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「二人の約束」~The Two Men's Promise~
作・演出 福島三郎
出演 中井貴一/段田安則/りょう
観劇日 2008年2月9日 午後7時開演
劇場 パルコ劇場 Y列19番
料金 7000円
上演時間 2時間10分
ロビーではパンフレット(1200円)が売られていたのだけれど、迷った末に購入しなかったので、劇団二人の第2回公演と言っていたと思うけれど、この字で合っているかどうかは不明である。
第1回講演も、作・演出が福島三郎で、中井貴一と段田安則が出演している。今回は、りょうを客演に迎えての3人芝居である。
開演前のアナウンスを中井貴一が担当し、変なところで変な風に失敗するのが可笑しい。
ネタバレありの感想は以下に。
中井貴一演じるコタロウは、天涯孤独のみで男一人、古道具屋を営んでいる。
幼なじみのりょう演じるメグミは、出戻りで、幼なじみのコタロウの家をほとんど「もう一つの自分の家」のようにして、実家とコタロウの家を行ったり来たりしている。コタロウの家の大家はメグミの父親でもある。
そこへ、コタロウの家の塀をよじのぼろうとした段田安則演じるダイサクが足を滑らせて落ち、コタロウは親切にも自宅に運び入れ、さらに記憶をなくしたらしいダイサクに、そのままこの家で暮らすように言う。
もちろん、「そんな素性も判らない人を!」とメグミは大反対である。
舞台は、そのコタロウの古道具屋の裏というか奥というか、居住スペース部分である。
古道具屋だからなのか、昭和を通り越して大正・明治、あるいは国教も飛び越えてペルーの織物や中国の「龍の尻尾」なども置いてある。
コタロウの住んでいる家は立ち退きを迫られているのだけれど、コタロウは「あと少し」と住み続けている。
子どもの頃「ジュンコちゃん」と一緒に庭に埋めたタイムカプセルを掘り起こして開ける日が、もうすぐやってくるのだ。
30年間、会ったことも連絡を取り合ったこともないのに、コタロウはジュンコちゃんが来てくれると信じている。コタロウが独身を通している理由もジュンコちゃんにあるらしい。
メグミが38歳だということは劇中で明かされるのだけれど、そのメグミから「お兄ちゃん」と呼ばれるコタロウと、そのコタロウと同年配と思われるダイサクとは一体いくつの設定なんだろう?
恐らく、タイムカプセルを埋めたときにいくつだったという話がどこかで出ているのだと思うのだけれど、聞き逃してしまった。
小学校卒業のときに埋めたと考えてそれが12歳、その30年後として42歳くらいの設定だろうか。ほぼそれで決まりだと思うのだけれど、42歳には見えない気がする。
コタロウはとことん人が好い、簡単に人を信じてしまうし、信じてもらいたいと願っている、世界中に友人がいる、笑顔の大きい人物として描かれる。
一方のダイサクだって、そもそも記憶喪失でいかにも悪人である人ってまだ見たことがないようにも思うのだけれど(この「見た」はもちろん映画やテレビや舞台でということである)、おどおどとして、万事に申し訳なさそうにしていて、少なくとも悪人には見えない。
何だかほっとしてしまう。
コタロウの思い人であるジュンコちゃんは、多分、ダイサクの奥さんなのだろう、そして亡くなっているのだろうということは、割と早い内に提示される。
メグミがそのことに気づくのと、メグミのエッセイ連載の話が実はゴーストライターとしての仕事だったと判明するのとが、ほぼ同時である。
それで、多分、メグミはずっと思っていた、言ってはいけないと決めていたことをコタロウに言ってしまうのだ。
「お兄ちゃんって本当は人を信じていないように見える。」
中学生の頃に両親を亡くし、以来、天涯孤独で「人を信じよう、信じてもらおう」として生きてきたコタロウには、かなりきっつい一言である。
それでも、翌日の「タイムカプセルを埋めて30年目の日」にメグミはコタロウの家にやってくるし、その前日に「ジュンコちゃん」というキーワードを得て記憶を取り戻したダイサクも、自分の素性を話すためにコタロウの家にやってくる。
コタロウと、ジュンコちゃんの代理であるダイサクとは、タイムカプセルを掘り当てる。
中には、未来の自分への手紙が入っている。
メグミの手紙も入っていて、本人はすっかり忘れていたようだけれど、そこには、多分、お兄ちゃんが大好きであることが書かれている。
コタロウが言うように、人を信じなければ人に信じてもらえない。
人を好きになったら、もっともっと好きになることしか、自分にできることはない。
メグミが、自分もそうしようと決めたところで、幕である。
コタロウを演じた中井貴一と、ダイサクを演じた段田安則と、この2人が役を交換したとしてもこのお芝居は普通に何の違和感もなく成立するんじゃないかな、それって何だかすごいことだよな、いっそのこと日替わりで役を交替して演じてくれないかななどと、阿呆な妄想が浮かんでしまった。
メグミを演じたりょうが綺麗すぎるような気がするけれど(いや、本当に細くて綺麗なのである)、そこは、元編集者という設定で力業で納得させられてしまう。外から入ってきたときには黒っぽい大きめのショールを巻いていることが多いのだけれど、私もあんな風に自然にショールを使いたいと思ってしまう。
メグミもジュンコちゃんも、とてもとても羨ましかった。
気持ちの良い、たぷたぷと浮かんでいるような、私にだっていいことがあるさと思える、そんなお芝居だった。
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