「エキストラ」を見る
「エキストラ」劇団東京ヴォードヴィルショー
作・演出 三谷幸喜
出演 佐藤B作/佐渡稔/石井愃一/市川勇
山口良一/たかはし等/あめくみちこ/山本ふじこ
大森ヒロシ/まいど豊/瀬戸陽一朗/中田浄
市瀬理都子/京極圭/玉垣光彦/奈良崎まどか
羽賀蓉子/フジワラマドカ/垣内裕一/村田一晃
矢谷健一/金澤貴子/上滝明美/時吉恵子
客演 伊東四朗/角野卓造/はしのえみ/中本修
観劇日 2006年11月19日 午後7時開演
劇場 紀伊國屋サザンシアター 13列24番
料金 7000円
上演時間 2時間15分
日曜夜の公演だったからか、若干の空席があった。今後も販売する予定なのかは判らなかったけれど、この日は当日券も販売していた。
ロビーで売られていたパンフレットは1000円だった。最近はパンフレットの購入も厳選しているので、今回も購入は見送った。
ネタばれありの感想は以下に。
チラシによれば、この「エキストラ」というお芝居は、「バックステージ物」で「群衆劇」で「シチュエーションコメディ」で「人間ドラマ」なのだそうだ。
印象としては、「シチュエーションコメディ」の部分がかなり少なくて、人間ドラマの部分を厚くした感じだ。ラストシーンは、かなり苦い。
舞台は、テレビドラマを撮影している場所で、かつエキストラの待機場所に使われているお寺だ。
そこには、エキストラの人々が江戸時代の農民の扮装をして集まり、事務所の担当者が控え、時々番組スタッフが連絡に現れたり、打ち合わせに現れたりする。
エキストラをずっとやっていて、テレビドラマのレギュラーを得た役者も「懐かしい」とやってくる。
「群衆劇」だから、集まったエキストラの一人一人にドラマがある。
伊東四郎が演じるのは今日がエキストラ・デビューの元駅員だし、角野卓造が演じるのはエキストラ歴半年の元教師、年老いた夫婦2人でエキストラをやっていたり、家を出てエキストラをやっている女性のところには旦那が「やり直そう」と訪ねてくる。死体役専門でできるだけテレビに映らないように努力している人もいるし、時代劇専門と周りから言われている人もいる。
これで、ドラマがなければ嘘である。
テレビカメラの前に立った途端にギクシャクした動きしかできずに降ろされてしまったり、俳優にサインをもらってエキストラ失格を言い渡される人もいる、その彼女をかばおうとする人がいて、病気で顔色も悪く辛そうなのに何とか夫婦2人で同じ画面に映ろうともがいている。「女」を武器にエキストラの役を取る人がいるかと思えば、妻を連れ戻しに来た旦那はいつの間にか「存在感がないのがいい」とエキストラの世界に浸かっているし、事務所の担当者が役を振ろうとすると逃げてしまうエキストラもいる。はしのえみ演じる新人担当者は、エキストラが足りずに自分が出演する羽目になる。
可笑しい。何度も笑ってしまったし、ついつい見入ってしまう。
一人一人にドラマがあって、次々と場の中心が移って行く。よそ見をしている暇は全くないし、テンポ良く進んで行く。
だけど、今思い返してみると、全体の印象は暗いのだ。舞台セットが黒っぽかったというだけの理由ではないと思う。
撮影済みのマスターテープを人質にエキストラは人間なんだと訴える人がいる。「エキストラは小道具だ」と言い切ったADの女性に謝罪させることを要求する。ベテランの事務所担当者は「スタッフに刃向かわないというのは絶対のルールだ」と声を大きくする。
新入りエキストラの男性が、「自分は10年間労務交渉をやっていた」と交渉のためにやってくる。
その中で、マスターテープは実は安全な場所に隠してあることを告白すると、それを聞いていた「元エキストラ」の俳優がスタッフに告げ口し、マスターテープは確保され、これだけの騒ぎを起こした男性はエキストラを続けられずに現場を去り、女性ADも現場を外される。
元エキストラの俳優は、新人担当者に「あなたが告げ口したんですね」と詰め寄られて、「スタッフに気に入られるためなら何だってする」と叫ぶ。しかし、その彼も役を降ろされ、しかも一度「役」に付いたらエキストラの世界にも戻れない。
ずっと具合の悪かった男性は出番を待ちながら亡くなり、でもみんなで「死体」の役で夫婦2人で出演させようとする。
そして、彼が亡くなっていることがスタッフに判ってしまっても、撮影は続く。
出番待ちのエキストラの人々は、時間つぶしのために「古今東西」を始める。そこで幕である。
何が苦いのか、全てが苦いといえば苦いし、でも「これが一番苦い」というエピソードを指摘することができない。
そういえば、前回公演の「アパッチ砦」も何だかとてもいたたまれないお芝居だった。「人間ドラマ」は「苦い」ものなんだろうか。
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