赤坂メディアアート展「ダイアログ・イン・ザ・ダーク 2007 東京」に行く
赤坂メディアアート展「ダイアログ・イン・ザ・ダーク 2007 東京」
2007年9月13日〜12月19日 旧赤坂小学校
赤坂メディアアート展「ダイアログ・イン・ザ・ダーク 2007 東京」の公式Webサイトはこちら。
友人に誘ってもらい、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク 2007 東京」に行って来た。
廃校になった旧赤坂小学校の体育館を利用した、一言で言ってしまうと最大10人の「観客」に1人のアテンドがつき、真っ暗闇の中を手探り・足探りで歩くという催しである。
説明がとても難しい、というか、説明しようとしても説明にならなさそうなので、公式Webサイトから借りると、こんな感じである。
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Dialog in the Dark
まっくらな中での対話。
鳥のさえずり、遠くのせせらぎ、足元の葉を踏む音と感触、森の匂い、土の匂い、森の体温、街の息吹。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、日常生活のさまざまな環境を織り込んだまっくらな空間を、聴覚、触覚、嗅覚、味覚など、視覚以外の感覚を使って体験する、ワークショップ形式の「暗闇のエンターテイメント」です。
<アテンド>の声に導かれながら暗闇の中を進み、視覚以外に集中していると、次第にそれらの感覚が豊かになり、それまで気がつかなかった世界と出会いはじめます。
森を感じ、小川のせせらぎに耳を傾け、バーでドリンクを飲みながら、お互いの感想を交換することで、これまでとはすこしちがう、新しい関係が生まれるきっかけになります。
GOOD DESIGN AWARD2005 ユニバーサルデザイン賞受賞
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とても楽しかったので、サイドバーにブログパーツを貼った。
クリックすると「Dialog in the Dark」に参加した方の感想が読めるそうだ。
ネタバレになってしまうので、感想は以下に。
これから行かれる方は読まないようご注意ください。
念のため、さらに改行。
本当に、これから行く方は絶対に読まない方がいいと思います。
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真っ暗闇を見ず知らずの方々と歩くということで、受付では身分証明書を提示し(友人は住基ネットカードを提示していたけれど、実物を初めて見た。私は運転免許証にした)、荷物はコインロッカーに預ける。薄暗がりにいったん集合し、アテンドの方も含めて自己紹介から始まる。
何かを触って確かめるときには、身体の外側(現実的には手の甲の側)を使えば、自分も他人も傷つけずに済むという注意を授かる。
なるべく自分の行動を声に出して説明しましょう、ということも教わる。確かに、真っ暗闇で無言でいたらコワすぎるし、現実的に危険でもあるだろう。
薄暗がりに慣れ、多分「暗闇」に慣れた頃を見計らって、本当の真っ暗闇の世界に入る。
完全に光が入ってこない、「目が慣れる」ということがあり得ない、本当の漆黒の世界である。
開演直前の劇場でも、椅子の足元の非常灯や舞台上の反射テープは見えているから、そんな場所にいたことがないので、まずは「真っ暗闇」という状態に驚く。
驚くけれど、意外と恐怖心はない。
ただ、暗いだけである。
この辺りから、順番が定かではないのだけれど、アテンドの方の案内に導かれて、カーテンをくぐったりしながら、最初に「体育館」に入った。
跳び箱があったり、マットがあったり(小学校の頃に使ったマット運動のマットなんて、何十年ぶりに触った)、ボールがあったりする。意外とドリブルなんてこともできてしまう。
連れて行ってくれた友人は、昨年に開催されたバージョンも含めて3回目の参加で、流石に慣れている。彼女が「ここに跳び箱がありまーす」と言ったとき、なるほど、そういう風に楽しむのね、と思ったことだった。あれで、8人の空気が変わったような気がする。
そして、声に出して「ここです」と言われると、意外と大体の方向と距離が判るということも体感する。もっと、何も判らないのかと思っていた。
この後はもう、順番を覚えていない。
音楽室に行くと、楽器があちこちに置いてある。
キーボードがあったので、手探りで「ネコ踏んじゃった」を弾いてみたら、これが意外とちゃんと弾ける。エリーゼのためには無理だろうな(そもそも、灯りがあっても弾けるかどうか定かではない)と思って諦める。
木琴で「歓喜の歌」のメロディを叩いてみる。これまた、意外と叩けるものだ。
調子に乗ってトライアングルをばしばし鳴らしていたら誰かの背中を叩いてしまい(申し訳ない)、その拍子に叩く棒を落としてしまう(さらに申し訳ない)。誰かが踏んでコケてもいけないと「落としました!」と堂々と自己申告してしまう。一応探ってみても、そもそもどこを探せばいいのか、自分がどちらを向いていたのか、どこに落ちたのかさっぱり判らない。
裏山に行きましょうと言われて階段を上る。
「裏山」に入ると、足元の感触が変わって土になったり枯れ葉があったりする。水音がして池がある。触ってみる。「どこ?」と聞くとみんなが「こっちだよ」と教えてくれる。「こっちだよ」でどちらか判るのが不思議である。
階段を上るときも「ここに段差がありまーす」「右側に手すりがありまーす」と声がかかる。
時々「ここに濡れた葉っぱがある!」「木にぶつかった!」なんていう声も上がる。
それで、意外と方向や距離も判る。
少し広いところに出てゲームなんてこともやる。
「輪になりましょう」と言われてなったつもりになっても、「9人だと、意外と4人の輪と5人の輪だったりします」と言われる。なるほど。「どうしたら9人の輪になっているか確かめられますか」と言われる。見えないとこれが意外と難しい。
何となく思いついて「手をつないでいるから、右手を握りながら自分の名前を行って、左手を握られた人がそれを繰り返して一周できれば確かめられるのでは」と言ってみたら、なりゆきで採用された。
ちゃんと輪が完成していた。素晴らしい!
