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2007.06.17

「宝塚BOYS」を見る

「宝塚BOYS」
原作 辻則彦
脚本 中島淳彦
演出 鈴木裕美
出演 葛山信吾/吉野圭吾/柳家花緑/三宅弘城
    佐藤重幸/須賀貴匡/猪野学/山路和弘
    初風諄
観劇日 2007年6月16日(土曜日) 午後5時30分開演
劇場 ル・テアトル銀座 12列1番
料金 8500円
上演時間 3時間10分(15分間の休憩あり)

 キャンセル待ちをしてやっと手に入れたチケットだ。本当に見られて良かったと思う。
 久しぶりにパンフレット(1600円)も購入してしまった。DVDの予約も受け付けていて、少し迷ったけれど、とりあえず今回は自粛した。でも、発売されたら買ってしまうかも。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ネタバレありとはいうものの、パンフレットにも書いてあったけれど、現在の宝塚に「男子部」がないことも、「男女合同公演」がないことも、周知の事実だ。
 だから、戦後すぐ、宝塚に創設された「男子部」の物語であるこのお芝居のゆきつくところは、最初から見えている。
 でも、そのことは全く何の支障にもなっていない。
 いつ舞台に立てるのか何の保証もない中、日々レッスンに明け暮れる男6人と彼らを見守る2人の汗と涙と笑いがたくさんの物語だ。

 こういうお芝居を見ていると、「男同士」っていいな、と思う。
 演出の鈴木裕美は、絶対に楽しかったに違いない、という気がする。
 昭和20年12月に創設され、その時期に「宝塚に出たい」という夢を描いて集まった若い男たち5人(後に1人が参加して6人になる)だから、「事情」を抱えていないわけがない。「回天」の基地にいた者、病で戦争に行けなかった者、父が出征してまだ帰ってきていない者、軍で慰問のステージの手伝いをしていて舞台に憧れた者、色々だ。
 一人一人に事情があって、少しずつ本当のことを語り出していき、ぎくしゃくしていた6人が少しずつまとまって行く感じがよかった。

 訓練期間は2年と最初に言われていたにも関わらず、その2年が過ぎても宝塚の大舞台に立つことはできず、できても馬の足だったり影コーラスだったりする。
 プロのダンサーで外の舞台に出るようになる者、役者の息子で「演技がしたい」と叫ぶ者、リーダーの器ではないと悩む者、実は肺を痛めていて悪化し入院する者、宝塚音楽学校の生徒と付き合う者、それまでの「宝塚に来た」ことに事情があり、宝塚男子部で過ごす中で色々な思いが重なって行く。

 それを見守る男子部の責任者である山路和弘演じる池田にも演出をやりたかったという夢があり、男子部を育てようという夢と責任がある、彼らの亮で賄いをしている初風諄演じる「おばちゃん」にも元宝ジェンヌという過去がある。

 一人一人に物語があって、それが少しずつにじみ出してくる感じが好きだった。
 しかも、ダンスのレッスンのシーンで、それぞれがそれぞれらしく上手かったりヘタだったり失敗したりする。それって何だかとても凄いことなのではなかろうか。

 それでも、創設2年目くらいから、実はどんどん彼らの状況には閉塞感が漂ってくる。
 要するに「舞台に立つ」ことの目途が全く立たないのだ。

 そして、最後には、「舞台に立つ」ことなく男子部は解散となる。

 解散前、恐らくは彼らの夢の中で、彼らは宝塚の大階段で踊り、歌う。
 そのレビューのシーンが、明るくて楽しくて、でも「実際は舞台に立てなかった」彼らのことを考えるともの悲しかった。これができるだけの訓練を8年も続けて、それでも舞台に立てないままだったというのが、何ともいえない。

 でも、ラストシーン、稽古場を出て行く彼らの表情は明るかった。

 小林一三に手紙を書いて男子部創設のきっかけを作ったリーダーを演じた柳家花緑、本当に「できた」男で歌も上手い元電気屋を演じた葛山信吾、ダンサーの息子で自分も浅草で踊っていたダンサーを演じた吉野圭吾、宝塚でドラムを叩いていた実は肺を病んでいる大阪弁の直らない三宅弘城、旅回りの役者の息子でしょっちゅう「女にもてたい」と叫んでいる佐藤重幸、闇市で愚連隊(の使い走り)をやっていた日舞の師匠の息子を演じた猪野学、その後輩で出征した父の帰りを待っている18歳を演じた須賀貴匡。
 それぞれ得意分野も出身も違っていて、でもそれぞれが本当に「人」に合っていて、本当に彼らが宝塚で苦労を共にした6人と同じような関係を結んでいるかのようだった。
 もちろん、彼らを見守る池田を演じた山路和弘は渋く可笑しみがあり、寮のおばちゃんの初風諄の優しいまさに「慈母」という感じも加わって、本当にいい好きなお芝居だった。

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