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「ジェイルブレイカーズ」
作・演出 G2
音楽 松岡昌宏
出演 松岡昌宏/須藤理彩/河原雅彦/篠原ともえ
コング桑田/三上市朗/久ヶ沢徹/植本潤
川原正嗣/前田悟/久保酎吉/大高洋夫
観劇日 2006年10月21日 午後6時開演
劇場 東京グローブ座 Xブロック4列11番
料金 8800円
上演時間 2時間55分(15分間の休憩あり)
グローブ座でXブロックというのはどこのことだろう? と思っていたのだけれど、舞台がせり出していて、その両脇にも客席を配置していた。下手側がXブロックで上手側がYブロックだ。奥から順に番号を振っていて、11番というのが一番手前だったので、私はそれほど「真横から」という感じでもなく見ることができた。番号が若い席だと、後ろ姿の演技を見ることも多くなってしまうかも知れない。
ロビーではパンフレットが2000円で販売されていた。
客席は見事に女性ばかりだった。ここまで女性率が高い客席は初めてだったかも知れない。
ジャニーズの誰かが見に来ていたらしく、最後列のドアのすぐ横に座っていたのだけれど、客席から帰るときには手を振り、それに応えるお客さんも多かった。舞台上はカーテンコール中だったのに、彼女たちは背中にも目がついているんじゃなかろうか。
ネタバレありの感想は以下に。
ここのところ色々あって、劇場に向かう電車で乗り過ごし、開演時間ぎりぎりに到着してしまったくらいだったのだけれど、舞台を見ている間はそんなことは忘れてお芝居を楽しむことができた。慌ただしくても来て良かったと思えた。
このお芝居は、お芝居なのかミュージカルなのか、チラシを見てもよく判らなかったのだけれど、見た感想としては「音楽劇」という雰囲気だった。お芝居の中にロック(と連呼されていたからロックなんだろう)音楽が演奏される。概ね、その歌は「登場人物の心情を伝える」シーンよりも、「ロックバンドが練習中」とか「ロックバンドのために作曲中」といったシーンで歌われるので、いわゆるミュージカルという印象ではない。
河原雅彦演じるキョウスケが、大高洋夫演じる警部補に殺されてしまう。その最期に松岡昌宏演じるギンペイに「自分の宅配ボックスを見ろ」と遺言するけれど、ギンペイは逮捕され有罪になって投獄されてしまう。
ギンペイはキョウスケとの約束を守るために、投獄された小樽刑務所から脱獄しようとし、その手段として鶴見刑務所で行われる刑務所対抗のロックフェスティバルに出場しようとする。
大筋を捕まえるとそういうストーリーなのだけれど、もちろん伏線は縦横無尽に張り巡らされている。「キョウスケは何故殺されてしまったのか」「ギンペイは無事に脱獄できるのか」という興味だけでなく、その数々の伏線の行方が気になって、つい集中して見てしまうから、時間があっという間に過ぎてゆく。
キョウスケの婚約者だった須藤理彩演じるサヤカがギンペイの元恋人だったり、幽霊になって出てくるキョウスケは何故か常に女装していたり、しかもサヤカのことを全く忘れていたり、ギンペイの入った刑務所で「調達屋」をしている久保酎吉演じる「ジジイ」が実はギンペイの父親だったり、その「ジジイ」は病気で余命幾ばくもなかったり、バンドメンバーに入ったキーボードの植本潤演じるウメさんは実は警部補の手先だったり、成り行きでギター奏者の振りをした三上市朗演じるサカモトは実は5年前まで小樽刑務所にいてロックバンドにも入っていたギターの名手だったり、こうやって書き出すとしっちゃかめっちゃかなんだけれど、お芝居を見ているときはすんなり納得できる。
こういう「謎が謎を呼ぶ」という感じは大好きだ。
オリジナルの曲も何曲か演奏されるのだけれど、何故だか一番じんときたのは、ボーカルを務めていた篠原ともえ演じるアンちゃんが刑期を終えて出所し、その代役を務めたサヤカが歌う「天城越え(ロックバージョン)」だったのが我ながら不思議だ。
残念ながら今回の音楽で「鳥肌がたつような」という感じがしたことはなかったのだけれど、何故だかこの「天城越えを聴いたときには、泣きたくなった。
「ジジイ」の作戦で裏の裏をかき、業務命令で出場を止められた久ヶ沢徹演じる刑務官のオニザワが有給休暇を取得してキョウスケの家の宅配ボックスから問題の「ブツ」を回収してきたのが、ロックフェスティバルの当日、演奏の直前だ。
それが、現職の法務大臣の女装写真だというのが・・・。
途中から「ここまで引っ張っておいて、つまらないものだったら許さん」と思っていたので、意外な「ブツ」に笑ってしまった。どうしてキョウスケがそんなものを入手していたんだという謎は残るけれど(どこかで説明されていたのを聞き逃していた可能性もあるし)、警部補が動いていた理由は説明されたのでよしとしよう。
このロックフェスティバルの出演シーンの最後に女装写真のコピーをばらまいて(刑務所内でばらまいてそれが世間的にどういう意味があるか微妙なところだと思うけれど)、警部補がウメさんに指示する声を会場に流すことで犯罪も暴露され、「ジジイ」はその日の朝亡くなり、でも霊となってバンドの晴れ姿を見に来場し、この日が四十九日だったキョウスケは成仏してゆく。
大団円とは言えない結末だけれど、でも、この日に全ての伏線が集められほぐされていくのは、カタルシスだ。
ここまで悪役に徹した大高さんを見たのは初めてのような気がする。お芝居が進むにつれて目の下の隈もどんどん濃くなっていって、本当に嫌な奴で、でも久々に舞台姿を拝見できて嬉しかった。
お芝居の最後、「キョウスケとサヤカに捧げる」と言ってギンペイが歌うシーンで、ボーカルの位置に出てきたギンペイの代わりにドラムを叩いていたのが「ジジイ」だったのも、何だか意味ありげで上手い演出だと思う。それをことさらに見せようとせず、さりげなく代わっているのも格好良い。
刑務所長を演じたのがコング桑田で、「音楽劇で、これだけロック論を語らせておいて、歌わせないなんてもったいなさ過ぎる!」と思っていたのだけれど、ラストシーンでその歌声を聴けたので、こちらも満足だ。
松岡昌宏は舞台狭しと動き回っていた。上背があるせいもあると思うけれど、本当に舞台が狭く、本人が大きく見えた。もっと大きな舞台でも見てみたいと思った。
とても楽しかった。
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コメント
kaoruさま、コメントありがとうございます
突然急ぎの仕事が入ったりして、お芝居を見に行けなくなってしまうことってありますよね。残念でしたね・・・。私もここのところ何本かチケットを持っているのに見に行くことができなかったお芝居等があったので、お気持ち、よく判ります。
拙い感想で申し訳ないですが、ほんの少しでもkaoruさんに雰囲気が伝わっていたら嬉しいです。
大高さんの登場シーンは、ちょっと「ピルグリム」みたいな感じの衣装(マントはなかったですが)でした。
投稿: 姫林檎 | 2006.10.24 23:40
姫林檎さん,こんにちは。
久し振りの大高さんをなんとしてでも観たかったのですが
何とか手に入れたチケットだったのに
仕事が忙しく残業になってしまい,結局,観に行くことが
できませんでした…。涙。
本当に,無念でなりません…。
でも,姫林檎さんの感想から今回のお芝居の雰囲気が
よくわかりました。悪役大高さんを拝見できず残念でしたが
次回の大高さんのお芝居は必ず観に行こうと思います。
投稿: kaoru | 2006.10.24 12:27