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2007.12.16

「LOVE LOVE LOVE R36」を見る

扉座第39回公演「LOVE LOVE LOVE R36」
作 大森寿美男/大森美香/鈴木聡/鈴木哲也
   千葉雅子/マキノノゾミ/真柴あずき/横内謙介
演出 茅野イサム/横内謙介
出演 岡森諦/杉山良一/有馬自由/岩本達郎
    中原三千代/伴美奈子/鈴木里沙/高木トモユキ
    安達雄二/新原武/江原由夏/井之上隆志/麻生かほ里
観劇日 2007年12月15日(土曜日)午後2時開演
劇場 シアタートップス 16列26番
料金 4200円
上演時間 2時間5分

 シアタートップスに向かう階段に直結した扉が珍しく閉められていて、一瞬「公演日を間違えたか? 公演時間が過ぎているのか?」と驚いたけれど、そうではなく、ただ単に閉めてあっただけのようだった。
 ロビーで何か販売されていたかどうか、どうもうろ覚えだ。
 客席は、タイトルで「R36」と銘打ったせいではないと思うのだけれど、若干平均年齢が高めだったかも知れない。

 ネタバレありの感想は以下に。

 短編のオムニバスを2時間にこれだけ詰め込むというのは、勿体ないのか贅沢なのか、微妙なところのようにも思う。

 ラインアップとしては以下のとおり。

1 デザートの前に(作 大森美香)
2 ラジオ夜行便1(作 横内謙介)
3 デューク(作 鈴木哲也)
4 ラジオ夜行便2
5 幻の花たちの唄(作 千葉雅子)
6 ハッピークリスマス(作 横内謙介)
7 なぞのパンツ(作 マキノノゾミ)
8 ラジオ夜行便3
9 小平(作 鈴木聡)
10 ラジオ夜行便4
11 ティアーズ イン ブライダル(作 真柴あずき)
12 ラジオ夜行便5
13 この愛をありがとう(作 大森寿美男)
14 ラジオ夜行便6

 1の「デザートの前に」で出てきた女優とシナリオライターが、その後何年ぶり(何十年ぶり?)課で」再会し、「ラジオ夜行便」という深夜ラジオを担当しているという設定で、暗転の間、そのラジオ番組が流される。それまで舞台上で展開されていたお芝居の内容に合っているのか合わせているのか、微妙な辺りでバランスが取られているように思う。
 そして、「デザートの前に」でサプライズに失敗してプロポーズも失敗したシナリオライターが、彼女のパーソナリティー最終日にサプライズを用意して、でも地震が起きてそのサプライズは不発、という終わり方も気が利いている。
 もっとも、途中まで私は「デザートの前に」のプロポーズは成功したのだと思っていた。どうも、読みが甘いようだ。

 「デザートの前に」は、見ていて「うわあ、痛い」という感じだった。
 それも、伴美奈子演じる女優ではなく、井之上隆志演じるシナリオライターが痛い。

 「デューク」では、ネコである岡森諦演じるデュークと鈴木里沙演じるかすみは、最初から首輪をつけて登場していたのに、麻生かほ里演じる、彼らが「サヤ」と呼ぶ女の子の方がネコで、デュークとかすみは人間だと思って見ていた自分がかなり情けない。
 この「サヤ」という子も、「なぞのパンツ」に出ていた麻生かほ里演じるミナも、「小平」に出てくる井之上隆志演じる下坂部さんも不倫をしているという設定で、「R36」って銘打つとやはりそちらをテーマにしようという発想になるのか、でもそれってちょっと安易なのではとも思ってしまった。

 そう考えると、「幻の花たちの唄」は、舞台がいきなり昭和30年代に飛ぶし、かなり異色な感じである。見終わって千葉雅子作と知り、流石というのとやっぱりというのと両方が感想として浮かんだ。
 次の「ハッピークリスマス」も、浦島太郎と乙姫様の再会譚だから、異色といえば異色だしファンタジーといえばファンタジーだ。けれど、舞台が「キャバレーの客引きが跋扈する場所」であるせいなのか、ファンタジーというよりも、「現代人って疲れているのね」という風に見ている私の方の発想が飛んでしまう。そして、それが正解のような気もする。

 好みとしては「ティアーズ イン ブライダル」と「この愛をありがとう」がいい。
 「ティアーズ イン ブライダル」がどうして好きなんだろうと考えたら、この1本だけが手放しで目出度い結末だからじゃないかということに気がついた。岡森諦演じる新郎の祐介が、伴美奈子演じる新婦の朋子に「私なんかっていうのを止めさせたいと思った」と言うのを聞いて、うーん、声がいいっていうのは何と凄い武器なんでしょうと思ってしまった。
 文字通り、涙ものである。

 「この愛をありがとう」は、乱暴にくくると、ずっと離ればなれだった麻生かほ里演じる母と岩本達郎演じるヒデオが、母の最期のコンサートの直前に巡り会う物語だ。
 「小平」で引きこもりでフィギュアを買うためにバイトしようとした田中と、何とか就職しようと運転免許を取ってピザ屋の宅配の仕事をしているヒデオが、微妙にキャラクターが被っていて、しかも両方を岩本達郎が演じているから、「同一人物か?」と思わせてしまったのは(そういう構成でないことはここまでで明らかなのだから、思ったのは私だけかも知れないが)勿体なかったようにも思う。

 そう考えると、「デザートの前に」のパティシエ、「デューク」のネコの飼い主のサヤ、「幻の花たちの唄」の清純派の女の子、「なぞのパンツ」の妹、「この愛をありがとう」のエリーと演じて、「同じ人が演じているんじゃないの?」とか、「あの短編で**を演じていた人がここでは**を演じている」と思わせなかった麻生かほ里という女優さんはもの凄い人なのではなかろうか。
 多分、初めて拝見した女優さんだと思うのだけれど、見終わってそのことに気づき「ほえ〜」と間抜けな擬音で驚いてしまった。

 それぞれの短編のタイトルと作者は事前に配られたチラシに入っていたのだけれど、私は見終わってから初めてそちらを見た。
 その方が2倍楽しめる感じでお勧めである。

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