「夜の姉妹」を見る
リリパットアーミーII「夜の姉妹」
作・演出・出演 わかぎゑふ
出演 コング桑田/生田朗子/朝深大介/野田晋市
千田訓子/橋田雄一郎/曽世海児(Studio Life)
美津乃あわ(ファントマ)/浅野彰一(ファントマ)
森崎正弘(MousePiece-ree)/上田宏/谷川未佳/他
観劇日 2007年7月29日(日曜日) 午後6時開演 千秋楽
劇場 スペースゼロ F列18番
料金 4000円
リリパットアーミーIIの千秋楽はかなり遊ぶのだとすっかり忘れていた。
これはこれでとても楽しいのだけれど、千秋楽じゃなかったらどんなお芝居だったのだろうと気になる。今回のような悲劇だとなおさらだ。
開演して少しした頃、客席後方がざわついた。立ち上がる人もいたので、何かと思っていたのだけれど、カーテンコールで座席のダブルブッキングがあったと案内があった。
落ち着いてからはすぐに舞台に引き込まれてしまって、私自身はカーテンコールで言われるまで忘れていたのだけれど、実際に席を移った方がいたそうなので勿体ない事件だったと思う。
ロビーでは、パンフレット(1500円)や、Tシャツ(2500円)、DVDなどが販売されていた。「時の男」のDVDが出たと聞いてかなり惹かれたのだけれど、自粛した。
パンフレットを購入して、役者さんのサインをいただいて帰ってきた。千秋楽は、座長のわかぎゑふと、ファントマの美津乃あわだった。カーテンコールの後、わかぎさんが美津乃さんの手を取って2人でダッシュしているのが可笑しかった。
ネタバレありの感想は以下に。
男女総入れ替え劇だというのは、そういえばチケットを申し込んだときには知っていたのだけれど、ロビーに入って、コングさんが物販コーナーでメイドの格好をして売り子をしているのを見るまですっかり忘れていた。
リリパットアーミーIIが演じる洋物(という言葉も古いのかもしれないけれど)を見るのは初めてかも知れない。
日本人が西洋人を演じ向こうの名前を呼び合うことの違和感を何とかするために男女総入れ替えを考えたとパンフレットに書いてあった。
終演後にパンフレットを読むまでは、モチーフである「血友病」が男性にしか顕在化しない病気で、でも女性も潜在的に子孫に血友病を遺す可能性は持っているということが、物語の重要な位置を占めていたので、その理不尽さを薄めるためなのかと思っていた。
男女総入れ替えのときしか悲劇は演じないということだったのだけれど、でも、やっぱり男女入れ替えには違和感がある。
何が一番違和感の原因になっているのだろうとかなり考えたのだけれど、顔(髭のある女子高生がいたりしたし)ではなくて、どうも身長差が違和感を高めているらしいと気がついた。
あまり女性と絡まない生田朗子演じるアレクサンドル・デュマや、千田訓子演じるロバート新聞記者、子どもである谷川未佳演じるヴィルト、2人コンビで出てくることの多かった、朝深大介演じる男爵夫人と橋田雄一郎演じるその秘書といった辺りには違和感を感じなかったように思う。
これが、例えば、わかぎゑふ演じるカール大公と曽世海児演じる大公妃とか、美津乃あわ演じるラインハルト皇太子と野田晋市演じるイタリア貴族の娘ローザなど、カップルで出てくるとその違和感が際だつ。
舞台はヨーロッパのどこかの小さい大公国だ。
ラインハルト皇太子がイタリア貴族の娘ローザとの結婚を反対され、新聞記者ロバートとデュマの協力を得て、両親が男爵夫人が経営する女子校の生徒たちを大公の側室にしようとしているのではないかと疑うようになる。一方で、自身の足のひざの神経痛も悪化する。
ローザが気に入らず、引き離すために入院させられるのだとばかり思っていたら、実は、という展開である。
ここで「血友病」が出てくるとは思わなかった。
そもそも、千秋楽のためもあると思うのだけれど、大公が来る日のために演し物を練習している女子高生達の「芸」も(恐らくは)普段よりも長いし、「おしおきだ」と振るわれる指し棒(力一杯お尻を叩いていた)の回数も妙に多い。披露された歌もやたらと多いし、男爵夫人と大公妃は女子高生たちから手洗い歓迎を受けて舞台から落とされている。
この舞台本来の形よりも喜劇色が強められているところに、皇太子が血友病で、皇太子の弟たちも血友病で、ということが判明してからの怒濤の悲劇的展開のギャップがもの凄かった。
こういう言い方をしていいのかどうか判らないけれど、楽しめるお芝居だった。
美津乃あわ演じるラインハルトが出てくると、舞台装置の感じも相まって、舞台が一瞬にして宝塚に変わる。宝塚を見たことはないのだけれど、でも「宝塚だ」という感想が頭に浮かんだ。メイクの感じといい、声の感じといい、不自然なのだけれど自然に見える。
男優陣の中では、ダントツに朝深大介演じる男爵夫人が美しかった。
生田朗子演じるデュマは終始おどおどしているのだけれど、一瞬だけ姿勢も伸びて目がキランと輝いたことがあった。こいつはきっと密命を帯びたスパイか何かに違いない、このおどおどさ加減はきっと目くらましに違いないと思ったのだけれど、デュマは最後までおどおどとした態度の、ラインハルト皇太子のよき友人で、「無駄に背筋を伸ばした一瞬を見せるんじゃない!」と期待を裏切られた私は心の中で突っ込んでしまった。
ラストのダンスシーンのみ、男は男、女は女に戻って美しく踊る。
リリパットアーミーIIの男優陣、格好いいわ、と目が釘付けになってしまった。
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