「ザ・ヒットパレード ~ショウと私を愛した夫~」を見る
MUSICAL「ザ・ヒットパレード ~ショウと私を愛した夫~」
脚本 鈴木聡
演出 山田和也
出演 原田泰造/戸田恵子/堀内敬子/瀬戸カトリーヌ
北村岳子/杉崎真宏/和田正人/升毅/RAGFAIR
観劇日 2007年7月21日(土曜日) 午後6時開演
劇場 ル・テアトル銀座 1列24番
料金 10000円
上演時間 3時間15分(20分間の休憩あり)
パンフレット(1600円)や、フジテレビで放映されたドラマ「ヒットパレード」のDVD、昭和の歌謡曲のCDなどが売られていた。
この公演もDVDになることが決まったそうで、予約を受け付けていた。
ネタバレありの感想は以下に。
もう、とにかく原田泰造演じる渡辺晋という男の人を格好良く描いている。
こういう男の人がいたら、そりゃあ惚れるでしょう、ドラマにもするでしょう、ミュージカルにもするでしょう、という感じだ。
多分、このミュージカルは、昭和の歌謡史を描いたわけでも、渡辺夫婦を描いたわけでも、渡辺プロダクションを描いたわけでもなくて、渡辺晋という人を描いたのだと思う。
原田泰造を舞台で見るのは「ラブ・ハンドル」以来二度目で、前回とは何だか全く別人のようだった。失礼ながら容姿だけならそれほど「いい男」ではないと思うのだけれど、舞台の上にいたのは、紛れもなくいい男だった。
男優陣は主に歌はRAGFAIRに任せて、原田泰造、杉崎真宏、和田正人、升毅の4人で物語を動かす分業のような感じだったけれど、それが上手く回っていたようにも思う。
その原田泰造と結構年齢差があるのではないかと思うのだけれど、でも何でもなく渡辺晋の妻である美佐を演じてしまう戸田恵子はやっぱり相変わらず格好良い。颯爽としているという言葉がこれほど似合う人もいないし、そもそも、この渡辺美佐という人が颯爽としていて格好良い。
瀬戸カトリーヌと堀内敬子がザ・ピーナッツを演じることは知っていて、どうしてザ・ピーナッツなんだろうと思っていたのだけれど、渡辺プロダクションが初めてスカウトして育ててテレビで売り出したのがザ・ピーナッツだからだということが判った。
顔立ちは全く似ていないのに、2人がハモっていると双子に見えてくるから不思議だ。ザ・ピーナッツの曲もそうでない曲も2人で歌うシーンが相当多かったと思うのだけれど、もっと歌って欲しいくらいだった。
先刻から失礼なことばかり書いているような気もするけれど、このミュージカルが実話に基づくことは知っていたけれど、今現在、渡辺プロダクションが存在しているかどうかさえ知らないまま観劇に出かけてしまった。
休憩前に「ザ・ヒット・パレード」というテレビ番組が始まってしまい、私の目には「今が絶頂期」に見えたので、この後の展開がどうなるのかむちゃくちゃ不安になってしまった。
とにかく昭和の歌謡曲のヒット・メドレーをガンガン流すミュージカルではない、歴史を描いているミュージカルだということが何となく判ったので、その後の展開として絶頂まで行ったら下がるに決まっているからだ。
休憩後、ザ・ピーナッツの2人がアメリカに行って日本の歌を歌い、次のシーンは8年後「あの頃が一番楽しかった」と言われて、いよいよ、と思ったら、ずっとジャズバンドの頃から一緒にやってきた升毅演じるやまちゃんが会社を辞めるといい、ザ・ピーナッツの2人も引退したいと言う。
去年の紅白歌合戦には渡辺プロダクションの歌手は8組出た、今年は10組も狙えると美佐が晋を励ましていたところへ、ザ・ピーナッツの2人が「ヒット曲もないのにみんなが大事にしてくれて、紅白歌合戦に出るのは辛い」と言ってくる。何だか泣けてしまった。
「自分は変わっていないのに、やまちゃんもピーナッツも去ってゆく」と渡辺晋は言うけれど、多分、変わっていたのだろうという風に思わせる。
そして、そこで立ち止まろうとする社長を再び立ち上がらせるのはやっぱり妻である美佐なのだった。
それはそれとして、このシーンで、ピーナッツのかぶり物をしてザ・ピーナッツの2人が出てきたときには笑ってしまった。
1975年から1986年までのヒット曲メドレーがRAGFAIRによって歌われたのを聞いて、このミュージカルは何歳くらいの人が見るとツボなんだろう、という感じがした。
この辺だと私も概ね判るのだけれど、逆にいうと、ここまでミュージカルを引っ張ってきたザ・ピーナッツの曲は私にはなじみ深いとは言えない。
昭和は長いし、渡辺プロダクションの歴史も長い。ターゲットを絞りにくかったのだろうけど、あらゆる年代の人に受けることを考えるのは無理だったんじゃないかという感じもした。
物語はやはり渡辺晋の死で終わる。
美佐が、夫の臨終を語るシーンで「長女がハミングを始めた」と言うのを聞いて、とんでもなく忙しい、お手伝いさんが7人もいる家だったけれど、でも家族の絆は確かな家だったんだなと思って、何だか私まで嬉しくなった。
この先もまだまだ物語は続いていくし、歌も生まれては消えていくし、歌い継がれていく歌も生まれる。
そういう感じのするミュージカルだった。
今ちょっと検索してみたところ、渡辺プロダクションはもちろん、美佐氏もご健在だった。
ご自分の半生をご自分の会社でミュージカル化してしまうなんて、何て凄い人なんでしょう、と改めて思ってしまった。
ところで、私の席は最前列の一番端で、つまりスピーカーが私の右前方1mくらいのところにある。舞台が終わったときには耳と頭がぐわんぐわん鳴っていた。
多分、ナナメの角度から舞台に対していたせいだと思うけれど、舞台がちょっと広く感じた。もう少し狭くして「人で埋まっている」感じになると、歌番組っぽくて良かったかも知れないと思った。
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