「国盗人」を見る
「国盗人」−W.シェイクスピア「リチャード三世」より
作 河合祥一郎
演出・出演 野村萬斎
衣裳 コシノジュンコ
出演 白石加代子/石田幸雄/大森博史/今井朋彦
山野史人/小美濃利明/月崎晴夫/じゅんじゅん
すがぽん/坂根泰士/土山鉱史/平原テツ
盛隆二/大竹えり/大城桂/荻原もみぢ
黒川深雪/福留律子
観劇日 2007年6月29日(金曜日) 午後7時開演
劇場 世田谷パブリックシアター M列1番
料金 7000円
上演時間 3時間(20分間の休憩あり)
もの凄く久しぶりに、「誰かとお芝居を見に行く」ということをした。
久しく忘れていたけれど、こういうのも楽しいわ、と再認識した。
ロビーではパンフレット(1000円)や、野村萬斎出演作のDVDのほか、野村萬斎演じる悪三郎家の家紋をつけたてぬぐいも売られていて、かなり惹かれたのだけれどやめておいた。
ネタバレありの感想は以下に。
舞台はやぐらというのか、少し高く前に張り出し、梁などが見える感じに作られていた。
舞台奥はブラインドのようなものが下げられていて、それが完全に閉まると鏡のようにもなり、黒っぽい闇にもなり、少し透かせてあると奥にいる人影が見えて奥行きを感じさせる。
舞台正面に客席に降りる階段が置かれていて、実際に客席から出入りするのは主要女性4人を全て演じた白石加代子だけなのだけれど、リチャード三世である「悪三郎」を演じた野村萬斎はほぼその階段が定位置と言ってもいい。
舞台が張り出している分客席を何列か撤去してあったようで、M列でも十分に役者さん達の表情を見ることができた。
「国盗人」「悪三郎」と日本に翻案はしているのだけれど、ストーリーとしてはほぼ「リチャード三世」をなぞっている、と思う。
シェイクスピアといえば言葉遊びという感があるけれど、このお芝居ではそれが上手く日本語に乗ってリズミカルに遊ばれる。
「リチャード三世」に染みついているイメージといい、舞台全体の照明がそれほど明るくないこともあって、重い舞台を想像していたのだけれど、そうした言葉遊びを始めとする笑いがあちこちにちりばめられてあって、何だかこの陰惨な物語を楽しんでしまった。
リチャード三世の母、リチャード三世が殺した紅薔薇の王子の妻でリチャード三世と結婚したアン、リチャード三世の兄の妻、政子(多分、この字を当てていると思うのだけれど、パンフレットを購入しなかったので定かではない)と呼ばれる皇太后を、白石加代子一人で演じるのが、何しろ圧巻である。
「何故そうしたのか」は判らなかったけれど、ラスト近くに、ケープというか羽織を次々と替えることで白石加代子が4役をあっというまに早変わりしてリチャード三世を責めて呪うシーンがあって、この一場面のためだったのかも、と思ったりもした。
それに加えて「夏草や兵どもが夢のあと」という句とともに登場する冒頭と、退場するラストシーンには、劇中の黒い衣装とは全く趣向の違う白い衣装と白いパラソルで登場する。正直、このシーンの意図は判らなかったのだけれど、高まる蝉の声とともに白石加代子の登場が緊張感を生むことは間違いない。
左大臣を演じる大森博史、ヒサヒデを演じる石田幸雄、両者の悪役振りと軽み、情けない感じが、主役2人だけだとひたすら重くなっていく舞台のバランスを上手く取っていると思う。
リチャード三世の次兄と右大臣とその息子で紅薔薇の「リチモン」を演じた今井朋彦が、逆にこの物語で「善」に属する潔癖さや爽やかさを一人で背負っている。
でも、実はこの舞台で一番格好良いと思ったのは、リチャード三世の影を演じていた方で(お名前は判らなかった)、リチャード三世の動きに合わせて「影」となり、手に能面を持ってリチャード三世が殺した人間にそれをつけることで「死」を表現する。舞台上を飛び跳ねて移動し、神出鬼没。格好良い。
「面をつけられた人は亡くなった人」という演出は他のお芝居でも見たことがあるような既視感があったのだけれど、どのお芝居だったか思い出せなかった。
笛と鼓と太鼓で音響効果を出し(多分、その他には「音」はなかったような気がするのだけれど、私が気がついていないだけかも知れない)、兵隊達の動きなどはすり足だったりする。
野村萬斎の台詞も、ときに狂言のようだったりもする。
でも、「間違いの喜劇」のときのような、「狂言の舞台にシェイクスピアをかけた」という感じではなく、もっと色々な要素を取り入れて咀嚼しているという感じを受ける。
とにかく「楽しい、いいお芝居を見た」「お芝居でお腹がいっぱい」という感じだった。
チケットを取ってくださった、お姉さんに感謝!!
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