あとになって、名前じゃなくて番号を言って行けば人数も確認できてより確かだったわ、と思った。
誰が言ってもいいので、1から21までの数字を声を重ねずに言ってみましょう、というゲームもやってみる。
これまた意外と難しい。
何回か、誰かと誰かの声が重なってしまう。
すぐに誰かが続かないと、今度はみんなが息を呑んで、言おうか言うまいか迷っている風情が漂う。最後の頃は逆に、前の人が言ったらすぐに言う人が増えたのが何となく可笑しい。緊張する時間を短くしたいんだなと思う。
割と短時間で達成できたけれど、これがもう少し小さい輪だと、言おうとして息を吸う音が聞こえるので、それで重ねることが避けることができるというお話だった。
美術室にも行った。
パレットや石膏像らしきもの、私は確認できなかったけどキャンバスや大根なども置いてあったらしい。友人に渡してもらった、正体不明のものもあったのだけれど、あれは一体何だったのだろう。
太鼓橋のような橋を渡り、金網をくぐって(登れなかったのが少し心残り)学校に戻る。用務員室には畳のお部屋もあるそうだ。
靴を脱いだら判らなくなりそうだと言いつつ、靴を脱いで上がる。ちゃぶ台が置いてある。
おしぼりをいただき、ジュース(グレープフルーツジュースとアップルジュースと烏龍茶をアテンドの方がどうやって見分けているのか、未だに判らない)をいただく。配るときもゴミを集めるときも順番に手渡しするのが何となく楽しかったりする。
缶ジュースを開けたら、置いたらどれが自分のものか判らなくなりそうだし、倒しそうだし、置くことができなくて手が冷たくなる。
ここまでどれくらい時間が過ぎているでしょうと聞かれて、確かチャイムの音を1回しか聞いていないよなと思い「30分」と言ってみたけれど、実は倍の1時間近くが経過していた。アテンドの方がどうして「56分」と細かく判ったのかが不思議で聞いてみたら、「触って時間を知る時計」があるそうだ。
わらわらと用務員室を出て、そこでコースはほぼ終了、だった。
明るい外に目を慣らすために、薄暗い部屋にみんなで集まって座り、感想を言い合う。「しんがりは不安だ」「つい真ん中ではなく壁沿いとか手すり沿いに動いてしまう」「つい何でも叩いて確かめてしまう」「風や音や匂いに敏感になる」という声に、その通りだ、と強く頷いてしまった。
目から受け取る情報というのは全体の80%くらいを占めるのだそうだ。
そのインパクトが大きいので普段は意識しないけれど、でも音や匂いや触覚といった刺激も私たちは常に受け取っていて、今の真っ暗闇の中ではそれを「いつも通りに受け取って、でも意識したからより感じただけ」という説明が不思議な感じだった。
「さわって知る時計」というのを見せていただいたら、時計のカバーが外れるようになっているアナログ時計で、動いている針に触ってその位置から時刻を知るのだそうだ。触ることで針を動かしてしまったら元も子もないし、使えるようになるには1ヶ月くらいかかるでしょう、というアテンドの方のお話だった。「退屈な会議のときなんかに、こっそり時間が判っていいですよ」とおっしゃっていた。
このときに、アテンドの方に「トライアングルの棒を拾っておきました」と言われて、私はもの凄く驚いた。どうして拾えるのだろう? あっさりと「机の下に落ちていました」と説明されてしまう。確かに、トライアングルが載っていたテーブルのすぐそばで打っていたのだけれど、音で落ちた場所が判るということなんだろうか。これまた、未だに謎である。
初めての「真っ暗闇体験」は、何だかひたすら楽しんでしまった。
ただ、他の方々の感想を聞きながら、そして、「触って時間を知る時計」の説明をしてくださったときに初めてアテンドの方が目の見えない方だということを意識したという鈍い私は、ここに至って、昔に手話を習っていたときに先生が言っていた「耳が聞こえない人は、手話を止める訳にはいかない」という言葉を思い出していた。
友人によると、彼女が前に参加したときは少しメニューが違っていて、体育館で鬼ごっこをしたり、鬼を決めるためにジャンケンをしたり、畳の部屋ではなく丸椅子で休憩したりしたのだそうだ。数を言っていくゲームはしたそうだから、基本メニューと、オプショナルというかアレンジが入るメニューとがあるようである。
そう聞くと再び行きたくなるけれど、もうほとんどチケットは完売しているようで、残念だ。
これまた友人によると、私は全く気がついていなかったし意識していなかったのだけれど、私だけが歩いている途中で数値を言っていたのだそうだ。
「この通路の幅は2mないくらいだ」とか、「この池の水深は5cmくらいしかないのに」とか、「この木の幹の太さは15cmくらいだ」とか。
その数字が当たっていたかどうかはともかくとして、数字を挙げて説明した人はあなただけだったと言われてちょっと驚いた。
今回の参加メンバー8名は、女性の2人組が私たちも含めて2組、カップルが1組、一人参加の男性が2人の計8人と、アテンドの男性が1人だった。
年代も近く、割と「声を出して説明する」ということにすんなりととけ込めるタイプの似た人がやっぱり集まるのかしら、と友人に言われて、なるほどと思ったのだった。
何にせよ、とても楽しくて不思議な体験に誘ってくれた友人に多謝! である。
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