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2007.08.27

「猫と針」を見る

「猫と針」演劇集団キャラメルボックス
作 恩田陸
演出 横内謙介
出演 岡田達也/坂口理恵/前田綾
    石原善暢/久保田浩
チェロ演奏 海老澤洋三
観劇日 2007年8月27日(月曜日)午後7時開演
劇場 俳優座劇場 4列1番
料金 5800円
上演時間 1時間45分

 チャレンジシアターと銘打っているためか、キャラメルボックスのDVDや、横内謙介と恩田陸が寄稿したPHOTO BOOKなどは売られていたけれど、キャラメルボックスにしては静かめのロビーだった。ちょっと迷ったけれど、キャラメルは配役やスタッフが載ったチラシ(というのだろうか?)を配布してくれるので、それでいいと思うことにした。

 ネタバレあり、かも知れない感想は以下に。

 普通だったら明日書くことにするところなのだけれど、このお芝居の感想は早く書いた方がいいような気がする。

 高校の同窓生のお葬式の後、同窓生の一人が映画監督になっており、そのエキストラとして「猫のお葬式」の場面を撮りたいと前々から言われていた面々はスタジオへ出向く。
 お葬式帰りにお葬式を演じている、そのスタジオでの数時間。

 今回の出演者5人のうち、石原善暢以外の役者さんは私の中では割と固定したイメージがある。
 今回の久保田浩は、流石に「羽曳野」出身ではないし役名も「伊藤」ではなかったのだけれど、彼も含めて4人はある意味で安心して見てしまうところがあるので、そういうイメージのない石原善暢がどう出るかがかなり気になった。

 でも、本来的には、ぼんやりのんびりしていて、今回の集まりの発起人でもある映画監督のタカハシユウコがこのお芝居のキーを握っているのだと思う。
 演じている前田綾はかなり苦労している感じがする。

 ストーリーの核は、多分、こういうことなのだと思う。
1 彼らが高校生のときに食中毒の事件があった。
2 この事件にオギワラ少年は深い関わりがあった。
3 映研にいたタカハシユウコは食中毒事件の一部始終を8ミリで撮っていた。
4 そこには食中毒の原因となったけんちん汁の鍋を運ぶオギワラが映っていた。
5 その8ミリフィルムは姿を消した。
6 数年前、事件から15年後、時効になったからとその8ミリフィルムがタカハシユウコの実家に送られてきた。
7 タカハシユウコは映研の仲間にその8ミリを見せようと思った。
8 映画のエキストラを頼んで仲間を集めたその日はオギワラのお葬式の日だった。

 精神科医(心療内科医かも知れない)であったオギワラのところに、男3人は何らかの形で通ったり関わったりしていたし、坂口理恵演じるスズキはオギワラに借金していた。
 タカハシユウコは仲間に「撮る」と言っているカメラの他に隠しカメラを用意して、彼らの雑談を全て撮影している。
 「記録されたモノ」しかリアルではないと思うようになってしまったからだ。

 正直にいうと、よく判らない、多分、不条理なお芝居なんじゃないかという気がする。
 結局、高校時代のオギワラの目的は何なのか、フィルムを盗んだのは誰なのか、タカハシユウコの今回の目的は何なのか、実は明かされていないような気がする。
 ただ、恩田陸が書いているということを知っているから、見ている私が「恩田陸が書いている」というフィルターを無意識に通していて、それであまり不条理な印象が強くならない。
 それよりも、もの凄くプライベートな戯曲だという印象が強い。
 恩田陸が普段から考えていたりふと頭に浮かんでいたりすることが多分そこにはふんだんに散りばめられていて、その断片も、たくさんの断片からどの断片を選んでどういう順番でつなげるかということも含めて、そこには書いた人のもの凄くプライベートな事情が(多分、本人も意識せずに)語られているのだ、という気がする。

 舞台の音楽はチェロの生演奏だった。
 オープニングはバッハの無伴奏チェロ組曲の1番で、インスタントコーヒーか何かのCMで使われていたせいか、曲が始まったときに笑いが起きたのが勿体ない。
 それから、ワンシーンだけ、演奏と台詞が被るシーンがあって、私の席はチェロから1mくらいのところだったせいもあって、台詞が聞き取りづらくてちょっと困った。

 岡田達也演じるタナカは明日は自分が被告になっている裁判があり、久保田浩演じるサトウは眼鏡をわざと踏んで壊してしまった顧客のところに謝りに行かなくてはならない。スズキは息子が不登校で担任の先生が来ることになっている。石原善暢演じるヤマダは奥さんが自殺してから泣けていないし、タカハシユウコもやっぱり最近泣けていない。
 それでも、生きてゆく。

 タカハシユウコが撮った映画のタイトルと、ラストシーンのタカハシユウコの台詞が絶対にこのお芝居のポイントだと思うのだけれど、「この台詞がポイントだ」と思ったことは覚えているのに、何という台詞だったのかどうしても思い出せない。
 そのタカハシユウコが台詞を言ってすぐに照明がフッと消えたのだけれど、あと1秒! と思ってしまった。

 見て良かった。
 でも、多分、とても痛い(塩辛いではなく)芝居だと思う。
 

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