約し、劇場で現金でチケットを購入した。

 ネタバレありの感想は以下に。

 原作は読んでいるけれど、脚本・演出のコンビが台本を書いたというテレビドラマは見ていない。
 チラシや配られるリーフレットの文章を読むと、どうもこの舞台のストーリーは原作を追っているのではなく、テレビドラマを凝縮したもののようだ。
 原作を読んだときは「この本をどうやって2時間の舞台にするんだろう? 大体、登場人物は3人で済むじゃないか」と思っていたのだけれど、違和感なく話が膨らんでいた。

 多分、原作では主人公の小学生「雨」の視点で、「雨」の気持ちで書かれていたから、ほぼその視線は父親だけに注がれている。だから、登場人物も少ないし、「想い」も娘から父親に向けたものがそのほとんどを占める。
 原作の「雨」が父親以外に目を向けるのは、隣家の女性だけだ。

 舞台では、岡田達也演じる「朝晴(父親)」の視線と事情と気持ちの側から描かれる。
 その結果なのか、「自分が幽霊であることを雨にばれないようにするためにはどうすればいいか」「自分が見える人と見えない人がいるのは何故か」「雨の生活費はどうやって稼げばいいのか」など、やたらと現実的だ。

 しかも、そこに、お世話になったジャズクラブの店主一家(久松信美演じる父と畑中智行演じる息子には朝晴が見えるのに、楠見薫演じる母には見えない。その理由は最後に明かされる)、岡田さつき演じる別れた妻、19歳で飛び出したきり帰っていない長野に住む篠田剛と青山千洋演じる両親とのエピソードが詰め込みすぎなんじゃないかというくらい絡んでくる。
 これだけでもエピソード満載なのに、別れた妻は雨の母親ではあるけれど、実の父親は朝晴ではなく、別れた妻の現在の夫である、という設定まで盛り込まれている。
 盛り込みすぎだ。

 実は散々泣かされたのだけれど、それでも、特に前半の展開が早いと感じた。
 始まって数分で、岡内美喜子演じる隣家の女性から「あなたは幽霊です」と告げられてしまう。それは、「この違和感は何でしょう。実は幽霊でした」というのは古いかも知れないし、そもそもそれを狙った筋書きではないと思うけれど、それにしても早すぎるように感じた。
 もうちょっと引っ張ってくれてもいいじゃないか。

 そういう風に「ここであと少し余韻を引きずればもっと切ないのに」とか「もうちょっと出し惜しみした方がじわっとくるような気がする」という感じが、特に前半は強い。
 それでも引っ張られるのは、題材が父と娘だからだろう、という気がした。これが、主人公の二人が恋人同士だったら、全く違う物語になるように思う。

 違う物語といえば、雨の母親の現在の結婚相手(劇中では「矢島さん」と呼ばれている)を、名前だけで登場させないことに何か意味があったんだろうか? 特に意味や必然性がなかったのなら、逆にちらっとでも登場してくれた方が、「こいつが雨に仇なすのかも知れない」などと余計な心配をしなくて済んだのに、と思う。
 それに、そんなところで引っ張らなくても十分に引きずられる世界なのだ。

 主演の福田麻由子は、声も通るしナチュラルで気負いはないように感じられる。でも、時にナチュラルすぎるように見えるのは気のせいだろうか。
 久々に舞台で拝見した久松信美と楠見薫の夫婦が、何だかよい感じだった。特に楠見薫は明らかに「キャラメルボックス色」とは違った色の女優さんなのだけれど、上手く「ぽん」とはまっているように見える。
 このお二人の息子役の畑中智行は一体、何歳の役だったのだろう? 「10年前は8歳だったのに」という台詞があったから18歳に間違いはないのだけれど、それが語られるまでは、つまらないと思いつつも小学生にあしらわれているこの男の子はいくつの設定? と考えてしまった。

 いつもそうだけれど、キャラメルボックスのお芝居は照明が綺麗だと思う。
 今回も、最後の観覧車のシーンで、夜景を見下ろす観覧車に朝晴と雨の二人だけ、という感じがとても好きだった。

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