「ペテン師と詐欺師」を見る
ブロードウェイ・ミュージカル「ペテン師と詐欺師」
脚本 ジェフリー・レイン
音楽・作詞 デイヴィッド・ヤズベク
演出 宮田慶子
振付 前田清実
出演 鹿賀丈史/市村正親/奥菜恵/愛華みれ
高田聖子/鶴見辰吾/乾あきお/ひのあらた
野沢聡/小暮清貴/萬谷法英/蝦名孝一
東山竜彦/清野秀美/原慎一郎/ももさわゆうこ
秋園美緒/柏木ナオミ/一倉千夏/浅野実奈子/秋山千夏
観劇日 2006年10月28日 午後6時30分開演
劇場 天王洲 銀河劇場 1階H列6番
料金 12600円
上演時間 2時間50分(15分間の休憩あり)
ホリプロが劇場経営に乗り出した、そのこけら落とし公演である。元のアートスフィアを「天王洲 銀河劇場」と改称した。アートスフィアに行ったのもかなり昔のことなので記憶は定かじゃないけれど、内装等々は特に変わっていなかったように思う。
内装云々はともかくとして、1階客席の一番端の階段(多分、客席の列で言うとG列とかI列の辺りじゃないかと思う)は危ない。客席のカーブに沿って階段も幅が変わっているのだけれど、それが極端なのだ。階段があるものと思ってそれまでの歩幅で足を踏み出すと、次の段まで一気に降りてしまい、彩福コケかけた。実際に転んでいる方もいた。あそこだけでも何とかならないだろうか。
ロビーではパンフレット(1500円)や、ホリプロ主催と思われる公演チケットが販売されていた。「1階席限定」などと書いてあったから、かなり良い席を確保できるのではないだろうか。
さらに、2008年に「ペテン師と詐欺師」の再演が決定されたというチラシも置かれていた。「早くも再演決定」と書かれていたけれど、本当に早い。一体誰がどうやって決めるのだろう。
思いっきりネタバレありの感想は以下に。
2005年3月に上演された「デモクラシー」で鹿賀丈史と市村正親が26年振りで共演したわけだけれど、「デモクラシー」はストレートプレイだった。ミュージカルでの共演はだから、今回が27年振りということになるのだろうと思う。
もちろん、27年前の公演は見ていない。
ほとんど当て書きなんじゃないかと思うような配役で、鹿賀丈史演じるジェイムソンという詐欺師は、一見して紳士風の外見を最大限に活かし、どこぞの王国のプリンスを名乗り「国の危機を救うため」とお金持ちの女性達からお金を巻き上げている。市村正親演じるフレディは、「おばあちゃんが病気で」と善良で貧しい青年になりすまし、やっぱりお金持ちの女性達から小金を巻き上げている。何だか調子の良い小悪党という感じである。
その2人が高級リゾート地に向かう電車で出会い、ジェイムソンは、フレディこそが新聞でも話題になっている若手の詐欺師ジャッカルだと確信し、弟子入りを許す。
彼ら2人に騙されるのが、奥菜恵・愛華みれ・高田聖子が演じる3人の女性達だ。
愛華みれ演じる女性をあっさり騙したジェイムソンだけれど、彼女は騙されすぎて「薄幸のプリンスを助ける自分」に酔い、いつまでもリヴィエラを離れようとしない。その、「勘違いしているけど善良でちょっと強引な女性」がもの凄くはまっていた。
高田聖子演じる女性は、何だか思い込みの激しいタイプで「明日、オクラホマから迎えの飛行機が来るの!」とジェイムソンとの結婚を決め込んでいる。でも、このシーンが一番楽しかった。高田聖子の魅力全開という感じで、歌もありダンスもありで、思いっきり笑えた。
一幕の最後に登場するのが奥菜恵演じるクリスティンで、このペテン師と詐欺師は彼女から50000ドルを巻き上げるという賭をすることになる。
賭をすることになるのだけれど、どうして賭をすることになったんだか、今考えても思い出せない。
クリスティンから50000ドルを巻き上げるため、フレディは足が動かなくなった車いすの軍曹を装い、ジェイムソンは彼が治療を頼み続けて断られたという設定の医師を装う。
その過程で、ジェイムソンは愛華みれ演じる女性に「殿下!」と叫ばれ、相棒であり当地の警察署長でもある大鶴義丹演じるアンドレに事後処理を押しつける。この2人が最後にはくっついてしまうのは、まあ、ご愛敬だ。
実はクリスティンは大金持ちの娘ではなかったと判り、ジェイムソンは賭の中止を申し出る。自分の全財産を叩いて、フレディ演じる軍曹の治療費を払おうとする姿に惚れてしまったらしい。
一方のフレディは、とにかく彼女をgetするという目標(なんだろう、多分)に夢中で、そういう「健気さ」に特に注意を払う様子もない。
「フレディに全財産を取られた」と駆け込んできたクリスティンにジェイムソンは50000ドルを渡し、車で帰るように言う。
彼女が去った後、フレディが駆け込んできて、「どうして彼女を逃がしたんだ!」と叫ぶ。実は有り金を巻き上げられたのは、クリスティンではなくフレディだったのだ。
そこで、クリスティンにスポットが当たって「楽しかったわ、お2人さん。ジャッカル」と一声。
「若手の腕利きの詐欺師」は実は彼女だった、というオチだ。
途中からそうなんじゃないかと思わせるようになっているものの、でも「おぉ!」と思った。
多分、同じくらいの年齢の鹿賀丈史と市村正親に、壮年のジェイムソンと若者のフレディを演じさせていることも、この意外性を強調していると思う。何だか「ジャッカルが若手の詐欺師だから、市村正親は実年齢よりも若い役を(ちょっと無理して)演じているんだな」とつい思ってしまうではないか。
何だかこのオチはどこかで見たことがあると思ったら、何故かタイトルはどうしても思い出せないのだけれど、劇団M.O.P.のお芝居にあったと思う。薄幸の姉妹2人を助けようと知恵と策謀とペテンの限りを尽くした男たち、だけど最後には彼女たちに騙されお金を持ち逃げされたと判る。その判り方が、彼女のメッセージカードによる、というところまで一緒だ。
ひとつのパターンとして確立されているのかしら、と思った。
それはそれとして、これだけの出演者陣、特に鹿賀丈史と市村正親のそろい踏みなのに、全編にピリっとした感じがなかったのは何故なんだろう。
見ている私の方の体調が今ひとつだったということもあるとは思うのだけれど、それだけではないように思う。もっと時間も空間もギュっと詰め込んで、洗練されているというよりも猥雑な感じを出した方がこのミュージカルには似合ったのじゃなかろうかという気がした。
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