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2007.06.03

「ツグノフの森」を見る

G2produce & 三鷹市芸術文化センター presents「ツグノフの森」
作・演出 G2
出演:片桐仁/坂田聡/福田転球/杉浦理史
    権藤昌宏/水野顕子/岩橋道子/久ヶ沢徹
観劇日 2007年6月2日(土曜日) 午後6時開演
劇場 三鷹市芸術文化センター 星のホール B列7番
料金 4500円
上演時間 2時間25分

 ロビーでパンフレット(1000〜1500円くらいだったと思う)や、上演台本(800円)、G2プロデュースのDVDなどが販売されていた。

 行くときに電車を乗り過ごして慌てて戻った私は、三鷹駅からもの凄くがんばって歩いて、何とか15分で劇場にたどり着いた。普通のペースで歩いていたら徒歩20分はかかると思う。

 確か追加公演が設定されていたと思うけれど、席はほぼ満席。「ほぼ」なので完全に満席でないのが勿体ない。

 ネタバレありの感想は以下に。

 チラシには「彼女が昏睡状態に陥った夜 大地は意思を持ったかのように横滑りを始めた」と書いてあった。確かに近いけど違う話だったような気がする。

 突然、日本国中の土地が地滑りを起こし、三鷹に日本中の「森」が集まり、札幌の中心が夕張市に移動し、首相官邸が行方不明になり、とにかくしっちゃかめっちゃかの大混乱で、いつしか地方自治体間で戦争まで始まってしまう。
 舞台は、その三鷹の森のど真ん中に家を構える片桐仁演じる画家のアトリエだ。

 彼の家には、水野顕子演じる「死んだように眠る女」がいて、久ヶ沢徹演じる三鷹市軍兵士が毎日絵の検閲に訪れる。福田転球演じるミナヅキという謎の男は謎の動物「バークレー」を可愛がっているし、坂田聡演じるヤクザさんは「組長のために絵を買う」と称してしょっちゅう通ってきているようだ。
 そこに、登場シーンでは「眠っていたように死んでいた女」であった筈の岩橋道子演じる姉と杉浦理史演じる弟が「庭の柿の木」を探してやってくる。

 これが、最初はピンと来なくて、しばらくは登場人物の会話と動きを追うのに精一杯だった。
 しかも、さらにミナヅキとの1年前の話までときどき挿入されるので、さらに私の頭は混乱する。どうも1年前に昏睡状態に陥っていた謎の男は2次元の世界からやってきた権藤昌宏演じる謎の「ぺらぺら」と親交を持っていたらしい。

 ボロボロになって画家の家にたどり着いた姉弟は、「柿の木の下に埋めた」誰かを捜しに来ていることは確かなのだけれど、それが誰で、何故埋められていて、どうして探しているかはしばらく明らかにされない。
 特に姉の方は自殺した母親に特別の思いがあるらしく、その母親は数学者で2次元の世界の理論を全て解明して2次元の世界を征服しようとしていたらしい。
 画家が描く絵は全て真っ白だし、「謎が謎を呼ぶ展開」なのだ。

 キーワードは「2次元の世界に三角は存在しない」らしい。正確には違ったかも知れないけれど、でも、「ぺらぺら」と姉が語る母の言葉としてと、二回語られたこの台詞が何だかとても印象に残った。
 高校数学のうろ覚えの知識からすると、平面は三点の座標が決まると決まるのじゃなかっただろうか(多分、この言い方も正確ではないと思うけど)。

 画家の家がずっと舞台だし、当然画家の出番も多いのだけれど、だんだんこの「姉」というか、姉弟の「母」がキーパースンなのじゃないかと思えてくる。

 「地滑りを起こした現在の日本」「内戦状態の日本」の様子は、画家の家にあるテレビが伝える。
 テレビの画面を役者が生で演じているわけだけれど、どう考えても深刻な現状をいきなりテレビの視聴者である画家と会話してみたり、昏睡状態の女に話しかけてみたり、死者○人というニュースを伝えた後で笑い飛ばしてみたり、やけに軽く伝えられる。

