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「ラスト・ラフ The Last Laugh」
作 三谷幸喜
脚色 リチャード・ハリス
演出 ボブ・トムソン
出演 マーティン・フリーマン/ロジャー・ロイド・パック
観劇日 2007年7月15日(日曜日) 午後2時開演
劇場 パルコ劇場 A列24番
料金 8400円
上演時間 2時間5分(15分間の休憩あり)+トークショー
かなり迷った末、台風が近づく中出かけてきた。
結果としては、大雨にも大風にもたたられることなく、ほとんど降られず交通機関への影響もなく無事に行って帰って来られた。出かけて正解だ。客席もほぼ満席だった。
どうしてこんな日にチケットを取ってしまったのだろうと思っていたのだけれど、終演後に主演のお二人(お名前が判らなくて書けないのだけれど、実際はもうお一人出演されていた)と三谷さんとのトークショーがあるからだった。
テレビカメラが入っていたので、DVDに収録されるのだろう。
時計を見なかったので定かではないのだけれど、終演後15分の休憩の後にトークショーが始まって、終わったのが午後5時だったので、恐らくトークショー自体は30分強というところだったと思う。
「そろそろ時間だと言われているので」と言いつつ、最後に三谷さんが発した質問が「今日は何時に楽屋入りしましたか?」だったのが可笑しかった。
ロビーではパンフレット(1500円だったと思う)、ポスター(500円)、Tシャツ(紺は2500円で、白は3000円)などが販売されていた。このTシャツ、劇中の場面のイラストが描かれていて可愛い。紺じゃなくて黒だったら購入していたと思う。
ネタバレありの感想は以下に。
ネタバレありの感想とはいうものの、見ていた間に私が一番多く思ったことは、「私には英語が判らない・・・」ということだった。
英国人の俳優による日本語字幕付き英語上演で、英語はところどころしか判らない。字幕を追いつつ、ほとんど判らない英語を耳から入れるというのは自分が意識している以上に負担の多い作業らしく、家に帰る途中の電車で頭痛が始まってしまった。
でも、そういう状態で見ていたにも関わらず、やはり面白い。大笑いしてしまった。
基本的には元になった「笑の大学」の骨格は変わっていない。戦争中、上演される芝居の台本は事前に検閲を受けることになっており、座付作家が検閲官の少々無茶な注文に応えて直して行くと、それが検閲官の注文に応えつつも何故か面白く完成度が高くなってゆく、その過程を見せる。
「人を笑わせたいんだ」という作家と、物堅く「劇場など行ったことはない」と言い切る元軍人の検閲官だから、話が噛み合う筈もない。
噛み合うはずもないのに、何故だか、台本のコメディとしての完成度は上がってゆく。
作家を演じたマーティン・フリーマンは、どこかでこんな人を見たことがあるよとずっと思っていたのだけれど、今頃になってそれが判った。顔かたちは全く似ていないのだけれど、動きの感じが市村正親に似ている、ような気がした。
登場シーンで一人だけで舞台に現れしばらく無言でマイムで見せている感じが、「You Are The Top」の市村正親の登場シーンと似ていたという、ただそれだけの関連かもしれない。
二人ともトークショーでの三谷さんによると有名な俳優さんだそうなのだけれど、残念ながら私は知らなかった。
でも、それぞれが「こんな感じの人、いるよ」という、まさにはまり役の感じだった。
日本語字幕は、私が気がついた限りでは、ラスト近くに1回だけ早く出過ぎたことがあったけれど、他は概ねジャストタイミングで出ていたと思う。
見ている方としては、笑っているタイミングにも違和感はなかった。
トークショーでの話によると、演じている方としては台詞を全て言い終わらないうちに客席が爆笑になるのが気になったり、やはり字幕にする分かなり会話をカットした部分もあるということは三谷さんが言っていた。日本語字幕は三谷さんが監修をしているそうだ。
確かに、大枠として字幕で出ているような内容の会話が交わされていることは判る。でも、どう考えても実際にしゃべられている台詞の往復の方が多いし、内容も詰まっている。あれが聴けて判ることができたらいいのに、と思ったところが何回かあった。
息子の戦死を知らされて、検閲官は無気力に笑う。
そして、本当に「笑いで現実を忘れられるのか」を確かめに劇場に赴く。
何とか台本にGOサインが出たところで、(この要約はとても間違っているような気がしなくもないのだけれど)作家が「実は自分はあなたのことを莫迦にしていました。」ということを検閲官に告げる。
作家は、「こうして親しくなったし」と理解を求めるけれど、検閲官は激怒し、一度出した上演許可を取り消して「一回でも笑えるところがあったら上演は許可しない」と書き直しを命じる。
翌日、作家は一晩で全くの新作を書き上げて提出する。
チェックする筈の検閲官は、読みながら大笑いし、笑えたところに赤線を引いている。
上演許可は出せないという検閲官に、作家は、その2日前、召集令状が届いたことを告げる。
検閲官室の窓は日に日に塞がれた部分が多くなってきており、銃撃の音も頻繁に聞こえるように、近くから聞こえるようになってきていた。
「笑の大学」のときに泣いた記憶はないのだけれど、このシーンで、何故か涙が出てきて止まらなかった。
作家は去り、建物自体が揺れるような銃撃の中、検閲官が再び読み始め、笑い始めるところで幕だった。
涙が出たのは、検閲官が作家が召集免除になるように働きかけていたのだが、と呟いたその台詞と、息子2人を戦争で亡くした初老の男性が、作家を息子のように思い始めていたその心情に対してだったのかも知れない、と思った。
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