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2007.12.02

「テイクフライト」を見る

ミュージカル「テイクフライト」
脚本 ジョン・ワイドマン
作曲 デイヴィッド・シャイヤ
作詞 リチャード・モルトビーJr.
訳・演出・振付 宮本亜門
訳詞 森雪之丞
楽監督・指揮 デイヴィッド・チャールズ・アベル
出演 天海祐希/城田優/池田成志/橋本じゅん
    小市慢太郎/坂元健児/今拓哉/花山佳子
    杉村理加/治田敦/岡田誠/華城季帆
    菅原さおり/本田育代/宮川浩/ラサール石井
観劇日 2007年12月1日(土曜日)午後6時開演
劇場 東京国際フォーラムホールC 8列14番
料金 12600円
上演時間 2時間40分(15分間の休憩あり)

 ロビーではパンフレット(値段は確認しなかった)や、出演者の過去のDVD作品などが販売されていた。

 感想は以下に。

 席が前方になると傾斜が緩く、前の人の頭で舞台の一部が見えなかったりすることが多いのだけれど、この国際フォーラムホールCはそんなこともなくて見やすかった。
 それほど長いミュージカルではないのに開演時間が早いのは、アメリア・エアハートの少女時代を(イメージとして)演じる子供が出演しているからのようだった。

 池田成志と橋本じゅんが演じるライト兄弟、城田優が演じるチャールズ・リンドバーグ、天海祐希が演じるアメリア・エアハートのそれぞれのパイロットたちの物語が錯綜し、行ったり来たりしながら物語は進行する。
 このごちゃごちゃな行き来を整理するのが、ラサール石井演じるグライダーの発明者でもあるオットー・リリエンタールである。

 舞台セットは基本的に砂丘のように作られている。
 そこに、ライト兄弟が作りつつある飛行機の翼が引っ張り出され、その白い布地が飛行機の機体や街の様子を映すスクリーンになり、その布がスライドされて宮川浩演じるアメリア・エアハートのパートナーであるパットナムの事務所になったり、アメリアやリンドバーグの操縦席になったりする。

 一幕では、失敗続きのライト兄弟や(それにしても、ライト兄弟にスポンサーがいたのは意外だった)、ニューヨーク・パリ間を単独飛行しようとして融資を断られ続けるリンドバーグ、「ただ乗っていただけ」で「レディ・リンディ」と熱狂されるアメリアの葛藤が描かれる。
 正直に言うと、この一幕では、あまり乗れる感じがしなかった。
 天海祐希の歌声にはザワザワっという感じがあって、鳥肌が立つような感触があったのだけれど、他の出演者の歌は「もしかして、スロースターターなのかしら」と思ったくらいだった。
 何だか、あったまっていない、という感じなのだ。
 一人ずつが自分のテーマを歌い上げてつないでゆくタイプのミュージカル(だと思うの)で、アンサンブルの助けを借りられないからこれは辛い。
 だから、終始一貫して安定していた宮川浩がとても気になる存在だった。彼がこのミュージカルを支えているんじゃないかと思ったくらいだ。

 消化不良な感じで始まった二幕だったけれど、話が明るくなってゆくためか、随分とあったまった感じになった。
 ライト兄弟がこつこつとでも成功に向かって研究と実験を繰り返すところでは、2人がハーモニーを聞かせ、会場から手拍子が湧いたし、歌い終わったときには思わず拍手を送ってしまった。
 楽しい。
 これが見たかったのよ、という感じだ。

 リンドバーグも出資者を見つけ、単独飛行という無茶にもかかわらず飛行機を作ろうという会社も見つかり、強烈な眠気と闘いながらでもパリを目指して跳び続ける。眼下には陸地が見える。

 アメリアは、パットナムを説得し、結婚して今度こそ自分がパイロットとなる大西洋横断飛行に挑戦し、成功する。
 このシーンを見ながら、イギリスの画家シッカートが描いた「エアハート嬢の到着」という絵は一体どちらのときの「到着」の絵なんだろうとふと思った。「嬢」なのだから、きっと1回目の飛行のときなんだろう。それが絵に描かれて後生まで残ってしまうのだから、本当に自分の力で飛びたいと思い続けたというのも判る気がする。
 虚像が大きすぎるのは辛いものだ。

 アメリアはパットナムにもう飛ぶなと懇願され、「世界一周を最後のフライトにする」と約束し、出かけてゆく。
 大西洋を越え、アフリカを横断し、アジアを抜けて太平洋上の島に向けて飛び立とうとする。
 滑走路の整備を24時間待つことができず、燃料その他の装備を捨てて軽くし、短い滑走で離陸する。
 そして、燃料切れにより、南太平洋上で消息を絶つ。

 ここがこのミュージカルの肝なのだと思うのだけれど、私にはどうしても「24時間待たずに燃料を捨てて拙速に飛び立った」という風に見えてしまった。心情として「彼女はそうせざるを得なかったのだ」という感想が浮かんでこない。
 それは、もの凄く勿体ないことなんじゃないかという気がする。
 パットナムが強引に船を手配し、彼女を捜しに出発するシーンに何ともいえない味があったので、余計にそういう気がする。

 アメリア(の霊)は、時を超えて、パリ着陸を目前にしたスピリット・オブ・セントルイス号を操縦するリンドバーグの元に現れ、「飛び続けろ」と訴える。
 リンドバーグはこの大西洋横断飛行の後、一体どんな人生を辿ったのだろう、と心配になってくる。

 そしてラストシーンは、ライト兄弟(の弟だけだったとは知らなかった)が、人類初の飛行に成功し、宙を飛ぶ。
 その「最初の一歩」を、アメリアやリンドバーグや、彼らに関わった全ての人が晴れ晴れと見上げている。
 そこで、幕である。

 何だかんだ言いつつも、特に二幕は楽しんで見ていたのだけれど、帰り道に思わず口ずさむようなナンバーがなかったのも本当である。
 もっともっと進化できる、という感じに思えた。

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