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2007.02.11

「地獄でございます」を見る

MONO 第34回公演 「地獄でございます」
作・演出・出演 土田英生
出演 水沼健/奥村泰彦/尾方宣久/金替康博
観劇日 2007年2月11日 午後2時開演
劇場 三鷹市芸術文化センター 星のホール G列8番
料金 3000円
上演時間 1時間40分

 昨日見に行った「「地獄八景・・浮世百景」」に引き続く、個人的な地獄シリーズの第二弾だ。第三弾の予定はない。
 三鷹市芸術文化センターに行ったのは久しぶりだ。まず、北口に出るべきか南口に出るべきかで迷い、駅前の通りをまっすぐに歩き始めて「まだ右折しなくていいんだっけ」と迷い(曲がり角にはちゃんと看板が出ている)、「何分くらいで到着したっけ? 間に合うかな」と心配して早足になってしまった。私の足で20分くらいだった。

 ロビーではパンフレット(500円)や、土田英生の著書などが販売されていた。

 ネタばれありの感想は以下に。

 セットはやけに南国調というのか、リゾート風というのか、次々と登場人物が裸で現れ、会話からそこはサウナだということが判る。
 私が知っている「温泉センター」みたいなところに付いているサウナは、木造り風で中に入ると木のベンチがあって暑くて出てすぐのところに水風呂がある、というイメージなのだけれど、一般的なサウナというのはこの舞台のセットのような造りになっているのだろうか?
 全体に水色で、白っぽくて、サウナというかその待合室というか休憩所のようなところが舞台の物語だ。

 5人の男たちが次々とサウナにやってくる。そのうち3人は会社の同僚らしい。
 みんな「ここのサウナは変だ」と言い合っているけれど、とにかくサウナに来たと思っている。
 サウナってわざわざ行くものなのか? という私の疑問は置いておいて、とにかく男5人が無性にサウナに入りたくなって集まっている。
 「変な人がいる」とか「絶対にタオルを巻いて入る」とか「学生時代に南米を旅行したときに」なんていう、割とどうでもいい会話が交わされる。

 突然、地獄に詳しい引きこもりをしていた男が「ここは地獄だ」と言い出す。
 そう言われてみれば、それぞれに思い当たるところがあり、自分は死んだのだと納得しだす。やたらと正々堂々としていた男だけはなかなか認めようとしなかったけれど、やっぱり、死んだのだ。
 しかも、引きこもりをしていた男を車で轢いたのは会社員3人組で、でもそのブレーキが壊れていた車を貸したレンタカーの店長が正々堂々男で、その正々堂々男が崖崩れに巻き込まれたのは引きこもりをしていた男がいたずらで大きな岩を崖から落としたためだということが判ってくる。
 お互いがお互いの死因に関わっていると判ると、お互いを責め始め、責任転嫁が始まる。

 ここで場面転換で、この地獄を管轄している鬼卒(と言っていたように思う)たちの打ち合わせの場となる。縞柄のいかにもな「鬼のパンツ」をはいているので、間違いなく彼らは鬼だ。
 5人しかいない役者で演じきるために、「自分が担当している人間と同じ姿になっている」という設定なのが可笑しい。
 MONOのお芝居は初めて見に行ったので、土田英生以外の役者さんは誰が誰だか実はよく把握できないまま見てしまった。チラシの中に役名と役者さんのお名前と両方が載せられていたのに、申し訳ない。
 バラバラなようで、何となく共通した雰囲気があるような感じもして、バランスの取れている5人という感じがした。何より、5人とも通るいい声をしていたのが印象に残っている。

 ところで、そのサウナのような地獄は「等活地獄」というところらしく、他の地獄と「きちんと地獄に送り届けたかどうか」で成績評価がされるらしい。鬼の世界も世知辛くなっているものである。
 しかも、地獄に蹴落とせばいいというものではなく、人間たちが自ら反省して地獄に入るよう持って行かなくてはいけないらしい。

 地獄マニアの引きこもりをしていた男は、マニアだけあって、そうした鬼の事情に気づく。
 それでも、「一人だけ戻れる」という張り紙に負け、会社員のうちの一人が抜け駆けして戻って行く。「現世に戻れる」「地獄から出られる」ことを期待しての抜け駆けなのだけれど、実はより悲惨な地獄行きを決定づけられる。
 「どんな悪いことをして地獄に来たのか」ということが、「褒め合おう」とか「がんばろう」といった会話が続く中で判って来る。この辺りは、自分に引きつけて考え始めると暗〜い気持ちになってくる。

 それでも4人で鬼卒に負けないようにしよう、と決心し合っていたのだけれど、というところで再び
鬼卒のシーンになる。
 彼らの話から、結局4人とも、醜い争いをしたり、その争いに絶望したりして、地獄に行ったことが判る。
 それまでの会話だけでも、結構えげつないというか、後味の悪い感じではあったので、最後「あいつらの争いは醜かった」「あいつは可哀想だった」「でも最後まであいつは付き合ってやっていた」という報告・レポートといった調子の会話で匂わされ、幕である。
 後味の悪さは募って来ていたし、暗ーい気持ちになりつつあったので、より後味の悪そうなその後の展開がさらっと語られただけで終わったのにはほっとした。
 ほっとしたけれど、でも「残された4人の辿る運命」を実際に見てみたかったという気もする。何しろ「地獄でございます」なのだから。

 カーテンコールでの挨拶によると、久しぶりの本公演だったのだそうだ。来年の早い内に次回公演を企画しているそうで、それも見てみたいと思った。

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