「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」に行く
2007年7月21日から9月30日まで、東京都現代美術館で開催されている 「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」 に、昨日、仕事を半日休んで行って来た。今日行って来た。当日券(大人)は1100円である。
東京都現代美術館のWebサイトに書かれている混雑状況を見ると、土日祝日は入館までに60〜80分待ちと書いてあったので、駅から15分も歩いてそれでは入る前に疲れてしまう。
午後2時前に現代美術館に到着した時点では、チケット売り場が10分待ち、入館の待ち時間はゼロだった。
でも、一歩中に入ったら、展示された絵の前には二重から三重の人だかりができている。しかも、人気のある絵に集中しているわけではなくて、満遍なく人が取り巻いている。
これは焦っても仕方がないと思い定め、ゆっくり列に並んでそのペースで歩くことにした。
それで、周りの話し声が聞くともなく聞こえてきたのだけれど、タイトルからも判るように、まず、ジブリ・アニメのファンの人たちがたくさんいる。彼らは、背景画の一枚一枚について「これは**のシーンの背景だ」と言い合っている。
そして、次に多い(ように思われる)のは、自分でも漫画や絵を描く人々だ。漫画研究会会員と思われる制服姿の中学生(高校生?)もいる。彼らはもっぱら「ここの筆遣いが」とか「こういう風に描けばこういう風に見せられるんだ」と技術的な勉強をしている感じだ。
その他に、例えば「紅の豚」のコーナーでは、当時の戦闘機について語っている男の子もいた。これはかなりマニアックな楽しみ方といえるだろう。
ジブリ・アニメのDVDを4本持っている私は、ジブリ・アニメのファン(の隅っこ)に分類されることになるだろうか。
「トトロ以前」の、例えば「時空の旅人」や「幻魔大戦」「はだしのゲン」などの世界からスタートし、次のトトロのコーナーが大盛況だった。やっぱり、トトロに思い入れの強い人が多いのだな、と感心した。
その後、魔女の宅急便、紅の豚、おもひでぽろぽろと進むにつれて人はまばらになってくる。
平成狸合戦ぽんぽこ、耳をすませば、もののけ姫、千と千尋の神隠しくらいまで来ると、一番前で少し絵から離れたところから一枚一枚ゆっくりと見ることができた。
やっぱり、まっすぐ続く道の絵を見たら少し離れたところからその「どこまでも続く道」を味わいたいし、森や海岸線や家を俯瞰で見る絵も少し離れたところからその「高さ」の感じを味わいたい。
トトロの家の絵を見ていて、自分の影が絵に映っているのではないかと思って避けたら、それは最初から絵に描き込まれた影だった。
紅の豚が飛ぶアドリア海の街並みを見ていたら、逆に引き込まれて自分が一瞬絵の方に落ちて行くんじゃないかと思った。
それで十分、という気がした。
気がしつつも、おもひでぽろぽろで紅畑に朝陽が射す絵はやっぱり大好きなシーンだし、もののけ姫の森はやっぱり深い。ハウルの動く城のお花畑のシーンも懐かしい。
アニメの背景というのは、絵のようだったり、漫画のようだったり、写真のようだったり、密度が濃かったり薄かったり、本当に様々なのが意外だった。
近づいてみると「手抜きじゃないの」と思えるのに、少し離れてみるとその「手抜き」に見えた線の一本一本が絵を構成する重要な要素として生きていて、本物らしさを演出しているのが不思議だった。
ここまでで、入場後、1時間半がたっていた。
「ジブリ後の仕事」の展示では、雑誌の表紙や小説の挿絵などが多かった。
ここまで来て、これまで見てきた、トトロやおもひでぽろぽろ、平成狸合戦ぽんぽこ、もののけ姫の世界も合わせて、日本の自然だってやっぱり捨てたもんじゃない、と思えた。
この後は3階に上がって、アニメ撮影の技法や、それに合わせた背景画の描き方、ご本人のアトリエの机が再現されていたり、絵の描き方のパネルや映像表示がされている。
自分でも絵を描く人が多かったのか、その映像の前にはかなりの人だかりができていた。
絵心というモノが全くない私はスルーする。
アニメ撮影の方法が、今ではかなりデジタル化されているとはいえ、かなり手工業的なのが意外だった。森の中を疾走するシーンで、何重にも描かれた森の絵と走る人とを描いたセルを異なるスピードで動かして速さを表現する。そのセルを動かす際にこすれて傷つかないように注意したと書いてある。
そんな「手作業」でアニメが撮られているとは思わなかった。
崖を駆け下りるシーンでは、カメラが駆け下りるサンを追うために、背景画を予め縦長に描いておくというのも、考えれば当然なのだけれど、そんな原始的な方法でクリアしているのかと思って意外だった。
「背景の中に入ろう」といって、サツキとメイの家が大きく描かれていてその前で写真を撮ることができたり、トトロを折り紙で折るコーナーは満員御礼だ。
この「写真撮影OK」のコーナーでは、ほとんどの人が携帯電話で写真を撮っている。カメラ付き携帯を持っているということが既に常識なんだな、ということを感じた。私は、「写真撮影OKなら、チケットにでもそう書いておいてよ。カメラ持ってきたのに!」と怒ったクチである。
逆に、男鹿和雄が監督して作画もしたという、紙芝居風のアニメ「種山ヶ原の夜」の上映コーナーが閑散としていたのは意外だった。イスが少なくて、床に直接座布団が置かれていたせいかもしれない。スカートでそれはちょっとためらわれる。
私は空いていたイスに座ることができたので、(美術展などで上映される映像としてはかなり長めだったし)ゆっくり鑑賞できた。
ショップはもちろん大盛況だ。
レジには行列ができていて、20人待ちくらいだったと思う。
美術館を出たのは、入館後、3時間20分後だった。
楽しかった!
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