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2007.08.12

「ひーはー」を見る

Piper結成10周年公演「ひーはー」
作・演出 後藤ひろひと
出演 Piper:川下大洋/後藤ひろひと/山内圭哉/竹下宏太郎/腹筋善之介
    楠見薫/平田敦子/水野美紀/片桐仁(ラーメンズ)
観劇日 2007年8月11日(土曜日)午後6時開演
劇場 本多劇場 P列20番
料金 6000円
上演時間 2時間20分

 ロビーに一歩入ると、そこは物販の嵐だった。
 何しろ、呼び込みの声が凄い。パンフレット(1500円)やTシャツといった定番から何故かフィギュアまで売られ、次回出演作のチケット先行発売や、DVD先行予約の受付なども行われている。
 でも、迷った末に何も購入しなかった。

 ネタバレ大ありの感想は以下に。

 カーテンコールの挨拶のときに、後藤ひろひとが「ブログなどに書きたい人もたくさんいるでしょうが、みなさんごときに書けるような内容ではないので、DVDを買ってください」と言っていた。
 ごもっとも、である。
 でも、それだけでは寂しいので、やっぱり感想を書こうと思う。

 スーパーマーケットまで往復3時間もかかるような、日本のどこかにある、既に潰れてしまったテキサス風ステーキレストランが舞台の西部劇だ。
 この妙なシチュエーションについて、のっけに後藤ひろひとが「作家」として登場し、説明する。
 ついでにという感じで、壁にかけられた飾りの拳銃を「登場人物が登場人物を撃つと死ぬ」という設定のものに変えてしまって、退場だ。

 だから、最初のうちは、西部劇ごっこに命を賭けているように見える二人組(川下大洋・片桐仁)、レストランの留守番だか店番だかをしている親子(山内圭哉・楠見薫・平田敦子)、イベント会社でゲストを迎えに行き沼に車ごと突っ込んでそのギタリストを殺してしまったと思い込んでいる泥だらけの二人組(竹下宏太郎・水野美紀)、楠見薫が昔「このダンナを何とかしてくれ」と書いた手紙を信じ込んでダンナを殺しに来た元傭兵(腹筋善之助)と、その元上官(後藤ひろひと)が、何故かみんなで西部劇風の衣装をまとい、西部劇の世界に突入していく。

 ポイントは、イベント会社の二人が殺したギタリストが「クロード・チアリ」という名前だったこと、西部劇ごっこにうつつを抜かしている二人組のハンドルネームが「クロード」と「チャーリー」だったこと、この二人が待っている西部劇仲間のハンドルネームが「キッド」と「エリックじいさん」で、イベント会社の二人の名前が「キド」と「エリコ」だったこと。
 ついでに、この「キッド」という人物が、女性ギタリストとばかり付き合っていて「ギタリスト殺し」なんて異名を持っているとなれば、この4人の関係がしっちゃかめっちゃかになるのは当然のことだ。
 一方で、元傭兵の彼が「命令は紙でくれ」と言うのに対し、楠見薫演じるミズホさんが書いた紙は本人に渡らず、山内圭哉演じるヒロユキが書いたミズホさんを称える歌の歌詞が命令だと認識される。

 そしてまた、「西部劇ごっこ」をしていたり、「殺しに来た」というシチュエーションだったり、「テキサスレストランの店員になりきる」ことを目指していたりする人々が登場するもので、みな、あの「撃ったら人が死ぬ」ことになっている拳銃を気軽に手にするもので、それだけでハラハラしてしまう。

 誤解が誤解を呼び、平田敦子演じるタマコがギターがもの凄く上手かったり、父親であるヒロユキのことが嫌いだったり、微妙に暗躍するもので、事態はさらにさらに混乱する。
 このレストランはやけに広いらしく、全員が一同に会するのは最後になってからで、それまでは、事態の理解に役立ちそうな組み合わせでは絶対に出会わないもので、話はどんどんややこしくなってゆく。

 小ネタも連発されて可笑しかったし、客席もかなり湧いていたのだけれど、最後列から見ていたせいなのか、何だか遠い感じがして、今ひとつ乗れない感じでいた。
 途中から「いい加減に張りまくった伏線を収束させい!」と思ってしまったくらいだ。

 元傭兵を説得しにきた元上官がとっとと諦めて、レストランごと燃やしてしまおうとしたところに雷雨が降り出し、火は消え、何故かこのレストランに集まっていた人々全員の命が助かる。
 もう、ここまで確信犯でご都合主義を追及されたら、笑ってしまうしかない。

