「獏のゆりかご」を見る
「獏のゆりかご」シス・カンパニー
作・演出 青木豪
出演 杉田かおる/高橋克実/マギー/段田安則
小松和重/池谷のぶえ/明星真由美/安田顕
観劇日 2006年9月23日 午後2時開演
劇場 紀伊國屋ホール B列11番
料金 6800円
上演時間 1時間40分
何だか、とてもいいお芝居だった。
パンフレット(500円)を購入しなかったのが、今になって悔やまれる。
感想は以下に。
舞台は、どこかの市の動物園だ。動物もどんどん減り、(多分)お客さんも減り、施設の改築等々もままならず、閉園やリストラがささやかれている。
その動物園で唯一のスターともいえる獏の誕生日を祝おうというイベントを企画し、飼育員達が練習をしている。そんなシーンからお芝居がスタートする。
職場の状況としてはかなり暗いのだけれど、高橋克美演じる副園長を始め、杉田かおる演じる岡田、マギー演じる小森、小松和重演じる宮村、明星真由美演じるアルバイトの那須と、個性豊かなというか個性溢れる飼育員たちとの関係が良好なことに救われる感じがする。お芝居の設定で、職場もので、これだけの人数が集まって、それで人間関係が良好だというのはかなり珍しいような気がする。
独身の副園長とバツイチの岡田(お芝居の最初の方に、わざわざそう宣言する2人に小森が「自虐ネタはやめましょうよ」と突っ込むシーンがあって、そういう笑いの取り方をするか、と少し引いたけれど、でもちゃんとお芝居の内容とリンクしていて、最後には全く気にならなくなっていた)が結婚を前提に付き合っていたり、小森と那須は2ヶ月前から付き合っていたり、そこそこ「内緒」はあるのだけれど、その内緒がどちらかというと明るめの内容なのもほっとする。
最初にお芝居を動かすのは、動物園にしょっちゅうやってきて不審な行動をとる安田顕演じる江藤と、たまにやってきてはクレームをしつこくつけまくる池谷のぶえ演じる立川の2人だ。
立川がハムスター(モルモットだったかな?)を動物園から逃がしてしまい、それを目撃した江藤が飼育員達に通報し、探しに行く。
そこに、岡田の前夫である段田安則演じる越野がやってくる。
子どもの動物虐待だったり、人と上手くコミュニケーションが取れなかったり、母子家庭だったり、「帰って来ない夫」がいたり、結婚だったり、再婚だったり、家を継いだり、獏の死だったり、そこで語られるテーマは重い。
だけど、私の目には、とにかく「上手く行っている職場」の日常の風景が何よりも印象に残った。何か問題があったときに、それぞれが真っ先に動く。上手く仕事分担する。仕事を振る方も振られる方も納得しているし、そこに不平不満は出てこない。
もちろん、そういう「物語」ではないから描かれないだけかもしれないのだけれど、自然な協力体制と、お互いを信頼している感じが気持ち良かった。このお芝居を見て「ああ、いいお芝居を見た」と思った理由の一つは、この雰囲気だったと思う。
結局、岡田は副園長と結婚しようとしたのは息子から逃げようとしていた自分の気持ちの弱さのせいであったという結論に達し、再婚もしないし復縁もしないという選択をする。
自分はこの職場で20年間働いて、息子を育てて来たのだから、と言う。
岡田を演じている杉田かおるがとても自然だった。「キッチン」で見たときよりも、獏は父親も母親も子どもも子育ての一定期間母子が一緒に行動する場合を除き、ずっと一人で森の中で生きているのだと説明する姿はとても格好良かった。
格好良かったといえば、宮村を演じた小松和重が、どこがどうと説明できないのだけれど何だか格好良かった。
彼女が担当していた獏は死んでしまうのだけれど、遺された雌の獏が妊娠していることが判り、宮村が立川から取り上げたこうのとりの羽が風に吹かれて空に舞う。
その「明日がある」という感じの終わり方も好きだった。
| 固定リンク
「*芝居」カテゴリの記事
- 「りぼん」のチケットを購入する(2024.12.09)
- 「こんばんは、父さん」を見る(2024.12.08)
- 「フロイス -その死、書き残さず-」の抽選予約に申し込む(2024.12.07)
- 「太鼓たたいて笛ふいて」 を見る(2024.11.24)
「*感想」カテゴリの記事
- 「こんばんは、父さん」を見る(2024.12.08)
- 「太鼓たたいて笛ふいて」 を見る(2024.11.24)
- 「つきかげ」を見る(2024.11.10)
- 「片付けたい女たち」を見る(2024.10.20)
コメント