「みんな昔はリーだった」を見る
「みんな昔はリーだった ~EXIT FROM THE DRAGON~」
作・演出 後藤ひろひと
出演 堀内健/池田成志/京野ことみ/伊藤正之
後藤ひろひと/竹下宏太郎/瀬川亮/熊井幸平
板尾創路
観劇日 2006年12月29日 午後7時開演
劇場 パルコ劇場 C列27番
料金 7500円
上演時間 2時間20分
出演者がもう一人いる。前説のように出てきて、携帯電話等々の電源を切るようにお願いしたときに「チラシに名前は載っていませんが、出演しています。**です。名前を覚えて帰ってもらえたら嬉しいです」と言っていて、そのときは覚えたつもりだったのに出てこない。情けない記憶力だ。
パルコ劇場の「みんな昔はリーだった ~EXIT FROM THE DRAGON~」のページに行ってみたけれど、その役者さんのお名前は掲載されていなかった。地方公演もあるようだし、早めに訂正されるといいと思う。
ロビーではパンフレットやTシャツ、出演者がこれまでに出演していた芝居のDVDなどが販売されていた。
この「みんな昔はリーだった」が、私の2006年最後の観劇だった。2006年の観劇は「贋作・罪と罰」から始まり、(多分)全51本だった
2007年は「朧の森に棲む鬼」から始まる予定である。
ネタバレありの感想は以下に。
えんげきのぺーじやその他でどちらかというと「苦言」という感じの感想を多く目にしていたのでちょっと不安になりつつ見に行ったのだけれど、私はこのお芝居、好きだった。
見始める前は何となく頭が痛くて、頭痛薬を飲み忘れたのは失敗だったと思っていたのだけれど、見ている内に頭痛なんてきれいさっぱり消えていた。もっとも、劇場を後にして駅に着く頃には再び頭痛が始まってはいたけれども。
「本作で舞台初出演にして初主演! ネプチューン堀内健がブルース・リーに!?」という惹句から、堀内健はブルース・リーの役を演じるものだと思い込んでいたら、実は「ブルース・リーに憧れた5人の中学生の話」だった。そういうわけで、堀内健、竹下宏太郎、池田成志、伊藤正之の4人が学ランを着て中学生の役を演じる。そこに、瀬川亮が転校生としてやってきて、みんなの憧れだった京野ことみ演じるミャオと呼ばれる女の子と仲良くなったところから・・・、というお話だ。
その「みんな昔はブルース・リーだった」という話をしているのは、何となく風来坊な感じを漂わせている板尾創路演じるおじさんで、話を聞いているのは熊井幸平演じる頭を格好悪くモヒカンにした男の子だ。
そして、その「みんな昔はブルース・リーだった」話は演じられ、かつ伊藤正之が30年前を回想するという構造になっており、時間の行き来はその伊藤正之の一瞬の進行によって整理される。
何だか、書くと複雑だけれど、実際に見ているときは「おじさんと甥っ子」の存在はほとんど意識されないし、それほど判りにくい感じはしなかった。
「みんな昔はブルース・リーだった」頃のことに話を戻すと、瀬川亮演じる「ダメユキ」と呼ばれる男の子はこてんぱんに苛められる。あれは、いじめ、なんだろうと思う。帽子を取られたり、殴る蹴るの乱暴はされるし、無視されたり、雨の中をずっと立たされたりする。
そして、ミャオと呼ばれる女の子からもらったハンカチを公園の木のうんと高いところに引っかけられてしまう。
ブルース・リーになりきっていた竹下宏太郎演じる「たっけさん」が、「ハンカチは棒でも持ってくれば取れる。でもそれじゃだめだ」という話をして(本当に彼は中学生か?)、そして、公園で二人のブルース・リーとしての鍛錬が始まる。
その鍛錬にいつか他のメンバーも参加して、でも仲良くなった頃にまた「ダメユキ」は転校だ。ジャカルタから来た彼は次はカンボジアのプノンペンに行くと言う。
そして、カンボジアで内戦が始まり、彼が住んでいるアパートが攻撃されたというニュースが届く。
そして時は30年後の現代に戻り、再び集まったダメユキを除く5人は、偽物の「ブルース・リーの新作」をDVDで見る。明日は5時起きで香港出張の伊藤正之、家業のしょうゆ屋を継いだ池田成志、何だかちゃらんぽらんそうな堀内健、あんなにストイックにブルース・リーを追及していたのに何故かアメリカでぶっ飛んでいるたっけさんに、その妻に何故か納まっているミャオ、というメンバーだ。
そして、5人は、その「偽物のブルース・リー」が、かつてのダメユキであることに気づく。
私はここで、シルエットでダメユキがブルース・リーをだめだめに演じているところを一瞬照明に浮かび上がらせて終わりかと思ったのだけれど、もう一ひねりがあった。
すっかり忘れていたけれども、この話を甥っ子にしているのは、何だか風来坊なおじさんだった。そしてその甥っ子がおじさんを「公園の木」のところに走って連れて行く。おじさんの「俺たちは何から逃げていたんだ?」なんていうボケを無視して、「おじさんがそのダメユキなんだろう」「あれがそのハンカチだろう」と指さす。
そこに、DVDを見ていた面々も駆けつけてきて、でも大人と子どものダメユキは「まだまだあのハンカチに相応しい男じゃない」と言って、取ろうとしない。そこで、幕である。
何だかやたらと書き漏らしているのだけれど、もっとずっと縦横無尽に伏線が張り巡らせてあって、しかもそれがきっちりと気持ちよく収束してゆく。
確かに、前半の「いじめ」のシーンでは、世相を反映しているのか? これがテーマか? メッセージがストレートなのが流行なのか? と思ったのも本当だけれど、でも見終わったときには気にならなくなっていた。
ちなみに、後藤ひろひとはロバート・デ・ニーロのような中学校の用務員の役だった(?)のだけれど、甥っ子の「デ・ニーロはもういいよ」の一言で、舞台に出てくる度に追い払われていた・・・。
私はこういう「張り巡らされた伏線がぎゅっとラストシーンに向かって収束してゆく」という感じのお芝居が好きなんだな、と改めて思った。1年半振りの新作だそうだけれど、 後藤ひろひと健在! という感じがした。
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コメント
ガマ王子さま、コメントありがとうございます。
「みんな昔はリーだった」は、えんぺなどでもどちらかというと辛口の感想を書いている方の方が多かったように思うのですが、私はかなり楽しかったです。そうですか。デ・ニーロが不評だったんですか・・・。
それから、いつもご覧いただいてありがとうございます。今年もゆるゆると書いて参りますので、どうぞまた遊びに来てくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2007.01.02 20:23
新年明けましておめでとうございます
いつも楽しく拝見しております^^
「みんな昔はリーだった」よかったですよね
一部では後藤さん演じるデニーロが不評だったらしいですがw
こうやって最後におさまっていく芝居は後藤さんの真骨頂ですよね 僕はかなり好きなオシバイでしたw
今年もブログがんばってくださいね^^
投稿: ガマ王子 | 2007.01.02 09:24