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2006.09.17

「魔界転生」を見る

「魔界転生」
原作 山田風太郎
脚本・演出 G2
出演 中村橋之助/成宮寛貴/藤谷美紀/馬渕英俚可
    遠藤久美子/六平直政/山本亨/千葉哲也
    升毅/西岡徳馬 他
観劇日 2006年9月17日 午後4時30分開演
劇場 新橋演舞場 1階2列12番
料金 12600円
上演時間 3時間30分(10分間、30分間の休憩あり)
 
 ロビーでパンフレット(1500円)が販売されていた。新橋演舞場の困るところは、2回目の休憩時間で売店その他が全て閉店してしまうことだ。最後までお芝居を見て、それでパンフレットを買うかどうか決めよう、ということができない。そういうわけで、パンフレットの購入は断念した。

 イヤホンガイドがついていたのも意外だった。外国語のお芝居や歌舞伎以外でイヤホンガイドがついたお芝居は初めて見たような気がする。

 感想は以下に。

 えんぺの一行レビューを読んでいるとどちらかというと不評の記事が多くて、半ば覚悟して出かけた。
 チケットを押さえられた頃、原作を買って読んだのだけれど、苦手なタイプのお話だったせいもある。伝奇時代物という感じで、原作はかなりおどろおどろしさが強調されていたように思う。苦手だったので読み返していないため、ストーリー等はかなりうろ覚えの状態で今日を迎えた。

 原作はかなりの長編で、そのまま舞台にしたらとても3時間30分(休憩時間を除けば、実質2時間50分)ではとても収まりきれない。
 その分、中村橋之助演じる柳生十兵衛が率いる柳生衆は7人に減らされているし、柳生十兵衛に従う娘たちも藤谷美紀演じるお縫1人に減っている。成宮寛貴演じる天草四郎が甦らせた魔性の者どもも、原作では7人だったように思うのだけれど、今日の舞台にいたのは5人だ。
 登場人物を絞っただけでなく、話の展開もかなり端折っているので、3幕開始時には、陰山泰と関殺された柳生衆2人が幽霊となって現れ、「これまでのおさらい」と「今の展開」を解説する形で、さらに話を先に進めている。

 人数はともかくとして、原作では十兵衛の父と祖父がともに甦っていたのだけれど、舞台では父のみになっていたせいで、ラスト近くはかなり原作から離れていたように感じた。もっとも、私の原作についての記憶はかなりあやふやなものだ。
 父と子の葛藤みたいなものが原作では大きなテーマになっていたように思うのだけれど、舞台ではそれはちょっと後退している。印象が違うのは、多分それが一番大きな理由だと思う。
 それでは、舞台「魔界転生」の主要なテーマは何かと考えても、「これだ!」というものが私には感情移入できなかった。緩急がある「次はどうなる」ということが気になるお芝居だったのに印象が薄いのはそのせいかもしれない。

 反面、心配していた「おどろおどろしさ」はかなり抑えられているように感じた。
 そういう意味ではかなり安心して見ることができた。

 3人の女優陣はそれぞれはまり役という感じだ。お銭を演じた遠藤久美子を舞台で見たのは、初演の「ダブリンの鐘つきカビ人間」が初めてで最後だったと思うのだけれど、えらく別人のようになっていて、最初は遠藤久美子だとは気がつかなかった。
 ただ、ああいう遊女っぽいお化粧は、顔の区別がつきにくくなるとは思う。あの格好とお化粧だと顔の表情まで似てくる気がする。

 出てきたときには誰だか判らなかったもうお一人が、由比正雪を演じた笠原浩夫だ。由比正雪が舞台に現れて、身長があって押し出しもいい、しかもやけに声が格好良くてよく通るな、だけど誰だ? と考えたのだけれどなかなか判らなかった。
 確か、ラックシステムかリリパットアーミーIIかどちらかのお芝居で一度だけ舞台を拝見したことがある筈なのだけれど、由比正雪独特の髪型のせいもあってすっかり騙されてしまった。

 新橋演舞場の公式サイトのキャスト・スタッフのページにも載っていないのだけれど、柳生衆の一人で7歳の関根弥太郎(確かこの字で良かったと思う)を演じた男の子が可愛かった。元々、原作でもかなり重要な役どころだし、それがそのまま舞台上でも引き継がれている。健気だし、すばしこいし、「絶対に将来大物になる」感がとてもよく出ていたと思う。

 何だかんだ言っても、普段は飄々としていてもいざ事あらば格好良く変身するでもあくまで人間くさい柳生十兵衛を演じた中村橋之助も、何だかなよなよとしていて悪女っぽさが漂う天草四郎を演じた成宮寛貴も、役に合っていて、舞台も「さあ、次はどうなる」という感じで引っ張られてあっという間に終わってしまった。
 殺陣のシーンでは音響が舞台袖の拍子木で出されていたり、時々小技が使われていて、大きいところと小さいところとそれぞれに楽しみのある舞台だったと思う。

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