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「地獄八景・・浮世百景」北九州芸術劇場Produce
監修 桂米朝
脚本 東野ひろあき
演出 G2
出演 佐藤アツヒロ/高橋由美子/山内圭哉/松永玲子
小松利昌/出口結美子/桂吉坊/市川笑也
桂吉弥/升毅/松尾貴史
観劇日 2007年2月10日 午後4時開演
劇場 世田谷パブリックシアター 1階G列20番
料金 4500円
上演時間 2時間25分
プレビュー公演だから、午後4時という、珍しい開演時間だったのだろうか。
ロビーではパンフレット(1500円)も売られ、DVDの予約も受付が始まっていた。そういう面では、本公演と違いはなかったのじゃないだろうか。
ネタバレありの感想は以下に。
プレビュー公演と本公演の違いというのはどこにあるのだろう。もしかしたら、プレビュー公演を見たのは初めてなのかも知れず、結局、よく判らなかった。
お芝居の途中でダメ出しが行われたりするわけではないようだ。
照明や舞台セットの転換などがまだ変わるかも知れませんよ、ということなんだろうか。
そういうわけで、全体的に緩い印象だったのだけれど、それが「地獄八景亡者戯」から引き続くこのシリーズの持ち味なのか、でも明らかに「地獄八景亡者戯」の時よりも作り込まれた感じのするお芝居で、プレビュー公演故に「緩さ」が顔を出していたのか、その辺りは不明である。
でも、落語のことは全く知らないけれど、たくさんの落語を集めて選んで再構成したこのお芝居の世界と「緩い」感じは似合っているように思えた。
落語は、多分、最初から最後まで通して聞いたことはないように思う。
落語と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「寿限無」と「ときそば」だけれど、これらだって噺家さんが語るところを聞いたことはない。そういえば、「ときそば」は関西では「ときうどん」なのだと聞いたことがあるように思うのだけれど、本当だろうか。
私の中で落語といえば、北村薫の「円紫さんと私」シリーズの中で語られる落語のことである。
このお芝居には50本以上の上方落語が詰め込まれていたそうなのだけれど、私に心当たりがあったのは、「立ち切れ線香」「天狗裁き」と、あと「一両だけ持って出て百両にして戻る」という落語だけだった。この最後の落語は、円紫さんが「一両を百両にするといっても、その間の生活費はどうするんだというところを説明したくなる」というようなことを「私」に語っていたシーンをうっすらと覚えているだけで、タイトルすら思い出せない。
ちなみにこのお芝居の中では、生活費も込みで一両を百両にしようとしていた。
その「立ち切れ線香」がこのお芝居の中心で、色々な落語のエッセンスをつなぎとめてまとめる役を果たしていた。だから、この落語の中心人物である、高橋由美子演じるこいと、佐藤アツヒロ演じる若旦那、升毅演じる番頭の三人はほぼこの一役だけを演じ、他の役者さん達は何役も演じ分けていた。
「立ち切れ線香」の話の筋の他に、役者さん達が高座に入れ替わり立ち替わり上がって、そこで場面転換の説明をするなどして狂言回しの役を務め、このお芝居をつなぎ止める。
小松利昌と出口結美子のお二方が、さりげなく何役も演じ分けていて、何だか格好良かった。他のお芝居でも見てみたいと思った。
それだけ重要な「立ち切れ線香」なので、最後にこいとが亡くなり、若旦那が線香を上げる。その線香に火がついている間だけ、彼女の三味線が聞こえる。三味線の音が途切れ、女将が笑みを浮かべて「弾かしまへん。線香が立ち切れました。」と言ったときに、「違う〜」と心の中で叫んでしまった。
私の中では、ここは「弾けしまへん。」と悲しげに言ってもらいたいところなのである。
こうなると、やはり色々な噺家さんが語る「立ち切れ線香」を聞いて、何と言っているのか、どんな調子で言っているのか、確かめてみたいように思えてくる。
ここで演じられる物語は、見ているうちにすっかり忘れていたのだけれど、閻魔様に「面白い話をしたら現世に戻してやる」と言われた若旦那が語る、「一両を百両にしようとした100日間の物語」である。
そして、さらにその外側の世界で、お芝居の最初に松尾貴史が登場し「悔やんでも悔やみきれない、後味の悪〜い話だ」と枕を振る。
でも、若旦那とこいとは最後には現世に戻り、仲良く芝居見物に出かける。大団円のハッピーエンドだ。
緩さと相まって、最初のマクラを忘れていたせいもあってすっかり安心して寛いで見ていられるお芝居だと思う。
落語を知らない私でも楽しめたし、元になった落語を聞いてみたいと思った。
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