 そして、雷雨も上がった次の日の朝、「よーし、大団円だ」という雰囲気が漂い、清々しい朝日が差し込み、実は助かっていた(らしい)ギタリストがレストランに到着する。
 そこで、すーっかり忘れていた件の拳銃を、タマコが何の理由もなく撃ち、件のギタリストを殺してしまう。 

 この瞬間、「やられた!」と思った。
 最初はハラハラしていた拳銃の存在を、物語の最後にはすっかり忘れていたのだ。こんなところで撃たせ、殺させてしまうとは!
 それまで「何だか今ひとつ話の中に入り込めないわ」と思っていたのだけれど、このとき「全部許す」と思った。

 そして、再び作家が登場し、彼らの後日談を語って幕である。
 あー、可笑しかった。

 カーテンコールの最後、カウボーイが牛を追うときのかけ声だという「ひーはー」を客席全員立たせてポーズを取らせ、叫ばせて終わる。
 そこまで含めて「ザッツ エンターテイメント」という感じだった。

 詳しくは、DVDを見てください(笑)。

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コメント

 ガマ王子さま、コメントありがとうございます。

 失礼しました。ハコちゃんじゃなくて、パコちゃんでしたっけ。
 映画化されるというのも初めて知りました。教えていただいてありがとうございます。
 ネットで探してみたら、また微妙な配役ですね(笑)。
 見たいような見たくないような・・・。
 来年までゆっくり悩みます。

投稿: 姫林檎 | 2007.08.16 20:36

DVDなるとおもいますよ「社長放浪記」
無防備で観客全員が最初から最後まで笑ってる芝居ってはじめてでした
是非ナマでみてほしかったな^^
これはとくにライヴなオシバイだったと思うので。

ちなみにハコちゃんでなくパコちゃん(笑)
来年「パコと魔法の絵本」ってタイトルで映画化されますね~
ちょい残念w

投稿: ガマ王子 | 2007.08.15 00:41

 ガマ王子さま、コメントありがとうございます。

 「ガマ王子VSザリガニ魔人」がお好きなのは、HNからも非常によく伝わって参ります(笑)。ハコちゃん(だったような・・・)が健気で、泣けて泣けて。

 「社長放浪記」をご覧になったんですね。羨ましいです。
 気がついたらチケットが売り切れていて、気がついたら公演も終わってしまっていて、アプローチすらできなかったような気がする作品です。
 DVDになるでしょうか?
 

投稿: 姫林檎 | 2007.08.14 22:16

あれ土曜日だったんですね
ごめん勘違いでした
ひとりで熱くなりはずかしい(笑)

僕は「ガマ王子VSザリガニ魔人」がすきかな~
当時3回みにいきましたものw
「ニコラスマクファーソン」もよかったですよねー^^
かっこええ~芝居でした
なにも残らない喜劇が最高の喜劇だって、
伊東四朗さんが「社長放浪記」のパンフにかかれていました
今年一番のお気に入りは今のとこその「社長放浪記」です^^

投稿: ガマ王子 | 2007.08.13 23:52

 ガマ王子さま、コメントありがとうございます。

 千秋楽(12日)をご覧になったのですか? 羨ましいです。きっと、私が見た回(11日夜公演)以上に遊びが多い楽しい公演だったことでしょう。

 確かに本多劇場は見やすい劇場ですが、やっぱり最後列は遠かったです。

 ちなみに、私は、後藤ひろひと作の作品では、ニコラス・マクファーソンが好きです。今回の公演のカーテンコールでもご本人がおっしゃっていましたが「何も残らない感」がとってもいいです。

投稿: 姫林檎 | 2007.08.13 22:40

おおお
同じ日みてる!!
僕もM列4番でかなりうしろだなあって思ったけどもっとうしろだったんですねw
本多劇場は後ろでも他と比べ見やすいほうですよね
ああ 是非ご挨拶したかったです(笑)

しかしカーテンコールおおかったですね~
千秋楽だからかな
僕はパンフだけかいました
何故か楠見さんの料理レシピとか平田敦子誕生日の決意とか(なんと44歳@@)
全然関係ないことばかりかいてありましたよ^^

内容はかなりの伏線はりまくり・・っていうかはりすぎのオシバイでしたねw
同じような感想だな僕も
最後で そうきたか~っておもったしw
後藤さんの作品では前回の「みんな昔はリーだった」
のほうがすきだけど今回も後味よい後藤さんらしい作品だなって思いました^^

投稿: ガマ王子 | 2007.08.12 23:45

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