 設定もあって、「荒唐無稽な話」を装っているのだけれど、実はこの舞台は歪んだり壊れたりした愛を語っているんじゃないかという気がした。
 画家は昏睡状態の女に愛を感じていたけれど、目覚めた彼女に「カウンセラーとして」接していただけだと言われる。
 登場シーンで同じ布団から出てきたのでてっきり恋人同士だと思っていて、でも話の流れで姉弟らしいと判った姉弟はディープキスを交わしているし、母が自殺した後、姉は父を慰めようとし、弟はそれを見て父の首を絞めてしまったのだと最後に明かされる。
 三鷹市の兵士は、昏睡状態の女を妊娠させてしまっている。
 唯一、(多分)普通と言ってもいいのは、平職員からいつの間にか三鷹市長になってしまった男と、彼と付き合っていたらしい昏睡状態から目覚めた女の2人だけだ。

 一番壊れた愛なのは、もしかしたら、2次元の謎を解いて、自殺し、ぺらぺらが乗ってきた宇宙船(というか、円盤というか)の動力エネルギーを我が物とした姉弟の母かもしれない。ぺらぺらとミナヅキから「地縛霊」を略して「バークレー」と呼ばれている彼女は、殺された自分の夫の近くにいたいがために柿の木を自分のそばに持ってきて、それがそもそもの始まりだというのだから。
 人間、ほどほどが一番、なんていう阿呆な感想が浮かびそうになる。

 ラストシーンは、全てを空に告白した姉が母の「怒り」を鎮め、ぺらぺらが円盤を動かすエネルギーを得て帰ろうとして姿を現し、ミナヅキがそれを涙で見送り、画家はやっと「色」で絵を描き出す。
 他の登場人物がどう「ラストシーン」を迎えたのかは今ひとつ判りにくかったし、多分それぞれがこれからより面倒な課題と向き合って行かなくちゃいけないのは判っている。実はそちらに焦点を当てると「話はまだ終わっていない」ような気もする。
 でも、物語にはとりあえずの解決とエンディングが必要なのだ。
 という気にさせるお芝居で、ラストシーンだった。

 ところで、最初のシーン、「死んだように眠る女」が昏睡状態のカウンセラーであることは判りやすいけど、どうして姉が「眠っているように死んだ女」だったんだろう。あれは、実は「姉」ではなくて自殺した「母」だったんだろうか。

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コメント

 ガマ王子さま、コメントありがとうございます。

 「噂の男」はチケットが取れず、DVDも購入していないので、未見なのです。あまり「気持ちの良い」お芝居ではないらしい、ということは、何となくそれこそ噂に聞いてはいるのですが・・・。

 でも、本当に水野さんはスタイル抜群、蝋人形のような肌の白さでした・・・。思わず見惚れてしまっておりました(笑)。

投稿: 姫林檎 | 2007.06.05 23:42

水野さんがでてる「噂の男」DVDででてるので買うのもいいと思いますよ
生でみてすごいよかったですから
ただ色白なひとじゃないって思うはずですw
ただ女性はひくとこあるから調子いいときみてください(笑)
こちらこそこれからもよろしく^^

投稿: ガマ王子 | 2007.06.04 23:46

 ガマ王子さま、コメントありがとうございます&お久しぶりです。

 えーと、やはり判りにくかった、のでしょうか。
 少なくとも言いたいことと言っていることが同じストレートなお芝居、ではなかったですよね?

 水野顕子さんを拝見したのは(多分)初めてで、ベッドで寝てマッサージをしてもらっているところを見ながら「何て色が白い人なのかしら」と思っておりました(笑)。

 毎日ご覧いただいているのですか? ありがとうございます&ご期待に沿えているのかかなり心配です。
 今後とも、お見捨てなく(笑)よろしくお願いいたします。

投稿: 姫林檎 | 2007.06.03 18:51

久々コメント^^
この芝居・・・わかりずらかったね
G2作はドロドロしてわかりずらいw
水野さんが「噂の男」以来でしたがもっとみたかったなあと思いました 久ヶ沢さんは相変わらずで◎
会場・・・わかりずらく遠かったね(笑)
これからもブログがんばってくださいね 毎日拝見しています^^

投稿: ガマ王子 | 2007.06.03 18:17

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