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2007.08.22

「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」を見る

劇団☆新感線 2007年夏休みチャンピオン祭り
 「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」
作・演出 いのうえひでのり
出演 古田新太/宮藤官九郎/勝地涼/橋本じゅん
    高田聖子/小松和重/粟根まこと/逆木圭一郎
    右近健一/河野まさと/村木よし子/インディ高橋
    山本カナコ/礒野慎吾/吉田メタル/中谷さとみ
    保坂エマ/村木仁/川原正嗣/前田悟
    池田成志/木野花
観劇日 2007年8月21日(火曜日)午後6時開演
劇場 サンシャイン劇場 20列6番
料金 9500円
上演時間 3時間5分(20分間の休憩あり)

 ロビーでは、パンフレット(2800円)他、TシャツやDVDなどが販売されていた。
 20thBOXというDVDがあって、「星の忍者」や「LOST SEVEN」、橋本さとし主演の「野獣郎見参」、第2部に続きそうに終わったのにその後上演された気配のない「西遊記」などが入っているそうだ。もの凄く欲しかったのだけれど、36000円。
 お値段を見て冷静に戻り、そもそも財布に36000円も入っていなかったので諦めた。

 ところで、これはお芝居そのものとは関係ないのだけれど。
 一幕目、客電が落ちてもしゃべっていたところから嫌な予感がしたのだけれど、隣に座った女性2人組の話し声が気になって仕方がなかった。大きい声を出すとか、のべつまくなしにしゃべっているというわけではないのだけれど、「あ、**のパロディだよね」「これって微妙」といった感じではっきりとした感想を言い合っているのは、とても耳についてしまって集中できない。
 二幕目の始まりも、やっぱり客電が落ちたのにしゃべり始めたので、意を決して「おしゃべりはやめていただけますか。」と言ってみた。
 私としては、そんなにキツイ調子でなく落ち着いて言えたと思ったし、二幕目はおかげさまでおしゃべりの声はほとんど聞かれず、集中して見ることができた。
 でも、正直に言って、お芝居を楽しめたとはとても言えない。
 言われた彼女たちも気分が悪かったかも知れないけれど、言った方も、決して気分のいいものではない。
 本当に、お芝居を見ているときにはおしゃべりをしないということが、基本的なマナーとして、周知徹底されて欲しいと切に願う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 席が1階の最後列から2列目というかなり遠い席だったせいなのか、何だか全体として「遠い」という感じを受けた。
 がーっと笑って、一緒に「祭り」に参加している気分になってスッキリする、というのが、新感線のいわゆる「ネタモノ」のお芝居の醍醐味だと思うのだけれど、今回は何だか対岸のお祭りを見ている感じがしてしまった。
 もちろん、一幕目と二幕目、それぞれ違う理由でお隣の席が気になっていたせいもあると思う。

 いきなり、幕開けはミュージカルのパロディだった。
 そもそも、「犬顔家の一族の陰謀」というタイトルだっていかにも「パロディ」なのだし、「オペラ座の怪人」「キャッツ」と続いたミュージカルの主演をやっているのが「大地マヤ」という二重にパロった名前の女優さんだったりする。
 どこが「犬顔」なんだよ、と思っていたら、それは池田成志演じる犬顔家の三女の夫が演出している舞台で起こった事件で、一連の事件の幕開けだった、と言われて、お芝居に入って行く。

 私の席は通路から2番目だったのだけれど、池田成志の登場がその通路だったもので、しかもいかにも演出家らしく怒鳴り声から始まったもので、かなり驚いてしまった。
 いかにも演出家らしくといえば、ミュージカルの舞台からの転換で、手前にスクリーンを降ろし、映画の役者紹介のように名前を映し出して、後ろでその役者にスポットを当てていたとき、池田成志は、灰皿を投げてデカイ灰皿を後ろからぶつけられていたのには笑った。

 そのスクリーンに「石坂浩二」と出しておいて、「は出ないよ」という文字を続けたように、宮藤官九郎は金田一耕助のような探偵だし、犬顔家には三姉妹がいる。
 基本ラインは「犬神家」なのは明らかなのだけれど、そういえば私は最後の足を2本湖から突きだしたシーンと「よき、こと、きく」が家紋になっているということくらいしか覚えていない。

 そして、基本ラインさえ守ればあとは何をしてもOKとみんなが思っているという感じで、みんなしてゆる〜く好き勝手をやっているという印象が強い。
 橋本じゅん演じる犬顔家の長が死ぬ直前「死霊に憑かれた」という奇病の発作が出るのだけれど、周りで好き勝手に「上杉謙信」とか「ガンジー」とか言うと、橋本じゅんがそれを必死に適当に演じる。それを取り囲むようにして素で笑っている役者さんたちがいる。
 素で笑っているのではなく、素で笑っているように見せているだけなのかも知れないけれど、「素」に見えるし、ゆるく見えてしまう。
 保坂エマ演じるエマニエルの入浴シーンは何だか意味なく長い。

 何というか、「大人が本気で文化祭」が真骨頂だと思うのだけれど、それが「ゆるく祭り」になってしまうと(あるいは、なっているように見えてしまうと)、何だか楽しさがもの凄く減ってしまって、遠くで内輪で楽しそうにしている人がいる、という感じに見えてしまう。

 何となく「犬神家」をなぞりながら最後まで引っ張り、中谷さとみ演じた大地マヤと犬神家の三女の娘とは、実は設定としても「うり二つ」で、最初のパロディ・ミュージカルの舞台で死んでいた筈の大地マヤが実は生きていて、しかも犬顔家の血縁だった、と来たときには、「やられた」というよりも「反則だよ」と思ってしまった。

 そして、私は「DEATH NOTE」は、ノートに名前を書かれた人が死んでしまうという、本当にその部分だけしか知らないので、多分、この映画(あるいは漫画)をよく知っていたら、「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」というタイトルのラスト6文字に感動した(?)と思うのだけれど、申し訳ないことに、そこまでの「そう来たか!」というどんでん返しにやられた気分を味わいそびれてしまった。

 新感線のお芝居は楽しい。3時間があっという間で全く退屈することはない。舞台の転換が多いところを、スクリーンを降ろして映像を見せることで暗転を最小限にしてテンポを止めないところも好きだ。
 最後は探偵が帰るシーン、汽車から身を乗り出して手を振っていた探偵の頭が駅舎にぶつかって汽車も止まり、その振動で、「おかわり」駅の「か」が落ちて「おわり」になる。その終わり方も小ネタが効いていて、可笑しい。
 しかも、新感線のメンバーがこれだけ揃うのはとても久しぶりだと思う。とても嬉しい。
 でも、やっぱり、贅沢なことに、「もっと、もっと」と思ってしまった3時間だった。

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