「舞台芸術の世界 ディアギレフのロシアバレエと舞台デザイン」に行く
2007年7月26日から9月17日まで、東京都庭園美術館で開催されている「舞台芸術の世界 ディアギレフのロシアバレエと舞台デザイン」のチケットを友人にいただき(ありがとう!)、最終日前日の今日になってしまったのだけれども、行って来た。
流石に最終日間近ということで、館内はかなり混雑していた。
並ばないと展示されている絵や衣装などを見られないほど混雑している庭園美術館は初めてだ。外国の人もちらほら見かけたし、大型バスでいらした人もいたようだ。
最終日間近というだけでなく、多分、バレエやオペラに興味のある人というのは一定数以上存在していて、だから熱心に見ている人が多いのだろうなという感じがした。見ている人たちに集中力があって、館内にそれが満ちている感じがする。
ディアギレフという人は、20世紀初頭のロシア芸術プロデューサーなのだそうだ。「バレエ・リュス」というバレエ団を率い、ヨーロッパを席巻したという。
多かったのは衣装のデザイン画だけれど、その他にも、衣装の実物や、舞台装置の下絵、プログラムの表紙や、バレエ・ダンサーの写真などが展示されている。
衣装デザインだから、衣装だけが描いてあればよさそうなものなのに、大抵のデザイン画にはかなり精密に顔が表情豊かに描かれている。それも楽しい。逆に、例えば「ここはこの布で」みたいな指示が書き込まれたデザイン画は極く少なくて、本当にイメージ画の段階のものが多かったのかも知れない。
天野喜孝や宇野亞喜良の絵の源流はここにあったのかも、と思ってしまったくらい、何故か雰囲気が似ている。
展示されている中では、ボリス・ルビスキーという人が描いたピエロ(アルルカンだったかも知れない)の絵が、シンプルなラインで構成されているのに表情豊かで格好良かった。
「ワツラフ・ニジンスキー」はその頃活躍していたバレエ・ダンサーで、私ですら名前にうっすらと聞き覚えがある。彼が踊っている動画は残っていないそうだけれど、中世的でしなやかな美しいダンサーだったそうだ。写真を見ても本当にそのとおりだし、彼が踊っている姿を集めたジョルジュ・バルビエという人の版画集からもその雰囲気は十分に伝わってくる。
アレクサンドル・エクステルという人の舞台美術は、直線的というのか、写実的ではない抽象的なモダンな雰囲気が格好良かった。1世紀も前にこのセットで上演されたバレエは、それはそれは斬新に見えたのではないだろうか。
ミハイル・ラリオノフという人が描いたコオロギの舞台衣装(コオロギが出てくるバレエやオペラがあったということ自体が驚きだけれども)も、くっきりと派手で楽しい。
派手ということでは、ナタリア・ゴンチャロワという人の(この人は名前からして女性ではないだろうか)「金鶏」というオペラ=バレエの舞台デザインは、もうどこが床でどこが壁なのか判らないくらいに描き込まれていて、しかも、それが黄色や赤や青を基調としたしっちゃかめっちゃかの派手さで、一体この舞台に出演する人々はどんな衣装を着ればいいのだろうという感じだった。
この最後の舞台デザイン画以外は絵はがきになっていなかったのが惜しい。
ミュージアム・ショップに行ったら、ちょうど、この当時のバレエを1985年に再現したという舞台のDVD上映会が行われていた。普通の少し大きめなテレビに映されているし、スペースも狭いのに、椅子は満席で後ろに何重も立って見ている人がいる。
終わりの15分くらいだけ見られたのだけれど、コミカルな動きに、明るくて大らかな舞台装置と衣装で、楽しかった。衣装ってそうだよね、着て動かなくちゃいけないんだよね、と当たり前のことを思ってしまった。
もう少し早めに、もう少し空いているときに行って、ゆっくりと見たかったなと思った。
東京都庭園美術館の「−ホノルル美術館所蔵品より−大正シック」のページはこちら。
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